1. 徒歩
よろしくお願いします。
バルツルグ王国ヒルデル市を出発して約2週間。
オレとミズキは、バルツルグ王国の東側にあるサースウェント街道という名前の道を、2人でてくてくと歩いていた。
ここまでの道中で集めた情報によれば、オレ達が今いる土地は『中央大陸』と呼ばれる1つの大陸であり、オレ達が召喚されたラネット神聖皇国はその大陸の最西部にある。
そのラネット神聖皇国から東に向かって、今いるバルツルグ王国、アンティル公国、ザオン王国、ドルフ王国、小国がいくつか集まった中央諸国連合、クロウ共和国といった国が続き、そしてそれらの国の南方に大きく、グランエクスト帝国という大きな国の領土が広がっているとのこと。
つまりそのグランエクスト帝国という国が、この地域一帯を南の海岸線に沿って支配しているということになる。
オレ達の旅の目的は魔王に会うこと。
魔王に会って、元の世界に帰る方法を見つけること。
魔王というのは、この中央大陸とはまた別の土地、南の海に浮かぶ、魔族が住むという暗黒大陸に住んでいるという。
ということは、魔王に会うためには海を渡ってその暗黒大陸に行かなければならない。
であれば、本来であればオレ達は南のグランエクスト帝国に向かわなければならないわけだが、現在オレ達はひたすら東に向かって進んでいる。
当然、南の方角に進みたいところではあるのだが、今いるバルツルグ王国と、この中央大陸南方に広がるグランエクスト帝国との間にはカーツ連峰という大きくて険しい山脈が、まるで北と南を隔てる万里の長城のようにそびえ立っている。
そしてその山脈を抜ける道というのが、どうやらバルツルグ王国には無いらしい。
南へ行くにはここからさらに東に進み、国2つ越えたドルフ王国という国まで行けば、山脈の間を抜けて南のグランエクスト帝国に続く街道が通っているとのこと。
そんなわけでオレとミズキは、現在2人で東へと向かう道を歩いている。
今はバルツルグ王国の王都ラキオスブルックを経由して、国の東側の国境を目指しているところだ。
先ほど寄った町から国境までは、街道を2日程だという。
本来ならば馬車に乗って行きたいところではあるのだけれど、あいにくと昨晩泊まったサイミスという町では、国境方面に向かう馬車は全部満席となってしまっていた。
空席を待つという手もあるにはあったのだけれど、運輸ギルドで聞いたところによれば国境まではそれほど険しい道というわけでもなく、さほどの距離というわけでもない。
街道の途中にはクックパという村があるので、夜はそこに泊まることができる、その村までも、普通に歩けば昼過ぎぐらいには着けるとのこと。
それであれば、身体を鍛えるためにもここらで少し歩いてみたいとミズキが言い出し、オレとしては拒否する理由も無かったので馬車には乗らず、2人で歩いてクックパ村まで行ってみることになった。
甘かった。
「普通に歩けば昼過ぎぐらいには着ける」というのは、普段から歩き慣れているこの世界の人達の基準。
それもオレ達に教えてくれた、荷運びを仕事にしている運輸ギルドの人にとっての「普通」だったのだ。
というわけで、交通が発達した地球の人間であり普段から長距離を歩き慣れてなどいるはずもないミズキが、サイミスの町を出発して間もなく息を切らし出す。
後ろから来る馬車に空席があれば乗せてもらおうとも思ったものの、こういう時に限って来る馬車は皆満席。
運動不足なんて言ったりしたら怒られる。
彼女に無理をさせるわけにもいかないので、休憩を取りつつゆっくり目に進んでそろそろ夕方、後少しでクックパ村に着くというところで、それは起こった。
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