加奈の告白
その日もいつもの様に居酒屋で飲んだ後、帰り道で加奈が出し抜けに言った。
「ねえ、今日、達樹の家行ってもいい?」
「え、いいけど・・・」
突然の発言に戸惑いつつも僕は彼女を自分の家に連れて行った。
「広ーい。私と付き合ってた頃よりさらに広くなったね」
「それなりに月収も増えたからね」
それから僕たちはベッドに腰掛け、テレビのバラエティ番組を見た。僕は加奈にずっと訊きたくて、訊けなかったことを訊いた。
「ねえ、加奈、どうして七年前、俺のことを捨てたの?突然、連絡がつかなくなって俺、すごい落ち込んだんだよ。鬱状態になった」
「それは・・・。達樹と私がもう釣り合わないと思ったからだよ。達樹、私と付き合い始めてから、派遣会社に登録して、どんどん時給が高くなって、本社にヘッドハンティングされたでしょ。私じゃもう釣り合わないと思ったから・・・」
「そんな、俺てっきり自分が嫌われたんだと思ってた・・・」
「私、今でも達樹のこと好きよ」
そう言うと加奈は僕の手に自分の手を重ねた。そして彼女は軽くキスをすると、おもむろに上着を脱ぎ始めた。
「達樹・・・」
彼女の上半身が露わになった。僕は目を瞠った。彼女の上半身は青アザだらけだったのである。
「そのアザ・・・」
加奈は黙っていた。
「それ、もしかして・・・」
「あの人、酒癖悪くて・・・」
「悪いとか、そういうレベルじゃないでしょ。それ」
加奈は夫から暴力を受けていたのだ。それも日常的に・・・。