装置のところへ
うなずいたミイナは再びペンダントを黒い扉の前にかざした。
ぎぎぎごごご…
黒い扉が開いた。
目の前には円盤が床に敷いてあり、そばに手のひらサイズの板が置いてあった。
「ここから行けるらしいんだけど…どうすればいいのかな?」
「この押せって言わんばかりの、目立つ赤いの押せばいいんじゃない?」
メロンが覗き込んできた。
「押すよ…」
ピイン!
敷いてあった円盤が浮き上がり、上空に飛んでいった。
「…すごい」
気まずかったのか、しゃべらなかったミイナが声を出した。
「…すごいね」
口を開けてぽかーんとしているメロン。
「…飛んでった」
しばらく見えなくなった円盤のほうを眺める僕達。
「……で?私たちは?」
メロンが振り向いてきた。
「…どうしよ。もう1回押せば戻ってくるかな」
もう1度赤いのを押す。
…ピイン…
遠くで音がして、円盤が戻ってきた。
「さ、乗ろう…」
僕とメロンが乗った。
「ミイナ?行くよ?」
うつむいているミイナにメロンが声をかける。
「うん…」
やっぱり止まっている。メロンが一度円盤を降りて、ミイナの手をつかむ。
「さ、行こ?」
笑顔のメロン。
「ん…その…」
下を向くミイナ。
「…ん?」
「…ありがとう」
小さな声だった。
メロンがミイナの手を引いて来た。
「押すよ…」
声をかけて、赤いのを押した。
ピイン!!
「わー…」
円盤が浮き上がり、体がぐっと押される。高いところから見た地面は模型のようで面白い。
「模型みたい」
メロンも同じことを考えていたみたいだ。
イイイン…
円盤が到着して降りると、目の前には長い通路があった。
「高いなあ…」
通路には格子状の柵が付いているけど、間から入れば下に落ちれそうだった。その通路を渡った先には、レバーが手前にぽつんと1つと、ボタンとダイヤルだらけの斜めの箱、そして距離を置いて巨大なガラスの板があった。
「ひょっとして…板で…小さい白い丸いのって…集まってきた人たちかな」
少し震えているメロン。
「たぶん…そして、真ん中はこの塔…大きく赤く点滅してるのが焼き払う範囲?」
「たぶん…赤いのが白い点々を包んでるみたいだから…」
「そして、またわけの分からないスイッチがいっぱい…」
うんざりしているメロン。
ウウウン…ギイイイン…ガンガンガンガン!!!
「うわあ!!」
「ひゃぅ!!」
「!!」
床が揺れ始めた。
「動いてる…光を発射する時間なんだ!!ど、どうすればいいの?」
「私が知るかって!!」
怒鳴られた。
「このままじゃみんな危ない!光をずらして…悪魔に当てないと!!どうすればいい!?」
「だから、私が知るかって!!…とりあえず…赤い場所をずらせばいいんでしょ!?」
メロンはそう言うと、ダイヤルを適当に回し始める。
ガガガガガガ!!!!
「うわああああ!凄い揺れてるって!!強くしちゃってるって!!」
「うるさい!!戻らないんだってこのダイヤル!!どうなの!!赤いのずれた!?」
「何にも変わってない!!」
ガラスの板を見て、目の下のほうでレバーが光っているのを見つけた。
「これか!?」
ぐいっとレバーを引く。赤い範囲はちょうどドーナツ型に広がり、白い点々を避けて、周りを包んでいく。
「レオ!!これ大丈夫だよね!?」
「分かんない…。赤いのが安全地帯だったら…。あの…」
「大丈夫だって!」
メロンの手もレバーをつかんだ。
「…ミイナも…」
ミイナの小さな手が僕達の手の上に乗っかった。
目の前は真っ白になり、僕は歯を食いしばった。右手はレバーを握り、左腕でメロンとミイナを引き寄せていた。
光は弱まって、目の前の光景は元に戻った。ガラスの板を見る。
「あ…白い点々がそのまま残ってる…」
「じゃあ…みんな無事なの!?」
メロンはまだ震えている。
「多分…」
「あの、せ、狭い…」
「あ、ごめんミイナ」
メロンがミイナから離れた。
「レオ…そろそろ離れろ」
「あ」
慌てて離れる。にやにやしているミイナの髪をくしゃっとつかんでみる。
「ははっ」
ミイナが笑ってくれた。
部屋を出ようとしたとき、ミイナが金ぴかの円盤の前に立っているのに気付いた。
「それは何?」
(今まで気づかなかった…)
本に書いてあるかもしれないけど、話をしてみることにした。
「ミイナがこれに乗って天まで…みんなを連れて行くんだって言われた」
「近づかないほうがいいね。うっかり乗っちゃったら大変だし」
メロンがミイナに近づく。
「ん…」
こっちに来るミイナ。
ガシュン
ドアを開け、パープルさんのいる場所に向かう。壁にもたれて座っていた。
「お…どうだった?ずいぶん揺れてたけど」
「えと…」
簡単に説明した。そして、ミイナがゆっくりパープルさんの前に出た。
「…」
なかなか言葉が出せないらしい、そして、無言でぺこっと頭を下げ、パープルさんがすっとその頭をなでた。