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第五話 少年、父を知る

光神シャクシン。天神界の最高神にあたる『大聖天』の称号を持ち、今の時代(第三世代)を築いた神。


太陽の女神ソウンよりシャクシンが産まれし時、闇に包まれていた地上に光が降り注ぎ、ただの岩でしかなかった太陽に輝きがもたらされたと言われている。


光の力を司り、聖なる者を強化し、邪なる者を浄化する。ただし、邪の強い者は滅せられる。






 唇の端を吊り上げ、すました笑みを浮かべている。その瞳を覗くと、どこまでも深く、まるで深淵の闇を讃えているかの様であった。

その表情に、ある種の恐れすら抱き始めているトーヤが身構えつつ口を開く。

「アカン、君は何か知っているの?僕は、どうなっちゃったの?……そもそも、君は…いったい何者なんだい?」


「誰だって?あたしはアカンだろ?」

「ふざけないでよ!さっきの呪文みたいなのは何!どー考えたって、普通じゃないよ!」

思わず興奮するトーヤ。


「アハハ!そう怒るなって。説明すると、ちょーっと長くなるけど、あたしはトーヤの敵じゃない。」


「…あとは私が説明しよう。」

頭に直接響く太い声。はっきりと覚えている。

トーヤとアカンの目の前に闇が収束してくる。次第に人型に形成され、一人の男が姿を現した。

幼い頃、アカンの家の地下で出会った黒フードの男だ。


「おいおい、爺さん自ら登場かよ。これは、あたしの役目だろ?」


「アカンよ、口には気をつけよと何度言われれば分かるのだ。いい加減にせねば…分かるな?」

黒フードがアカンを睨み付ける。その瞳は鋭く、凍える程冷たかった。


「わ、分かっ…りました。」

あのアカンが怯えている。確かに、身に纏っているオーラを肌で感じることができる程、凄まじい存在感、むしろ威圧感があった。


「さて、少年よ。私は立場上、こちらの世界に長居することは出来ぬ。早速、本題に入らせてもらうぞ。」

表情を変えることなく、一方的に話しかけてくる黒フードの男。

「少年よ、いや、トーヤと言ったな。では、トーヤよ、お前は自分の父親に会ったことがあるか?」


…無い。産まれてからずっと、母親が女手一つで育ててくれていた。


「…ッ、…ィ…」

黒フードの威圧感からか、上手く話せないトーヤ。

仕方なく黙って首を横に振る。


「だろうな。では、ありのままの事実を伝える。よいか?お前の父は大聖天シャクシン。光を司る光神だ。」


「……えっ?…」


一瞬にして、固まるトーヤ。大聖天?光神?何の話だ?チンプンカンプンもいいところである。

…と言いたかったが、黒フードの奥に見える瞳が全て真実であると言っていた。


「現にお前は、冥界の戦士をいとも簡単に消し去ったら見せたではないか。その力こそが光神シャクシンより受け継ぎしものであり、お前がシャクシンの息子である何よりの証拠なのだ。」


すでに、身体を覆っていた光は消えていたが、体内で何かが湧き上がってくるような感覚はあった。


頭の中はパニックだが、身体は事実を受け入れている様だ。


そんな様子を気にも止めず、話を続ける黒フード。

「お前の置かれている状況は、次期に理解できるだろう。少々昔話になるが聞いてくれ。」


一呼吸入れて、再び口を開く。


「この地上界は闇に覆われていた。黒神ノクタールによる支配が為されていたのだ。だが、やがて一人の神が現れると、闇に光が差し込み、次第に光が地上に満たされた。それが今の地上界であり、その神こそがお前の父だ。

その後、光神シャクシン率いる第三世代の神々は地上界に様々な生命を創造し、互いに干渉、進化することで、今の生態系が構築された。人もその中の一種に過ぎなかったが、人には他よりも遥かに優れた能力があった。それが「知能」と「感情」だ。人はあらゆる道具を作り出し、やがて、地上界を統べるまでになった。シャクシンによって魔界に封じられたノクタールは、これを利用することを考えた。

人の「感情」にあらゆる「欲」を与えたのだ。これにより、人は自己の欲求を満たそうと、互いに憎み、奪い、殺し合い、まさにやりたい放題となった。挙げ句の果てに、神々の力の源たる「自然」までも破壊しようとしている。

このまま、神々の力が弱まれば、やがてノクタールは復活し、世界が再び闇に呑まれてしまう。

光神シャクシンの息子トーヤよ、お前が世界を救うのだ。」


次第に姿がぼんやりしてくる黒フード。


「そろそろ時間のようだな。あとはアカン、お前に任せる。トーヤよ、己の力を信じるのだ。…神の導きがあらんことを!」


言い終わると同時に黒フードが消えた。


「ぼ、僕が神の…息子……!?!?」



あまりのショックに意識が混濁し、そのままバタリと倒れ、夢の中に吸い込まれていった…。


「こんな調子で大丈夫なのかよ…。」

倒れたトーヤの顔を覗きながらアカンがボソリと呟いた。

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