12, 小舟
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アインクル湖を観光することにしたオレとミズキは、湖畔のボート屋にお金を払ってボートを出してもらった。
乗る前に簡単なレクチャーは受けたもののオレは今までに舟などこいだことが無かったので、最初はオールの使い方や力加減がわからずにボートを大きく揺らしたりしたが、色々と試しているうちに次第に慣れてきて揺らさずに漕げるようになった。
オレの漕ぐボートは、周りに浮かんでいる他の観光客のボートをたどたどしく避けつつ、湖の中の方まで進む。
「へえ……こういうボートに乗ったのって初めてだけど、岸から見る景色とはけっこう違うもんだね。なんか新鮮」
「面白いか?」
「うん。私遊覧船とか興味なかったんだけど、もし帰れたらどこかで乗ってみようかなあ」
「それは良い。なら、そのためにも地球に帰らないとな」
「地球か……私達、本当に帰れるのかな……」
「帰るために頑張るんだ」
そんな話をしながら、のんびりとボートに乗っていたオレとミズキ。
湖の中ほどにボートを停めて周囲の景色を眺めていたところで、ふとオレの目に留まったものがあった。
「ミズキ、湖の向こう側にも建物があるな。あれは昔のホテルか何かだろうか」
「建物?向こう側?」
ここからだとかなり遠目になるのだが、湖の広場を挟んで対岸の山の中に、小さな家のような建物がある。
山の木々は深いのだけれど、建物の前はちょっとした広場になっているようで、そこから湖畔に向かって階段が降りているので少々目立つ。
「対岸にそんなのなんて……ああ、あれじゃない?ナディヤさんから聞いたんだけどさ、湖の向こう側の山の中に、ここの主をお祀りしたお社があるんだって。んで主を怒らせちゃいけないから、向こう側の山は立ち入り禁止らしいよ」
「立ち入り禁止?人がいるぞ」
「は?人?」
遠いのではっきりとわかるわけではないが、山の中のお社の周りでは白い服を着た人がウロウロしているのが見える。
薄目になってお社を見ようとしていたミズキが、やがて諦めたように腰を下ろした。
「アンタよく見えるわね……まあ立ち入り禁止っていっても、建物があるなら管理とか修理とかはしなきゃいけないだろうから、その関係の人なんじゃない?お祭りの時なら、もしかしたらお祈りか何かするのかもしれないし」
「なるほど」
実際この遠くからでは、オレの目でも彼らが何をしているのかはわからない。
興味は無くもないが、まあ何か必要があってあの場所にいるのだろうと思うことにする。
そんなふうにして、オレとミズキと2人のんびりとアインクル湖の景色を楽しんでいるところに、突然岸辺や周囲のボートから大声が上がった。
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