序章っつーかキャラ紹介
キラー・スマイルは金髪碧眼でかわいい丸顔をした、素直ないい青年である。あまりに素直すぎて、バカと言われて田舎から追い出され、仕方なくニューヨークへ来た。ぼろい肩かけバッグをかけ、くすんで白が夕焼け色になったしわだらけの半そでシャツ、薄汚れたジーンズとスニーカー。多種多様な人種とワケありのるつぼである、この街では珍しくない格好である。
彼はひょんなことから、パサランというボクシングのトレーナーと知り合った。彼は下は紺のスラックスにスニーカーという、キラーと同じラフな格好だが、上はカラフルなチェックのシャツで決めて、おしゃれである。顔だちは整っているが、童顔で可愛いアリョーシとちがい、目は鋭く、口元はきりりとしまって、野生的。それでいて髪は顎の下まで垂らしたロンゲで、そのたたずまいはどこか浮世離れした戦士というか、中世の騎士を思わせる気品すら感じさせた。
パサランはある事件でキラーに、最強ボクサーの素質があると勘違いしてしまい、とりあえず宿無しの彼についていくことにした。こうして彼がキラーの破壊的素直さに振りまわられる波乱の人生が幕を開けたのだった。
ちなみにキラーは彼をよく「ケサラン」と間違えて呼ぶが、田舎にいた日本人の友達からケサラン・パサランというUMAの話を聞いていたからだ。これは小さな毛玉みたいな生物で、ツチノコやネッシーと同じく正体が今も不明であるが、パサランはそういう話にうといだけでなく、日本のこともよく知らないので、そんなのと間違われても意味が分からず、「ちがう、パサランだ! まちがえんな!」と怒るだけである。
しかし怒られても、素直なキラーは、得意の口元をにーっと吊り上げた満面の笑みを浮かべ、「なぁんだ、やっぱりケサランでいいんだね。よかった、よかった」と納得するだけで理解しなかった。どうも「名前にケサランとパサランのどっちかが入っているから、こいつはケサラン・パサランだろう」と解釈してしまったようである。
当然パサランは「だから、ちゃうわあー!」とますますキレるが、相手は「そんな、UMAだからって恥ずかしがってぇ。ケサラン・トレーナーはこれだから」と笑って相手にしないのだった。
だが、彼の恐るべき素直さは、実はこんなレベルではない、という事実を、パサランはのちに嫌というほど思い知ることになる……。




