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「これからどうしようか?」

 誰に聞くというわけでもなくつぶやいた。今は宿に戻って、また八百屋の果物を食べている。

「早めに別な街に向かったほうがいい。人気がないと、また昨日の化け物が出てくるかもしれない…」

 パープルさんは深刻そうな顔だった。

「さ、早いところ近くの街に行こう」

 明るい顔を作るパープルさん。目は暗いけど。


 ホテルを出る。

「…ちょっといいかなー」

 手を自信なさげに挙げるメロン。

「どうした?」

「ちょっと…なんというか必要なもの…というか…が、あってさ」

 パープルさんの問いにさらに自信なさげなメロン。

「まあ、いいか。行こう」

 ぞろぞろ歩き出す僕達。やや焦り気味のメロン。

「…宝石屋か…」

 がっくりするパープルさん。メロンは宝石屋の窓側に並んでいる商品を眺めてはりついていた。指輪かなにかを眺めているらしい。

「盗むなよ…?」

「はーい…」

 パープルさんに言われても、名残惜しそうに、ちらちら見ている。

「お姉ちゃん…」

「だ、大丈夫だって、盗まないから。そんな目で見ないでって。さ、行こう行こう?」

 ミイナに寂しそうな目で見られてさすがに焦ったらしく、窓から離れた。


「…近くの街ってここからどれくらいなんですか?」

 地図を見ているパープルさんに話しかける。

「ああ、徒歩でも割と時間はかからないはず…西に…。メロンは?」

「さっきの宝石屋さんかも…」

「…やっぱり盗む気なのか?」

 呆れた声のパープルさん。振り返って戻ろうとすると、

「あ、来たよ?」

 ミイナが声を上げた。向こうから走ってきた。

「いやいや、お待たせお待たせ…。もう一目みようとしてたら、みんな行っちゃっててびっくりしたー。じっと見てたら誰もいなくなってんだもん。びっくりして走って…」

 このメロンの顔。同じことを繰り返す言動。焦ってる感じがする。焦っている理由は、こっそり盗ってきたからとしか思えない。

「…もしかして、盗んできたのか?」

「いいーえ!!」

 パープルさん聞かれて元気に答えるメロン。僕には、この顔は盗ってきた顔にしか見えない。

「…ま、まあ、信用する」

 少しくらいならまあいいか、という感じで諦めたらしいパープルさん。

「はい!!」

 やった!という顔のメロン。

「さ、出発しよう」

 パープルさんはまた気合を入れなおしたみたい。


 次の街まで、汽車の駅も当然無人だから徒歩。

ザクザク…

 雪を踏む音しか聞こえない。

「次の街は誰かいるかなー?」

 ミイナがみんなに聞いてきた

(いると思う…。ミイナが今一緒にいるから...思い込んじゃだめだけど...でも)

 そう思いながらも、

「うん。いるよきっと」

 と答えた。

「いい加減、にぎやかなとこ行きたいよねー」

 愚痴っぽいメロン。

「そうだな。人がいれば、また事情を話して、探してもらって…。今度こそ解決するさ」

 解決しそうにないということを隠していることが分かる顔のパープルさん。


 数時間歩いた後。

「あ。街だー」

 僕に負ぶさっているミイナが声を上げた。距離が長いので交代でミイナを負ぶっていた。

「ああ、やっと着いたー」

 足をとんとん叩くメロン。

ザクザク

「あ、誰か来た!」

 街からぞろぞろ人がこっちに向かって走ってきているのが見えた。


「…ふう…」

(人がいた…これで解決すればいいな…。退屈してたけど、村に戻りたいよ)

 前の街と同様に、領主さんのお金で宿に泊まっている。前と同じように僕は1人部屋。少しさびしい。

 また領主に説明しに行ったパープルさんによると、異変に気付いて前にいた街に人を遣っていたらしいがすれ違いになっていたようだ。

ドンドン

「レオ?入るよ?」

 こっちが返事をする前にメロンはずかずか入ってきた。

「何?」

「んー、パープルさんはまだ忙しそうだし、ミイナは寝ちゃったしさ」

「で…街で見てたペンダントさ…盗んだの?」

 どうせ盗んでないと答えると思う。

「いいや?」

(やっぱり)

「まあいいや…それよりさ…遺跡で見た壁画にも…ミイナが持っていたペンダントがなかった?突然出て来たおじいさんには聖女様って呼ばれて…」

「…レオもそう思う?」

(僕だけがそう思っていたんじゃなかったんだ)

「考えちゃいけないことなのかもしれないけど…。ミイナを洞窟で見つけて…ミイナがペンダントを手に入れて、それから、村の人がいなくなって…。ミイナのせいじゃないかって…さ」

(僕は…今いけない考えを持っている…と思う。でも…)

「…」

「…」

「…レオ。私さ」

 メロンはポケットに手を入れる。ポケットから出したのはさっき眺めていたペンダントだった。

「…盗んだの?」

「盗んだの」

「メロン…」

「そんな目で見ないでって。このペンダントを、ミイナの持ってるやつとすりかえて、そして、ミイナの様子を見てれば分かるんじゃない?」

「確かに…このペンダント、ミイナの持ってるやつと似てる。…ちゃんと考えてたんだ。ただ盗もうとしてたのかと」

「まったく…」

 むっとするメロン。

ドンドン…

「はい」

「ちょっと入るよ」

 パープルさんだった。

「あ」

 ペンダントを持っているメロンが固まった。

「やっぱり…」

 パープルさんは怒っている感じではない。

「盗んだのは…盗んだんだけど…あの」

 慌てるメロン。

「で?何か理由があるんだろ?」

「え?あ?はい!!」

「あの…」

 メロンがさっきの僕達のやり取りを説明した。

「…なるほど…じゃあ、私がすり替える…」

 パープルさんも気乗りはしないみたいだ。でも、考えていることは同じだったみたいだ。

「メロン…ばれたらさ…自分だけ逃げないでよ?」

 ふと気になったのでメロンに確認する。

「当たり前でしょ。逃げるに決まってない」

「え?」

(言葉がおかしい。逃げるに決まってるって言おうとしたんじゃ...)

「逃げない逃げないって。一緒に謝ろ?そのときは」

 笑うメロン。

「私も謝るさ…」

 パープルさんもちょっとだけ明るい顔になった。


 夕食に出かける。パープルさんが僕とメロンに軽く頷いて合図した。僕とメロンも返した。

(…すり替えれたんだ)

 夕食は久しぶりにちゃんとした料理人が作った料理を食べれた。

(でも、正直不安だ…)

 ミイナがおいしそうに食べているのを見て辛くなった。

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