18. 出店
よろしくお願いします。
「ねえねえミズキさん。ミズキさんとタマさんって、本当に付き合ってないんですか?」
「いやいやいやエルナちゃん。前も言ったけど、私とタマはそういうのじゃないから!」
出店を見て回りながら、ミズキがエルナの質問に慌てている。
女子達の会話というのは、オレにはなんとなく入っていきづらいものがある。
「え〜でも2人で旅してるんだし、すごく仲良さそうに見えるし、付き合わないんですか?」
「う〜ん、なんて言えば良いのかなあ……ねえタマ、私のこと好き?」
「好きってなんだ」
「ほらね、こういうヤツなのよ」
「え〜、そうなんだ……でも、ミズキさんはタマさんのこと、好きだったりしないんですか?」
「え、えぇ!?私がタマを……う〜ん……今まで何回も助けてもらってるし、すごく強くて頼りにはなるヤツなんだけど……なんか最近は、でっかい犬を1匹連れてるみたいな気分になってきてるんだよね」
「ふ〜ん……」
わかったようなわからないような?という顔をしているエルナ。
「わ、私達のことはいいから!エルナちゃんこそどうなの?マルクス君とは、どこまで進んでるわけ?」
「うぇ!?わ、私とマルクスは別にそんななななな!」
仲良くしゃべっているミズキとエルナをよそに、オレはマルクスに出店で売られている料理について教えてもらいながら、片っ端から食べて回る。
今手に持っているのは、魚の切り身を串に刺して焼いたもの。
他でも見かける串焼きではあるのだが、かけられているスパイスがこの辺りでは見かけないもので、そこがちょっと珍しい。
カレーのような風味のする串焼きだ。
屋台の料理ということで、売られているものは歩きながら食べやすい串焼きとか、サンドイッチやハンバーガーのような形をしているものが多いが、それでも使われている調味料や材料に珍しいものが使われたりしていてどれも美味い。
左手に果汁水、右手に串焼き5本を持ってかじっているオレを見て、隣を歩くマルクスが感心したように声をかけてきた。
「タマさん、すごく食べるんだね。だからそんなに強いのかな」
「そうかもしれない。マルクスは、強くなりたいのか?」
「うん。やっぱり、何かあった時に父ちゃん母ちゃんや、皆を守れるようになりたい。父ちゃんや母ちゃんは、僕に体を鍛えるより勉強をしてほしいみたいだけど」
「そうか。勉強は大事だ。ものを知っていれば、それだけできることも増えるからな。軍人とか騎士とかになっても、たくさん勉強はしなきゃいけないみたいだぞ」
怪獣だった頃はあまり意識していなかったことだが、こうして人間の中で過ごしてみると、そういうことには本当に実感する。
人間というのは凄いものだ。
オレの言葉に、マルクスは少し俯く。
「そうなんだ……」
「もちろん、身体を鍛えるのに越したことはない。健康第一だ」
「そうだよね……タマさん達は、ミックのことはどうするの?」
「本人には何度も言っているが、弟子にはできないし連れても行けない。そもそもオレは、別に何か修行をしたわけでもない。戦い方だって、単なる力任せだ。教えられることなんて無い」
「そっか……」
オレの話に思うところがあるのか、少し黙って考え込むマルクスだった。
異世界のお祭りというのはどういうものかと思っていたが、なんだかんだでやっていることは地球のものとそんな変わらないらしい。
ミズキにも馴染めるものだったみたいで、オレが出店の食べ物を食べあさっているのに対して、彼女はステージで開催されている歌や踊りを観たり、のど自慢発表会に出場して地球の歌を披露したりと楽しそうにしている。
彼女が楽しいのであれば、オレとしても何よりだ。
異変が起きたのは、そんな楽しい時間も過ぎて、昼にさしかかろうとしている頃合いだった。
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