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公園

 夕食後、部屋に戻りながら、

「さて…夜見張ってようか」

 メロンが僕とパープルさんにささやき、僕たちは目で合図し合った。


 夜になった。僕は隣の部屋で横になって待つ。

(…何もないといいんだけどな…)

トントン…

 ドアを開けるとメロンとパープルさんがいた。

「外にでたみたい…」

 メロンが小声で話した。僕達もそっと外に出る。

「街の人たちが…」

 ぞろぞろと家から出て行く。出てきた人たちは大きな通りで合流してまたぞろぞろ歩いていく。前の街で見た光景と全く同じ。

「ミイナは?」

 3人であたりを見回す。

「?パープルさん?ポケット…ちょっと光ってません!?」

 メロンに言われて、パープルさんはポケットからペンダントを取り出す。

「光ってる…」

 目を丸くするパープルさん。宝石の部分が紫に薄く光っていた。

「夜、光ってたのか…分からなかった。……まずはミイナを探そう」

 パープルさんの号令で手分けして探し始める。


 1時間後。

「いた?」

 焦った表情のメロン。

「いや、いなかった…。宿に戻ってたりして」

「そうだな…一度戻ってみるか」

 メロンの提案にパープルさんが同意して、一度戻ってみる。すると、ミイナは宿の部屋の前の廊下を行ったり来たりしていた。

「あ、どこいってたのー?」

 ミイナのほっとした表情が作ったものに見えるのは、僕が変な目で見ているからだろうか?

「…」

「…」

「…」

 3人顔を見合わせる。拍子抜けしたのと同時に、どう取り繕うかを目線で会議する。

「なんだー…目覚ましたらいなくなってたから、どこに行ったのかと思ってさー」

 やや大げさな演技でメロンがほっとして、僕とパープルさんが後に続いてほっとした。

「目が覚めちゃったから…ちょっと歩いてみた。ごめん…」

 うつむくミイナ。

「まあ、無事でよかった…。もう夜は外出るなよー?」

 ちょっと大げさに安堵するパープルさん。

「うん…」

(ミイナの顔はどこか曇っているように…いや、考えすぎか。ペンダントのせいらしいことは分かったわけだし。何もミイナを悪者みたいに考えなくてもな…)

 そう思ってベットに入って眠った。


 でも、

ドンドンドン!!

 明け方、ドアを叩く音で目が覚めた。

「レオ!!」

「ん?メロン?パープルさんも…」

 2人がづかづか入ってきた。

「ミイナがいない!!」

 必死な顔のメロン。

「ん?トイレにでも行ったんじゃないの?」

 寝ようとする。

「起きろー!!」

 メロンにかけているものを投げられた。

「わ、分かったって…」

 目をこすって起き上がる。


 外に出て、3人で手分けして探す。

(…どこだろう…?)

 1人、適当に進んだ先は公園だった。

「ミイナ!!…?誰?」

 公園にミイナと青年が1人立っていた。

「ミイナ…ここにいたんだ…。さあ、帰」

「帰らない」

 そっけない態度のミイナ。

「え?」

「…本物のペンダントはどこ?」

 初めて冷たい目のミイナを見た。親に怒られたように、頭の中が真っ白になって何も考えられない。

(どうやって言い訳すればいいんだろう…)

「えと…んっと…。すり替え…ました。今は…その、メロンが持ってて…。ここには無くて…。ごめんなさい……」

「どうして?」

 小さな声で、聞いた声の中では低い声、冷たい声だった。

(言い訳…言い訳…できそうにない。どうして僕が見つけちゃったんだろう?メロンやパープルさんも僕と同じくミイナを疑ったのに。どうして3人一緒じゃなくて僕独りなんだろう!?…いやいや、そんなこと考えてる場合じゃない。言い訳するか?謝るか?どうしてこっちに来ちゃったんだろう?他の場所に行ってれば2人を先に見つけたかもしれないのに…いや、そんなこと考えてる場合じゃ)

「どうして!?」

「ひ……。ぼ、僕は…ミイナが…。………ミイナ…のペンダントが!!…村の…街の人たちを…連れ去ったんじゃないかって………。それで…」

「知ってるよ…みんなずっと私を疑ってた…」

「ごめん…。ごめん!!でも!!ペンダントは…僕達に預からせて…ほしい…。ミイナを…信用してないわけじゃ…」

 どうしても、村長さんが言ったように、考えを捨てることができなかった。愚かになれば楽だったかもしれない。そして、嘘もつけなかった。

「信じ…れないんだ。僕は…」

(何を言ってるんだろう。どれだけ今の一言でミイナを傷つけたんだろう…)

 早朝で薄暗い。でも、ミイナが泣いていることは分かった。

「…ごめん…」

「…ミイナ、さあ、人々を救済しに行こう」

 今まで無表情で黙っていた青年だ。

「誰だよ…!!」

(そうだ。こいつがミイナに何か言ったに違いない!!)

「ミミルだ。君の持っている武器はミイナを守るためにあった。これからは私がミイナを守り、塔に案内する。いただこう」

「何を…言って…?」

 ミミルが消え、すぐに目の前に

ドカッ

「ぐえええ!!」

 僕の胸に足がめり込んだ。

「その様子では、戦い方もほとんど知らないようだな」

 僕は倒れていた。ミミルの顔と、その後ろには早朝の空が見える。

「…何を言って…」

「君は正しかった。ミイナは人々を救済する使命がある。君はミイナを守るためにこの武器を手にし、ミイナをあちこちの街に案内して人々を連れ去る手伝いをしていた。だから、君が疑ったことは正しいことだった」

 青年は無表情で剣を眺めている。

「何者…なんだ?」

「別に。ただの学生だった。でも事実を知り、自分次第で人を助けられることを知っている。だから動いているんだ。こんなことをしていてこんなことを言うのもおかしいが、俺を信じてミイナを預けてほしい」

 信じられるわけがない。でも体は動かず、ただミイナを連れて歩いていくのを見ているだけ。どんどん遠くなって、通りの角を曲がったところで見えなくなった。

「つつつ…」

 痛みは引いてきた。公園のトイレか何かの壁にもたれかかる。

「レオー!!」

 メロンの声が聞こえてきて、遠くからメロンが走ってきた。

「メロン…僕…ごめん…ミイナに、ペンダントのことを謝って…ミイナが連れて行かれて…。武器も取られて…僕…」

「誰に!!誰に!?」

 慌てふためいている。

「ミミルって…言ってた…ごめん…僕、何もできなかったよ…。痛っつつ…」

 メロンは僕を起こそうとした。

「だ、だだ大丈夫?」

「大丈夫…痛みも引いてきたし…」

「ええ、えっと…ここにいて!パープルさん探してくるから!!」

 走っていった。

 戻ってきた。パープルさんも一緒だった。

「いつつつ…」

「…どうやら、骨は折れてないようだな。まあ、素人判断だが」

「よかった」

 ほっとしているメロン。2人に支えられながら一度宿に戻った。

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