塔到着2
レオたちが塔に着く前。
数日後。誰もいなくなった街から取った金で買い取った車で、ずっとドライブしてきた。
「見えてきたか…」
塔の周りには何もなく、ただ小さい砂漠のようになっている。砂漠の周りの青々とした木々と合わさって美しく見えなくもない。茶色の塔は遠くから見ると土か何かで造った遺跡のように見える。
(まだ誰も来ていないか…)
キッ
一度車を止める。
「?…どうして止めるの?」
ほとんど話さないミイナが聞いてきた。別れた3人のことが気になるのか、こちらを信用してないのか。
「時間なんだ。塔が壊れてなければ光が出てくる。人々を天に導く光だ」
(そんなことは思ってないが)
「…なら、一緒に塔のそばに行く?」
ミイナはさらっとした口調で言った。
(子供ってたまに残酷で意地悪な生き物に見えるな…俺が嘘をついてるせいか?)
「いいや、まだやることがあるから」
「…塔は誰も助けたりしない」
ボソッとミイナが話した言葉が一瞬理解できなかった。
(それが分かっているならなぜ人を連れてこようとした?)
「え?」
思わず聞き返した。
「…なんでもない」
ミイナはそれっきり黙ってしまった。
ビイイイイイン…
何かが回転するような音とともに、塔の頂上に光の玉ができ始める。太陽ほどまぶしくないにしても、目をそらすくらいの眩しさはある。
(始まった)
「これつけといたほうがいい」
ミイナにサングラスを渡す。
「ん…」
(大きかったかな)
顔の半分くらいがサングラスで埋まってしまった。
イイイイイイン!!
音と共に地面が振動し始める。
「絶対ドアを開けるなよ?」
とりあえずミイナに念を押しておく。
「大丈夫…」
ゴバアアアアアアア!!
地面の揺れはひどくなり、サングラスをかけていても目が痛くなるほど眩しく、高い音がひどくなって耳栓を用意しておけばよかったと思う。もしものために、バックできるようにスタンバイしておく。
「!」
目の前に突然起きた土ぼこりが壁のように迫ってくる。塔はもう見えなくなり、土ぼこりでできた巨大な塔がすべてを包んでいくよう。
ざああああああああ!!
土ぼこりの塔に車が飲まれ、分かるのは窓や車体にぶつかる砂の音と土ぼこりだけになる。
(…)
1時間近く経ったころ、ようやく砂嵐が収まった。車のドアを、気持ち警戒して少しだけ開ける。熱い空気が車内に入ってきたときはヒヤッとしたが、体が焼かれるほどではなく、ただ熱いだけだ。
「外に出ても大丈夫そうだな…出てみよう」
外に出る。ミイナも続いて出てきた。
「う」
まだ砂埃が残っていて、目を開けているのがつらい。遠くはぼんやりとしていて見えない。
30分くらい経過。
「もともと何もないから当然か」
光景は砂嵐前と変わらない。塔の周りは相変わらず砂漠。
「…」
「…」
ミイナの目は変わらない。何を考えているのだろうか。
「行こうか」
車に乗った。塔は目の前かと思っていたが、実際にはやや時間がかかった。目の前に来ると塔は思ったより大きかった。10段くらいの階段を上って大きな門の前に着いた。
「さてと…どうするか」
と言ったときに、ミイナが横から歩いてきて門の隣にある壁に手を触れた。
ぎぎぎぎぎぎ…
長年閉まっていた扉は聞き苦しい音を立てて開いた。
「…誰かに教えてもらったの?」
「お父さんに…」
親のことを聞こうかとも思ったが、無表情のミイナを見て聞く気がうせた。
(!)
人の気配がして振り向いた。双眼鏡を除いてみる。
「…もう第一陣の人たちが到着したみたいだな。急ごうか」
塔の内部に入る。地面と壁は茶色で天井は真っ黒で圧迫感がある。ポケットから本を取り出す。
「気をつけて行こう。トラップだらけらしいから」
3階くらいまで来たころ、ミイナが塔の窓から外を見ているのに気づいた。
「…何か見える?」
「ん…」
ミイナは言いにくそうだ。
「?いい?」
見に行ってみる。
「…ああ、あの3人…来ていたのか」
あの3人が塔に入ってきているところだった。
「…行こう、無駄に3人と争いたくない…」
「…」
ミイナは暗い顔で黙っている。
「ここだ…」
翻訳できなかった箇所も多いが、本に書いてある地図を参考に進む。壁にあるレバーを動かすと、もと壁だった場所が上に動いて階段が見えた。
「さ、行こう」
「…はい」
ミイナの思いつめた顔はずっと変わらない。
(…3人といたときは笑顔だったんだけどな)
階段を上っていくと、暗い部屋が一つあり、そこには床から数センチ浮いている円盤があった。
「ここに立って…」
ミイナを円盤に立たせる。
ビー…
ブザーが数秒鳴って、あとは静かになった。
「…ペンダントが必要なようだな。ここで少し待とう…3人もいずれ来るだろう」
「ん…」
(…ペンダントを黙ってすりかえられたことが悲しいらしい…。3人に会ったらまた仲間になろうとするかもしれない)
「ここで待ってて、やっぱり3人を探してくる」
ミイナがうなずいたのを見てから、階段を下りた。