12. 襲来
よろしくお願いします。
突然、昼過ぎのヒルデルの町中に、けたたましい音が鳴り響く。
乱打される鐘。
何が起きているのかはわからないが、おそらくは緊急事態。
遠くの方からは「警備隊と冒険者は西側防壁に集まれ!一般市民は家の中に入って外に出るな!」なんていう叫び声も聞こえてくる。
西の方から、何かが来るということか?
冒険者ギルドからは、敵襲があった場合は警備隊の言うことに従い町の守りに付くようにとの指示を受けているので、オレは聞こえた声のとおりに町の西側へ走り出した。
西門の前に着くと、そこは慌ただしく兵士達が走り回り、怒声が飛び交う大騒ぎとなっていた。
防壁の上からは、大勢の人の怒声や喚声が響いてくる。
門の脇にある、防壁の上に登る階段の前には兵士が立って「冒険者はここに集合しろ!」と声を上げている。
とりあえずはそちらの方に行ってみようとしたところで、後ろから何やら息切れの声がしているのに気がついた。
振り向くとそこには、膝に手を置いて荒い息を吐いているミズキの姿。
どうやらオレのことを追いかけて来たらしい。
「なんでここにいる?」
非常事態なのだから、避難すれば良かったものを。
「だ……だって、玉木、タマが……」
「宿の部屋に戻っていても良かったんだぞ。ここは多分危ない」
「……」
オレの言葉にミズキは何も言わず、ただ挑むような目つきでこちらを見つめている。
どうやら、帰るつもりはなさそうだ。
まあ良いか。
オレとミズキが防壁の傍の兵士に近寄って行くと、認めた兵士が声をかけてきた。
「冒険者か!?何級だ!?」
「オレ達は冒険者じゃない。ただ、冒険者ギルドのギルドマスターから要請を受けて、ここに来た。何が起こっている?」
「ギルマスの……よ、よくわからんが、とにかく今は戦力が必要だ。そこの階段から防壁の上に上がってくれ!」
「何が攻めてきている?」
「アルジララクネという魔物らしいんだが、今まで見たこともない奴だ。それが大群で、この町に押し寄せて来ている!」
「アルジララクネ……」
あの銀色クモサソリか。
1匹でも相当な強さだったあのモンスター。あれが大量にいるとなれば、確かにかなりの脅威になるだろう。
あれには、冒険者ギルドから調査隊が出ていたはずだが、彼らはどうなったのだろうか。
兵士に促されて防壁の上に登ると、その場も大騒ぎになっていた。
防壁の上には弓を構えた兵士達がずらりと並び、必死の形相で町の西に広がる森に向けて次々矢を撃っている。
中にはかざした手や杖の先から、火球や氷柱などを放っている人もいる。
あれが、攻撃魔法か?
ちゃんと見たのは初めてだな。
そして、正面に見えるあの森から敵が来ているのか。
矢を撃っている兵士の隙間から覗いてみると、数メートルある防壁の下には、数体のアルジララクネが防壁に取り付いてこちらへ登ってこようとしている。
兵士達は必死に応戦しているものの、見たところ矢は外殻に当たれば跳ね返るし、火球や氷柱も同じように弾かれている。
防壁に登ってきているやつを落とすのには成功しているので、それでなんとか押し返しているという状況だ。
しかし、防壁の下で聞いた話では大群が攻めて来ているとのことだったが……今防壁の下にいるのは10匹かそこらというところ。
「思ったよりも少ないな?」
「あれで全部じゃない!今来ているのは先遣だ!後方の森の中に、大量の群れがいる!」
「大量……!?一匹でもあんなに強かったのに……!」
愕然と声を漏らすミズキ。
確かに、今この場にいる戦力では、防壁を利用して10匹足らずのアルジララクネを足止めするのが精一杯。
それもこの様子では、その足止めもそう遠くないうちに押し切られそうだ。
この上さらに多数の群れに来られたら、防衛線が破られてしまうのは間違いない。
アルジララクネは、生物のメスに卵を産みつけて繁殖するという。
もしここが突破されたら、ヒルデルの町は奴らの繁殖場になってしまうんだろう。
そうなれば当然、ミズキの身も危ない。
彼女が危険にさらされるのは、断じて認められない。
ならば……!
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