2. 行倒
よろしくお願いします。
「た、助けて……」
不意に道脇の草むらがガサガサと音を立てて揺れると、その中から女の人が1人よろめきながら歩き出してきて、そして道の真ん中でばったりと倒れた。
「ちょ、大丈夫ですか!?」
慌てて駆け寄るミズキ。
オレも駆け寄ろうとしたところで、脇の草むらが再び激しく揺れた。
「!!」
気配を感じて身構えた次の瞬間、草むらから飛び出してきたのは、身の丈が1mを超えるだろうかという大きなトカゲ。
胴体の長さは1mくらいだが、反面尻尾が数mはあろうかというほどに長い。
「ひっ!」
小さく響くミズキの悲鳴を背にオレはそのトカゲを捕まえると、首を掴んで骨をへし折った。
「うわぁ……」
後ろでミズキの、引きつった声がする。
オレは先日のアルジララクネ以来、ここに来るまでの道中で襲ってきた魔物や盗賊を倒したりしているが、彼女は未だに生き物を殺すことには抵抗感がある様子だ。
それが魔物や強盗などであっても、仕留めようとしたら彼女から制止がかかったことが何度かあった。
地球ではともかく、こういう世界ではそういう躊躇するというのはやはり危険なことでもあると思うので、彼女とは時間がある時をみて話をするようにしている。
トカゲの死骸をその場に放り捨てると、オレは引き気味の顔でこちらを見ているミズキに声をかけた。
「その女の人は、大丈夫か?」
「う、うん……気を失ってるだけみたい。でも、なんだか腕の感じが……もしかしたら、折れてるかも……」
「骨が折れているのか」
骨折なら治療しなければならないが、あいにくとオレは手当てのやり方などわからない。
「ミズキは、骨が折れた時はどうすれば良いかわかるのか?」
「いや、私もわかんない……何か木を当てて、包帯で巻くんだったかな……?」
「木はそこらにあるが、包帯は無いな」
考えてみればオレ達、そうした薬や救急用品みたいな物は持っていない。
この先ケガをすることもあるかもしれないのだから、そうした物も買っておいた方が良さそうだ。
ただ、それよりも今はこの女の人をどうするかだ。
おそらくはこの人、今倒したあの大きなトカゲに襲われて、それから逃げてここに来たんではないだろうか。
「どうしたものかな」
「えっと……この先の村まで後少しなんだよね?とにかくそこに連れて行こう。そうすれば、きっと誰か手当てしてくれると思うから……」
「わかった、オレがおぶる……っ!」
女の人を担ごうとしたところに気配!
身をひるがえしたオレは、森の中から飛んできた小さな礫を受け止める。
「え!?え!?何!?敵!?」
「いや……大丈夫だ。逃げて行ったみたいだ」
気配を探るも、礫を放った何者かは既に逃げ去った様子。
掴んだものを見てみると、そこらに落ちている石ころだった。
一体何だったのか。
まあ良いか。
今はこの女の人を、手当てが出来る所に連れて行くのが先決だ。
「……」
「タマ?どうしたの?」
女の人を担いだところで不意に動きを止めたオレを見て、ミズキが訝しげに尋ねてくる。
「いや……この大トカゲ、せっかく倒したのに捨てていくのももったいない気がして」
「何を言い出すかと思ったら……」
「ミズキ、このトカゲを村まで持って行って「嫌!」」
一言で切られた。
この間のアルジララクネみたいに、冒険者ギルドとかに持って行けば売れるかもしれないんだが。
「マジックバッグで運ぶのもダメか?」
「このトカゲ、カバンの口より大きいもの、入んないよ(それに私達の荷物とトカゲの死骸を一緒にとか、ちょっと……)」
「そうか、じゃあ……」
仕方がないので、オレは女の人を背負うと、手にはトカゲの長い尻尾を掴んで、そのまま引きずって行くことにした。
「よし、それじゃあ行こう。少し急ぐけど、ミズキは大丈夫か?」
「う、うん……アンタの方こそ、それで大丈夫なの……?」
「問題無い」
こうしてオレは呆れ顔のミズキに見られながら、女の人を背負い大トカゲをズリズリと引きずりながら街道を急ぐのだった。
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