山登り
そのころ雫音は先に行った班にさっきのできことを伝えるため一人で山を登っていた。
(香乃ちゃん、ホントに大丈夫かな?)
雫音はさっきのことがまだ心配だったらしい。
なぜなら香乃があんなに弱く見えたのが始めてだからだ。
「キャッ」
雫音は考えながら歩いてたので転んでしまった。
「いたっ」
雫音の膝からは血がでていた。
「もういやだ・・よ」
雫音は目に涙がたまっていた。
(昨日は高橋君にフラれたし、さっきは香乃ちゃんが・・・)
もう雫音はこらえることができずに涙を流していた。
「あっ いたいた。平井さーん おーい」
雫音が歩いてきた道から俊がやってくる。
「平井さんってば」
俊が雫音の左肩に右手をおいて顔を見た瞬間に
「ぐすっ」
「え?平井さんどうしたの?」
俊は泣いている雫音を見て驚いた。雫音の膝から血が出ていることに気付いた。
「えーと 確かここにっと・・あった。」
俊はサイフからバンソウコウをとりだした。
「まぁ軽くすっただけだから大丈夫だよ。ほら貼るよ。」
俊が雫音に膝にバンソウコウを貼った。
雫音は少し落ち着いて泣きやんだ。
「ありがと 杉原君。」
「いいって気にすんなよ。それより行こうぜ。」
「うん。それよりカレーの材料は?」
「あぁそれが女の子一人で山に登らすのはやっぱり危険だって。コースがあっても。だから材料は先生が持っていくって」
「そうなんだ。」
雫音はさっき泣いていたのがウソみたいだ。
俊と雫音が歩いていたら後ろから声が聞こえた。
「ちょっともう歩けるよ。」
「いーやだめだ。」
「なんでよ~ 自分で歩けるよ~」
「もし歩けなくなったらどうするんだよ。」
「そんなことないっって~」
「せめてカレーを作るとこまでは俺が背負う。」
「日向のクセにかっこつけてんじゃないよ。」
「つけてねーよ。一応お前が心配なだけだよ。」
「え?」
「だってお前が怪我したのほっとくと俺の親にブーブー言われんだから。それに人が困ってる人を見過ごすのなんか嫌だし。」
「あんたって案外いいやつなのね」
「いままでどう見てたんだ。」
すると笑ったのは香乃だけでなく、俊と雫音も笑っていた。
日向と香乃は俊と雫音が前にいることに気が付いてなかったのだ。
とくに笑っていたのが俊だった。
「はははっ香乃がおんぶされてる。腹いて~」
香乃は顔を少しふくらませた。
「香乃ちゃんどうしたの。」
雫音が心配そうに話しかけてきた。
「ちょっと足くじいただけ。」
「え?大丈夫なの?」
「うん。今日向が足だから。」
「おいだれが足だって~おら」
日向が急にジグザグに走りだした。
「ちょっ日向っ。危ないって。」
香乃は必至に日向を止めようとしていた。
それに比べ日向は
「おらどうだ香乃。びぃーん」
ガキみたいだった。だがこんなやりとりがあうのはこの二人だけに違いない。
俊と雫音はこのやりといを見て笑っていた。
この班に再び笑顔が戻った。