街の人を追って
その日は船内で眠り、次の日、地図が分からないので目で大陸を確認しながら進むことにする。半日後。
「港だ…。人が見えるか?」
パープルさんに言われて、置いてあった双眼鏡で港を見てみる。
「うーん…。いる!!誰かいるよ!!」
感激して声が裏返ってしまった。
「ほんと?見せて!!」
メロンに双眼鏡を取られた。
「本当だー!!船もいっぱい来てるし!」
みんなほっとして笑顔になった。港に手を振って誘導する人の指示に従って進む。
「よしっと」
メロンがレバーを引いて船を止め、全員降りた。
「人がいる…」
当然のことに感動する。僕、メロン、ミイナがぼーっと港にいる人達を眺めている間、パープルさんはあたふたと集まってきた港の人達に事情を説明し、しばらくしてこっちにやって来た。
「とりあえず、領主のところに行って事情を説明することになった。村と連絡が取れなくておかしいとは思ってくれてたようだし…」
パープルさんが事情を説明しに行っている間、宿で待機することになった。
「ふかふか…」
ベットに横になる。費用は領主が持ってくれるそうで、高い宿にしたからいいベッドだ。メロンやミイナは隣の部屋でゆっくり寝てるんだろう。
「…」
何で村の人達はいなくなったんだろう?俺達がミイナを石像から出して、武器を宝箱から出して…そのせいだろうか?
(…考えるの止めて…寝よう)
ドンドン
「レオー。パープルさん帰って来たよー」
メロン達の部屋に全員集合しパープルさんの話を聞く。調査団を出してもらえるらしい。他にもその間に住むかという話やらお金の話やらいろいろと聞いた。とりあえず心配しなくていいらしい。
「というわけで…今日は疲れた。何か食べてから眠ろう」
パープルさんは食事中も眠そうだった。疲れてるんだろう。
夜中。
こつこつ…
ドアを静かに叩く音で目が覚めた。
「レオ…レオ…」
メロンの声?
「どうしたの…?」
ドアを開けて、メロンを部屋に入れる。
「ひ、人が…窓の外見てみて…」
「ん?」
言うとおり窓の外を見た。
「なんだあれ?」
街の人々がふらふらと家から出てきて道路を歩いていく。次々と人が合流して、川のように進んでいく。子供から老人まで、女性も男性も。ガス灯の明かりに照らされて幻想的といえなくもないが、不気味さのほうが勝っている。
「追いかけてみよう…!」
「パープルさんは…?」
メロン達の部屋の前を通ったときにメロンに聞かれた。
「……疲れてるみたいだし…。手紙置いとこうか。それで僕達だけで危なそうだったら帰ろう…」
「うん…」
ドアの隙間に手紙を入れておいて、宿から外に出る。
「あのー…すいませーん…」
ふらふら歩く人に恐る恐る話しかけてみるが、こっちを見たのか見ないのか分からないくらいにふっと見ただけで視線を前に戻してしまった。
「無視された…」
「追ってみよ?」
メロンに言われて、人の流れの中に入ってみる。後ろからどんどん人がくっついてきて、あっというまに最後尾が見えなくなった。
「これって、この街の人全員入ってるのかな」
小声でつぶやいてみる。
「…そうみたい」
格好がベットから出てきたような人が多いのでよく分からないが位の高そうな人も農民の人もいて、中には鎧を着た警備をしていた兵士まで混ざっているようだ。誰一人口を開かないので気持ち悪い。
「…」
「…」
「…疲れた…」
メロンがつぶやいた。徐々に日が登ってきて朝になりつつある。歩くペースは遅いけど、雪道を長い時間歩き続けてだんだんきつくなってきた。もう集団は街も街道もを離れて進んでいる。
「眠い…どこまで歩くんだろう?子供も歩いているのに」
言うとおり眠そうなメロン。
「こっちに行くとなにがあるんだろう?」
「分かんないよ。村から出たことないもん。レオもそうでしょ」
いらいらしてきたメロン。
「…」
「…」
「レオー…お腹空いたー」
「…」
「レオー…足痛いー」
「…」
「レオー…眠」
「何か見えてきた…」
「え?」
前方に岩の塊が見えてきて、ふらふら歩いていた人たちが座り込み始めた。
「休憩するみたいだ」
「疲れたー…」
メロンもその場に座り込んだ。
「何だろうここ…」
周りにはあちこちに大きな平べったい石があり、ところどころに石が組み合わさって門のようなものだけが残っている。
「ここって、遺跡じゃないかな…?」
「レオ…。とりあえず…一旦帰らない?この人たち、眠ったり食べたりするのか分からないし…。ミイナとパープルさんも心配してるだろうしさ…」
(この人たちがどこに行くのか気になるんだよなあ…。でも、この人たち、息もあまり切れてない…)
「帰ろう…」
しょうがない。
「うんうん」
ほっとしているメロン。
「帰りも長いな…」
「…文句言わない」
メロンに怒られた。




