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ミイナとパープルさん

 獣がいた格子の向こうに進む。

「くっさ…」

 メロンの言うとおり臭い。獣の糞の臭いだろうか。もう一つあったドアを剣で斬って開けて、階段を上ってもとの通路に出た。

「ふうー…早く外に出たい」

 もとの通路も薄暗いし。

「私もー」

 ふてくされてきたメロン。

「まあ、長旅もこれで最後だろう。きっとうまくいく…」

 正直なところは自信がないといった感じのパープルさん。

ごごごご…

「ん?」

 何か音がする。背後の天井が下がってきていた。

ごすん

 元来た道に戻れなくなった。

(でも、剣で斬れば開けれるよな)

「…周りをよく見るんだ…何が起こるか分からない」

 パープルさんに言われて周囲を見渡す。

「…?…何も…」

 メロンが言いかけたとき、

ゴゴゴゴゴ!

 前方の天井が下がってきた。このままでは閉じ込められる。

「…」

「…」

「急げ!!2人とも!!」

 パープルさんに言われて、僕とメロンは走り出す。

ごすん

「パープルさん先行っちゃった…」

 メロンの言うように、パープルさんは降りてきた壁の向こうに行ってしまった。

「武器で斬ろう」

サクッ

 短刀を差し込んで、円を描くように斬る。

カッ

「…全然びくともしないけど…」

 メロンの言うように、円を描いた部分が全く動かなかった。

(きれいに円筒が取れてトンネルみたいなのができると思ったのに…)

「長さが足りない。どうしようか?」

「ん?ばらばらにすればいいでしょ?」

 斧を振り上げるメロン。

「えい!ほい!はいや!」

「うわ!危ないって!!」

 振り回される斧から逃げる。

サクッ!サクッ!…


 分厚い壁を見つめる。

(…2人とも閉じ込められた…。武器で開けられるか…。!?)

 目の前にいるのはミイナだった。特に驚いた風でもなく、こちらを冷たい目で見つめてくる。

「ミイナ…黙ってペンダントを摩り替えたことてすまなかった。ごめんね…」

 ミイナは剣を構えた。

「パープルさんも…短刀を持っているんでしょ?」

 淡々としている。

「……ミイナ…剣を降ろすんだ…。」

「…」

「さあ、私達と一緒に…」

 手を伸ばす。

「ふ!!」

ひゅん

 ミイナが振り下ろした剣をかわし、短刀をその剣に叩きつける。

バン!!

 剣はあっけなくミイナの手から離れていった。

「…ミイナ、私は」

「別に怒ってない…。ミイナは、ただ使命を果たすの」

「救いはただのおとぎ話、偽物なんだ。塔の前にいる人たちは…救われなどしない…」

がしゅん…

 扉が開いて、村で見たことのある人が、2人ほど出てきた。

「…パープルさんには、2人に剣の使い方を教えてもらいたかった。でも…2人はあんな感じ…。だから、新しく人を連れてきたの」

 青年が2人出てきた。始めてみる顔だ。

「やめるんだ、もう。村の人たちを元に戻すんだ」

 私は人を斬りたくない。それを、ミイナは見越しているようだった。

 出てきた青年の1人が剣を拾う。

「な!?」

 拾った剣をこちらに向けてくると思っていた。拾った剣はミイナに突きつけられて、止まった。

「武器を置いて?」

 ミイナの幼くて、遠慮の無い冷静な声が、不気味に聞こえた。

かたん…

 武器を捨てた。捨てなければミイナは自分を斬らせるつもりだ。

「剣を降ろさせるんだ!!」

 剣はあと少しでも動けばミイナに刺さる。

「…」

 ミイナが目で合図すると、もう1人が私が捨てた短刀を拾い、そのままこっちに近づいてきた。

「ミイナ!!」

「動かないでね?」

 自分に剣を突きつけさせたまま、声は勝ち誇っている。表情も。でも…。

すぱっ…

「ぐあ…」

 自分の短刀で斬りつけられて、倒れた。ミイナはポケットに手を突っ込んでペンダントを持って行った。


バラバラバラ…

 ようやく壁が崩れた。

「パープルさん!!」

 パープルさんは倒れていた。

「う…。ミイナは…?」

 ゆっくりと起き上がる。服にはべっとりと血。自分で服を一部破いて巻いてあったが、血がにじんでいる。

「たぶん…先に…」

 メロンも声が震えている。

「…そう深刻な顔をするな…まあ、平気ではないが…いまいまくたばることはない。2人ともミイナを追ってくれ」

「ミイナが…これを!?」

 恐ろしくなった。

「…ああ、でも…浅いしとどめは刺さずに行った。それに、悲しそうな目だった…まだ、こっちに戻ってこれるはず…行ってやってくれ…」

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