死、そして未来
僕たちは二人で必死に走った。近くの川原まで辿り着いた時には「ここまで来れば、大丈夫だろう」と安堵し、ようやく笑みが零れた。それから僕たちは僕の家へ向かった。
僕は包帯で加奈の額に応急処置を施した。「ありがとう」と加奈は言った。僕は「これからはずっと一緒にいよう。一生をかけて加奈のこと、守るよ」と答えた。そんなやり取りをしているうちに、何時の間にか僕たちは手を繋いだまま、眠ってしまった。
目を覚ました時、加奈はまだ僕の隣りで眠り続けていた。加奈の包帯に血が滲んでいることに気付いた僕は取り替えてあげようと、包帯を探した。そして包帯をもう使い切ってしまったことにも気付いた。僕は「包帯を買って来ます。すぐ戻ります」という書き置きをダイニングキッチンのテーブルに残して、部屋を出た。
僕は駅前のドラッグストアで包帯を買って、自分のマンションへ戻った。しかし、マンションの前では意外な人物が待っていた。裕美子だった。
「久しぶり」
「裕美子、どうしたの?」
「達樹のこと、殺して、自分も死のうと思って」
「何言ってるの?」
裕美子は突然、バッグの中から包丁を取り出すと、僕の元へ駆け寄り、ためらいもなく突き刺した。僕のお腹からおびただしい量の血が溢れ出た。僕は痛みに身悶え、その場にうずくまった。僕は死ぬのか?。。。
その頃、加奈は目を覚ました。額に痛みを感じ、手で押さえるのと同時に隣に達樹がいないことに気付いた。加奈は立ち上がると、ダイニングキッチンへ行き、達樹の書き置きに気付いた。それを読んだ加奈は笑顔になり、明るい未来を想った。




