6. 友達
よろしくお願いします。
見ると声のした方から、ミック達と同年代くらいの女の子が走って来ていた。
栗色の髪をお下げにしている、気の強そうな目の女の子だ。
「アンタ達どこに行ってたのよ!」
「ゲ、エルナ……」
女の子を見て、嫌そうな顔になるミック。
なるほど、彼女がさっきミックが言っていたエルナか。
駆け寄ってきた女の子は、ミックとマルクスに向けて声を上げる。
「アンタ達、お祭りの準備の手伝いもしないでどこ行ってたのよ!アンタ達のお母さんも心配してたわよ!」
「ゴ、ゴメン……」
「うるっせーなあ。俺はそんな祭りの手伝いなんかより、ずっと大事な話を兄ちゃんとしてんだから邪魔すんなよな」
「何が大事な話よ!どうせ……あっ」
すまなさそうに謝るマルクスに対して、ミックはふてくされた顔でそっぽを向く。
そんなミックをさらに叱りつけようとしたエルナは、すぐそばにいたオレとミズキを認めて気まずそうな表情になった。
「ご、ごめんなさい!私ったら……」
「フフッ、仲良いんだね。あなたは、エルナちゃんっていうの?私はミズキ、こいつはタマ。2人で旅してるんだ。よろしくね」
ミズキが自己紹介をすると、エルナは慌てて頭を下げる。
礼儀正しい子みたいだな。
「は、はい。私、エルナです!ごめんなさい、ミックとマルクスがご迷惑かけたみたいで……あの、大事な話って……?それに、その大トカゲの魔物……」
「ミックから、強くなりたいから弟子にしてくれって頼まれたんだ。いきなりだったし、そこのミズキが言った通りオレ達は旅をしているから、弟子にはできないって断っていたんだが」
その言葉を聞いて、再度目をつり上げるエルナ。
「何考えてんのよ!会ったばっかりの人にそんなこと言って!」
「うっせーな!エルナにはカンケーねーだろ!俺はこの兄ちゃんの強さに惚れたの!弟子にしてもらって俺も強くなって、そんでビッグな冒険者になってやるんだ!」
「オレは、冒険者じゃないんだが」
「へ?」
ぼそりと呟いたオレに、ミックが呆気にとられてこちらを見る。
「オレもミズキも冒険者じゃないし、これから冒険者になるつもりも無い。そんなお金を稼ぐ当てとかも無いし、ビッグな冒険者とかにはなれないと思うぞ」
「ウソだ!そんな強いのに冒険者じゃないなんて、ウソついて俺を騙そうとしてるんだ!」
「いや、本当だ」
「俺は騙されないからな!俺は絶対兄ちゃんの弟子になるんだ!」
なぜか涙目になってすがりついてくるミックに、またエルナの額に青筋が浮かぶ。
「ミック、いい加減にしなさいよ!タマさんも困ってるでしょうが!」
「そんなことないよな!兄ちゃん困ってなんかないよな!」
「正直、かなり困ってる」
「……」
オレの言葉に、言葉を失くしているミック。
「と……とにかく、ミックもマルクスも早く家に帰りなさいよね!お手伝いサボるとまた怒られるわよ!」
「チッ、わーったよ!いちいちうるせーんだよブス!」
「誰がブスですって!?」
気を取り直したエルナに叱られると、ミックもさすがにこれ以上は良くないと思ったのか「それじゃ兄ちゃんまた後でな!弟子のことよろしく頼むぜ!」を手を振りながら駆け去って行った。
後に残ったのは、エルナとマルクスの2人。
「本っ当にもう、ミックったら……」
「あ、あの……いきなり無理言って、すみませんでした」
「大丈夫だよ。フフッ、腕白なお友達だね」
頭を下げるエルナに、ミズキが笑顔を返す。
「本当にすみません。アイツ、チャランポランな奴で……あの、お2人は一緒に旅をしてるって……恋人同士なんですか?」
「違う違う!成り行きで一緒に旅してるだけで、アイツとはそんな……」
慌てるミズキに、エルナもマルクスも笑顔を見せてきた。
「そ、そんなことよりもさ。私達この村に着いたばっかりで、泊まるところ探してるんだ。どこか空いてそうな宿屋さん知らないかな?もうすぐお祭りがあるみたいだから、混んでそうではあるんだけど……」
慌てて話を逸らしたミズキに、顔を見合わせる2人。
「あ……それなら、このマルクスの家が宿屋なんです!マルクスのお父さんは料理が上手で、とっても美味しいんですよ」
何、料理が美味い!?
「すぐにそこに連れて……!むぐ」
「ごめんね〜、良かったら案内してくれないかな。2人泊まれると嬉しいんだけど」
「は、はい。こっちです!」
目の色を変えたオレを抑えつけ、引きつった笑顔で尋ねるミズキ。
そんなミズキに笑顔で答え、オレ達に先立って足速に歩き出すエルナとマルクスだった。
◇
「ミック!あんた今までどこ行ってたの!」
「なんだよ母ちゃん、どこに行ってようが俺の勝手だろ!そんなことよりさ、俺スゲー人見つけたんだよ!魔物を素手で倒しちまう、むちゃくちゃ強え人なんだぜ!俺その人の弟子になって、冒険者になるんだ!」
「冒険者って……何言ってるのあんたって子は!そんな危ないこと、させるわけないでしょう!」
「へーんだ!このミックって名前だって、俺は元々気に入らなかったんだ!こんな弱っちい名前なんてバカにされちまうじゃねーか!俺はこんなとこ出てデカくなって、村の連中なんて見返してやるもんね!」
「ミック!?待ちなさいミック!」
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