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第六話 少年、旅立つ

 …ここは…どこだ?

 周りはシャボン球のような虹色模様が大きくなったり、小さくなったりを繰り返している。───そうだ、前にも来たことがある。アサヒと模擬決闘をしたあの日…ということは、あの人も…?

「あーら!また来てくれたのねー!嬉しいわー!」

白い布を纏い、月桂樹の冠を頭に乗せている。間違いない…この間見たのは夢じゃなかったんだ。心の中で噛みしめるように呟く。

「あの、ここは?」

「なーに?この間話したでしょー?ここは『異門空間』神の世界と地上界とを繋ぐ場所よ!お勉強は得意そうな顔なのに、意外と天然君なのかしら?」

ふふっと、おどけた笑みを浮かべる女。


 「じゃあ、やっぱり神戦記は本当の話なんですね!?それとも、僕がいかれちゃったのかな…」


 「神戦記?あぁ!冥王が書いてたあれね!えぇ、そうよ!この世界も天神界も魔界も、そして冥界も、ぜーーんぶ実在するわ!」


 「あの、あ、あなたは…?」


 「私?私のことも知ってるでしょ?私はメルス。大地と天空より産まれし第二世代の女神よ!まあ、私は世代なんて気にしたことないけどね。私の力は『空間』の力よ。異空間同士を繋げたり、離したりすることができるの。ふふっ、すごいでしょ?」


 確かに知っている。神戦記は穴が空く程読み込んだ。…世界の創造、光神と黒神の大戦争、生命の誕生、天神界、地上界、魔界、冥界、異門空間…全て知っている。

 神戦記は前半は神々の逸話、後半は人と神が交わり、産まれたハーフ達の英雄伝説が主に描かれていた。


 では、自分は何だ?


 もし、黒フードの言う通り、光神が父親だとすれば、何らかの試練が待ち受けているはず…神戦記によれば、ハーフは皆そうだったらしい。

 その試練はどれも命がけのもので、本当に死んでしまった者も多数いた…


 トーヤの顔から赤みが失われてゆく。


 「ちょっとー、大丈夫?顔が真っ青よ?」

顔を覗き込んでくるメルス。

 「だ、大丈夫…です…。」

近くで見ると、一層、美人であるのがよく分かる。すっと通った鼻、大きな瞳、形のいい唇、漂う香りもほんのりと甘いものだった。


 「あら?今度は赤くなってきたわよ。本当に大丈夫?」

気づかないうちに頬が紅潮していた。


 「えっ!あ、はい、大丈夫でフ!」

妙に緊張してしまう。


 「ふふっ、変な子ねぇ。面白いから一つ、アドバイスをあげるわ。あなたの住んでる村から北東に二〇〇キロ程行った所に、ヒコウ山脈があるのは知ってるかしら?

「はい、学校で名前だけは聞いたことがあります。」

「なら話が早いわ。その中でも一番高いレイシン山に『予言』を司る神アポトロスの聖域に繋がる異門があるの。普通の人間には見えないんだけど、あなたは力が目覚めているから、大丈夫ね。」


 なんだか嫌な予感がするが、行かなくてはならないようだ…。


 「あ!そういえば、あなた光神の息子よね?だったら、乗馬の才があるはずよ!彼はあの戦争の時も光馬に乗って、自ら戦場を駆け抜けたでしょ?ヒコウ山脈までは馬を使うといいわ。レイシン山は歩きじゃないと無理でしょうけど。)


 とんとんと話が進んでいく。今回もトーヤの意思は汲まれないようだ…。


 「最後に一つ忠告よ。」


 トーヤはその後に続いた言葉に耳を疑った。


 「アカンには十分注意しなさい。あの娘は『魔界の血』が混ざってるわ。今は冥王の力でその力が抑えられてるし、本人も気づいてないけれど、いつ暴走するか分からないわよ。気をつけるにこしたことはないわ。」


 「えっ……!」


その時、身体がふわっと浮くような感覚がした。


 「そろそろ時間ね。力がだいぶ安定してきたみたいね。また、来てちょうだい。待ってるわ。」───


 


 ────「うぅ…。」

目が覚めると、家のベッドの上だった。

 アカンが…魔界の…まさか…ね。メルスとの会話を思い出すトーヤ。

 なんだか気分がすっきりしないので、一階に降りてみると、母が縫い物をしていた。

「あら、トーヤ、起きたのね。心配したのよ、アカンちゃんが倒れたあなたをここまで運んでくれて…大丈夫なの?」


 おっとりとした口調、優しい顔立ち。女手一つでトーヤを育ててくれた母。その苦労は計り知れないものだったであろう。毎日牛達の世話をし、家事も全てこなし、トーヤに何不自由なく生活させてきた。トーヤもできる限り、母を手伝い、少しでも母の力になろうとしてきた。


 「母さん、僕…父さんのことを…。」


 一瞬、時間が止まったように動きを止める母。

 「…全部聞いてしまったのかい?」

 「……うん…。」


 ふーと息を吐き出し、トーヤの方に向き直って、じっとその顔を見つめる母。

「とうとうこの日が来ちゃったのね。…やらなきゃならないことがあるんでしょ?いってきなさい。あなたが産まれた時に父さんが言っていたわ。あなたはいづれ運命の道を辿ることになるだろうって…。母さんのことは気にしなくていいわ。…身体には気をつけるのよ?いつでも母さんは、あなたの帰りを待っているから。」


 「母さん…。」


 「あなたならできるわ!きっと父さんが見ていてくれるもの。大丈夫よ。」


 これはいよいよ覚悟を決めなくてはならないらしい。

 「…分かったよ。僕、頑張ってくる。」


 「そうだわ!父さんがあなたに残していったものがあるの。ちょっと待ってて。」

隣の部屋へと駆けていく母。──何やら大きな箱のようなものを持って帰ってきた。


 「これよ。開けてみて。」


 トーヤがゆっくりと箱を開けると、中には白銀に光り輝く剣と、太陽のような刻印が刻まれた盾が入っていた。

 おもむろに剣を持ち上げるトーヤ。

「何これ!か、軽い!」

まるでトーヤの手そのものであるかのような感覚だった。驚く程、手に馴染んでいる。


 「これがあなたを助けてくれるはずよ。…無理だけはしないでね…。」

一瞬、寂しそうな顔になる母。

 トーヤも胸が熱くなる。何故かしばらく母に会えなくなるような気がした。


 「さあ、今夜はもう寝なさい。明日から大変になるんだから。」


 「うん、そうだね。…じゃあ、お休み、母さん。」


 部屋に戻ったトーヤはつい先ほどまで寝ていたにも関わらず、ぐっすりと眠りについた。この先の苦難に備えるかのように───



───翌朝。

 一階に降りると、机に伏して眠る母の横に、青を基調として織られた服が一式置いてあった。母が用意してくれたのだろう。

 「行ってきます。母さん」

起こさないように小声で呟くと、手に持った青の服に着替え、父の剣と盾を装備し、住み慣れた家を後にした。


 村の入り口まで来ると、門の所に人影が一つ見える。

 「よお、トーヤ。ずいぶんと早いお散歩だなぁ。あたしも付き合っていいだろ?」

アカンだ。隣には毛並みのいい馬が二頭並んでいる。

 「アカン、君はどうして色々と知ってるんだい?それに、目的は何?」

メルスの言葉を思い出し、アカンに問いかけるトーヤ。

 「それは後々分かるさ。今はトーヤの味方だってことしか言えない。」

確か、冥王の力で、魔界の血のことはアカンも気づいてないはず…。

 「分かったよ。アカン、よろしく。」


 「そおこなくっちゃ!任せとけよ!」

上機嫌に馬に飛び乗るアカン。

「んじゃあ、早速行こうか!」

いつの間にか仕切り始めている。


 この先にどんなことが待ち受けているのだろう。何もかも突然過ぎるが、仕方ない。頑張るしかないのだ。


「おーい!置いてくぞー!」

「あ!待ってよー!」

既に馬を進めるアカン。急いで馬に飛び乗り、アカンの横に馬をつける。


 「目標、ヒコウ山脈へ向け移動開始。女が一人同伴している模様。」


 小さくなってゆく二人の背中を見送りながら、怪しげな影がうごめいていた─────



  

いよいよ、トーヤが冒険に出ました!ここからはバトルとかも増えてきます。


こんなキャラ出して欲しいなーってゆうのがあれば、コメントしてください!

なるべく出していこうと思います。

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