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遺跡

 しばらく歩いて、宿に着いた。もう夜が明けそうだった。

「お、帰ってきたか。無事でよかった…」

「お姉ちゃん、レオー!」

 パープルさんとミイナが宿の前に立っていた。

「あー疲れたー…」

 おばさん臭く肩を叩くメロン。

「ふう…」

「…」

「…」

「…あの?何か見つかったのか?」

 パープルさんに聞かれてはっとする。ぼーっとしてた。

「あ、ああ、えーっと…街の人たちがいろんな人がいて歩いていって着いていったんだけどみんな足が速くていや速くはないんですけど街の人たちが遺跡の前でいや遺跡じゃなくてその石がたくさんあるところがあって…えーっと」

「落ち着いてよ…」

 メロンに白い目で見られた。

(説明って苦手なんだ…)

「まあ、街の人たちが遺跡みたいなところに行ったと」

 パープルさんは首をかしげてはいるけど、伝わったようだ。

「はい、そうです」

「…また4人になっちゃった…」

 石ころを蹴飛ばすミイナ。

「…また誰もいないわけか。とりあえずその遺跡に行ってみようか…」

 ため息をつきながらパープルさんが言った。


 一旦宿に戻って休息し、八百屋から適当に果物を持ってきて朝食にする。

「こういうの楽しい…。場違いな言い方かもしんないけど」

 りんごを食べてるメロン。

「だね」

 ちょっと笑う。

「まあ、まず味わえない経験だしな」

 パープルさんも。


 食べ終えて、また出発。

 遺跡に到着した。やっぱりみんなどこかに行ってしまったらしく、やけに広く開けた草原になっていた。

「…もう一回来てみると意外に近かったね」

 苦笑いするメロン。

「結構そういうものだよね…はは」

(…もう誰もいないけど、もっと追えたかもしれない…)

 僕も苦笑いする。

「入り口みたいなのがあるな」

 パープルさんに言われて見てみると、石が組み合わさってできた門の下には下に続く階段が見えた。

「真っく…わ!!」

 薄暗い階段を下りていくと突然明るくなりミイナが飛び上がって驚いてた。

「まだ生きてるな。この遺跡」

 パープルさんが辺りを見回しながらつぶやいた。緩やかな傾斜とゆるいカーブを描く階段を長々と下りていく。

「きれいな女神だ…」

 壁には壁画が描いてあった。

「露出は多いわな」

 メロンにばっさり言われる。

「そ、そんなつもりじゃあないんだけど…。いや、そういうつもりももちろんあるんだけど、いやその…」

「…」

 ミイナに変な目で見られる。

「まあ、宗教色のある遺跡は少ないよな。工場とか、もっと実用性重視のものがおおいから」

 パープルさんが少しだけ助けてくれた。

(ふう…)

 改めて壁画を見る。中央にいる女性がペンダントを天に掲げていて、その周りに何人か武器を持った人がいる。さらに周囲の大勢の人たちがその女性に祈りをささげているようだ。そして壁画の隅っこには何かの塔が描かれていた。

(この塔も遺跡なのかな。それにしても…ペンダント?)

 ミイナが首から下げているペンダントに似ている気がした。

「いつまでジロジロ見てんのー?」

 メロンの声が聞こえてきた。振り向くと誰もいない。みんなずっと先に行ってしまっていた。

「あ、今行くよー」

 あわてて着いて行く。階段を下りていくと、彫刻だらけの部屋に着いた。礼拝堂みたいなところらしい。長イスがたくさんあって、大きな女神像の前に演台みたいなのがある。

「…天井高ーい」

 天井を見上げて感動しているメロン。

「ここにもあるんだ…」

 女神像があった。

(やっぱりペンダントしている…)

「今度は肌があんまり見えてなくて残念だったねー」

 にたにたするメロン。

「そうじゃなくて…」

(天井見ててよ。今はミイナがいるから、直接言えないし…)

「普通、彫刻の女性は露出多いからなあ。残念だったなー」

(パープルさんまで…)

「な、何を調べているんですか?」

(話題を変えよう)

 パープルさんは隅っこにある本棚から取った本を調べている。

「昔の聖典のようだな…」

「昔の文字読めますか?何て書いてあるんですか?」

「まあ…大まかな内容くらいは。人間の罪の結晶である赤い悪魔に支配されたこの世界に、聖なる島から現れた聖女サマがやってきて、人々を天国に続く塔へと導いてくれますよ…だいたいこんなところだな」

「もう全部読めたんですか?」

「最初に大体のあらすじが親切に書いてあった」

(なんだ)

グウー

「ん?」

 音がした方向を向く。

「…腹減って悪いか」

 メロンがいた。

「…ごはん食べたいね」

「…ニヤニヤするな」

 怒られた。

「ごめんごめん」

 謝った。

「手がかりもないみたいだし、一度戻ろうか…」

 パープルさんはため息をついた。

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