9. 支払
よろしくお願いします。
『アルジララクネ』という名だったあのクモサソリ。
その脅威とは、生き物のメスに卵を産み付け繁殖をすることなのだという。
生態はハチなどに似ており、1匹の卵を産む女王がいて、その女王が産んだ兵隊が外で餌や繁殖用のメスを集めてくるという形。
過去に出現した記録によれば、襲撃された際に町の女達に卵が産み付けられ、その腹から大量に溢れ出したアルジララクネによって甚大な被害が出たのだそうだ。
あんな強力な魔物の卵を宿しているということであれば、当然放って置くわけにはいかない。
最悪、女の人を殺してでも魔物の誕生を防ぐという選択肢も出てくるかもしれない。
とはいえ人間であれば、魔物に襲われただけの罪の無い人、それも女の人を殺害というのは気が重いことだろう。
そうして手をこまねいているうちに、時間が経ってアルジララクネが生まれてしまった。
そうして暴れ出したアルジララクネによって大きな被害が出たというのが、ここのギルドに記録として残されていたという。
なるほどギルドマスターの言う通り、中々に厄介な生態をしているものだ。
思い返してみればオレが倒したアルジララクネ、オレにはほとんど目をくれずに執拗に馬車を追いかけようとしていた。
要するに、馬車に乗っているミズキを狙っていたということか。
もしもミズキにあれの卵が産み付けられでもしていたら、それこそ一大事。
倒せて本当に良かった。
話を聞き終えて、一息吐く。
自分があのクモサソリの卵を産み付けられるところだったと聞いて青ざめた顔をしているミズキと、それはそれとテーブルの器に盛られていたお茶菓子を空にしているオレに、ギルドマスターは言葉を続けてきた。
「何分出現例が少ないので査定も少々困ったのだけれど、希少な魔物で今後の研究に役立つこと、非常に強力な魔物で魔石も大きく高質な物が取れたこと、あの非常に強固な外殻が素材として有用と判断したことから、あなたには素材の売却金額ということで、大金貨5枚を支払うことで決定したわ。それで良いかしら?」
「大金貨5枚……」
「は、はい!それでお願いします!」
大金貨5枚は、大金だな。
オレが金額の多さに実感がわかずぼんやりしていると、隣に座っていたミズキが代わりに返事をしてくれた。
ミズキの返事にギルドマスターは頷くと、受付がテーブルの上に金貨5枚と2枚の紙を出してきた。
この紙は、支払い額が高額になったということで書くことになる、受け取りの書類らしい。
ギルドマスターに示されて、ミズキがたどたどしい手つきで書類に名前を記入する。
記入の終わった書類を確認すると、受付がテーブルの上に、トレーに乗せられた硬貨5枚を出してきた。
これが大金貨か、初めて見たな。
とはいえ。
「あの、この大金貨のままでは使い難いので、銀貨と銅貨にしてもらうことは出来ますか?」
ミズキが尋ねるとそれは了承され、大金貨5枚の内1枚を、金貨と銀貨と銅貨に両替してもらうことに決まった。
そしてオレ達は、崩してもらった硬貨を受け取ったところで思わぬ問題に気がついた。
かさ張る。
今オレ達の手元にあるお金は、今回もらった分と元々持っていた分と合わせて硬貨が40枚以上。
オレ達が地球から持って来た財布には当然入らないし、一応この世界での財布代わりとして小さな布袋を持ってはいるものの、それにも入り切らない量になってしまった。
どうしたものか。
オレとミズキが袋と硬貨を前に困っていると、前に座っているギルドマスターと受付から助けが出た。
「持ち切れないならギルドに預けるか、マジックバッグを買うという手があるわよ。ギルドに預けるなら、冒険者登録をしてもらう必要があるのだけど」
ほう。この冒険者ギルドでは、銀行のようなこともやっているのか。
しかしオレ達はこの町に留まるつもりはないし、冒険者になるつもりもないからな。
「お金を預けるのは止めておく。そのマジックバッグ?というのがあれば、荷物をたくさん持ち運べるのか?」
「ええ、ただし魔導具だから値は張るわよ?1番等級の低いものでも大金貨1枚するわ。まあそれでも、20〜30kgくらいの物は入ったはずだけど」
魔導具というのは魔物素材などの特別な材料を使い、錬金術によって造られた道具で、様々不思議な効果を持っているのだそうだ。
「ぜひほしい。どこで買える?」
「なんなら、今から人をやって取り寄せてあげるわよ?等級は、1番下のもので良いのかしら?」
「それでかまわない。どうもありがとう」
ギルドマスターはオレが差し出した大金貨1枚を受け取り、隣の受付に渡すと受付は急ぎ足で部屋を出て行った。
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