塔到着
一度見失った村の人たちは見つけられなかった。結局、最初の予定通り塔に向かうことになった。
そして数日後、
「あれ…塔じゃない?」
昼になろうとしているころ、メロンが声を上げた。
「…着いたか」
険しい顔をするパープルさん。茶色い塔の周りはクレーター状になっていて、黄色い砂が周りを取り囲んでいて…砂の上には大量の人がうろうろしていた。
(アリみたい…)
「行こう」
「おう!」
僕の言葉をうけて、気合を入れてメロンがずんずんと歩いていった。
「あれ、村長さん?」
遠くにひげの人が目に付いた。
(もしかしたらみんな無事かも!?)
「あんなに遠くでもひげだけ分かるね!」
うれしそうなメロン。2人で全力で走っていく。
「父さん!」
メロンを放っておいて走っていく。うつろな目でこちらに反応しないのは相変わらず。
(それでもいい)
「絶対もとに戻すから!」
振り向いて、走ってパープルさんのところに戻る。
「あ、メロン」
メロンも走ってきた。とてもうれしそう。
(よかった!よかった…)
表情だけで十分理解できた。メロンも同じらしい。
(無事だったんだ)
「さあ!行こう」
パープルさんも僕たちの様子を見て分かったらしく、うれしそうに号令を出した。
「おうぅぅよ!」
気合が入り過ぎのメロン。3人とも胸張って前進する。
「?」
パープルさんが突然後ろを振り返った。僕とメロンも振り返る。
「わ」
村長さんがこっちに向かってきていた。目がうつろなまま歩いてきているので、一瞬ゾンビみたいに見えた。
「逃げんな」
「いや、あの」
メロンに言われて、後ずさりをやめて前に出る。
「ミイナについて…話しておきたい…わしは嘘をついていた。知っていたんだ…お前たちが連れてきたときに気付いていたんだ」
頭を振りながらの村長さん。正気を保とうとしているのだろうか。息を切らしながら話し続ける。
「400年以上前のことだ…わしは、もっと南の、この星で一番暑い街で生活していたんだ。…そこにあの赤い目の化け物が現れて人を次々と襲っていった。みんな化け物のいない北へ北へと逃げて…逃げているうちに、誰が最初に言い出したのか知らないが…この化け物は悪魔で、人々の罪の現れだと言い出した。まがい物の聖典がどこからともなく現れて、人は化け物の襲来に耐えて罪を償い、そして楽園に導かれるのだと…。それからは神殿を建て続けていった…そして人を石に変えて聖堂に置いていき…そばには導きのペンダントと、聖女を守る武器を置いた。そして目の前にある、恐ろしい塔を建てた...。導きのペンダントは人を惑わし、人を塔へと導いていく…塔は夜明けとともに光を集め数時間に1度周囲の物を焼き払う…その死によって人は楽園に行くのだと…。...塔と聖堂を建てた後、みんな化け物から逃げて逃げて北に向かい…その道中で、女の子が1人生まれた」
「ミイナなの?」
即座に反応するメロン。
(あ、僕も言おうと思った)
「そうだ…。そして、親は化け物に襲われて亡くなったよ…村に着くと、そこに聖堂を建てた…。そして、ミイナを、石像にした。作り話と知りながら救いの話をしてね…。…石になりたいと思っている者などいなかったよ…。わしも…結局臆病者だった…自分が石にはなりたくなかった…黙っていてすまなかった…。何もできず、すまなかった…」
弱々しく、目を合わせようともしない。操られているからというよりも気まずいからだろう。
「村長さん…。…?」
「…」
メロンが話しかけようとしたが、反応がなくなってしまった。
「…行こうか。助けてやらないとな」
パープルさんに言われて、村長さんに背を向けて塔に向かう。