16. 交際
よろしくお願いします。
「え、ミックとエルナちゃんって付き合ってるの!?」
思わず声を上げたミズキに、マルクスが困り顔を返してくる。
「え、えっと……そういうわけじゃなくて……」
その言葉に、がばと顔を上げるミック。
「そういうわけじゃないって何だよ!マルクスお前だってエルナが俺のこと好きってわかってんだろ!?」
「エルちゃんがミックに好きって言ったことなんて1回も無いじゃない。それにミックってばいつもエルちゃんに怒られてばっかりで、恋人って感じじゃないけどなあ」
「わかってねーなあお前は。アイツと俺は幼馴染でずっと一緒にいたんだぜ?もうアイツもいい歳なんだから、いつも一緒にいる俺のことを意識するのが当然なわけ。確かにいっつもガミガミ言ってくるけどさ、それはアイツが素直になれねーからなんだよ。照れ隠し照れ隠し。だからわざと怒るふりして、俺に話しかけるきっかけを作ろうとしてんの」
「エルちゃんが怒るのは、ミックがいつも勉強とか家のお手伝いとかサボったり、エルちゃんにちょっかいかけたりするからじゃない。今日もそうだし、こないだミックが家出騒ぎ起こした時だって、エルちゃん本気で怒ってたよ?」
「大丈夫だって。アイツのことは俺が誰よりもわかってるんだから」
まくし立てるミックと、なだめるように話すマルクス。
「……」
その2人の会話を横で聞きながら、ミズキの表情がだんだん白けたものになっていく。
「ミズキ、付き合うっていうのは、こういうことなのか?」
オレは恋愛についてはよくわからないのでミズキにちょっと尋ねてみると、彼女は「無い無い」と手を振って応えてくる。
「そんなわけないでしょーが。あんなこと言ってるけど、もう完全にミックの独りよがり、一方通行よ。素直になれなくて好きな娘に意地悪しちゃうなんて話よく聞くけどね、意地悪される方はたまったもんじゃないの。嫌がらせしてきた相手を好きになるなんて、普通に無いから。私の見た感じだとねえ、エルナちゃんはどっちかというと……」
そう言うと、ミズキはマルクスの方にちらりと目を向けた。
「よくわからないが、エルナがミックのことを好きじゃないんなら、そう言ってやった方が良いんじゃないか」
「う〜ん……人の恋愛のことだからなあ、私達がそこまで踏み込んで良いもんなのかどうか……」
腕を組んで、困ったようにするミズキ。
少しの間悩んでいたものの、結局はなるようになるだろうという結論に落ち着き、オレ達はぼやき続けるミックとそれをなだめるマルクスを放置して、宿に戻るのだった。
なお、後になってミズキは「ミックに改めてちゃんとエルナへ告白させる。エルナは断るだろうから、そうすればミックも自分が好かれてないと気づくのでは」という策を思いつく。
それをマルクスからミックに提案してみたところ、鼻で笑われて終わったらしい。
曰く「は?なんで俺がエルナにそんなこと言わなきゃなんねーの。そもそも俺は、エルナのことなんかそんなに好きじゃなくて、アイツが俺のことどうしても好きでしょうがないって態度だから付き合ってやってるわけ。ま、向こうから結婚申し込んででも来たら考えてやるけどね」とのことだった。
マルクスからそれを聞いたミズキは、オレの背筋が凍りつくほどに冷え切った目つきで「ふ〜ん、そう……」とだけ呟いていた。
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