8. 一級
よろしくお願いします。
本話から、主人公とヒロインの呼び名が変わります。
ヒルデル市の宿に泊まったオレ達は、冒険者ギルドの受付に言われた通りに3日後、再びギルドを訪れた。
先日の冒険者ギルドでの騒動で、どういうわけかオレの呼び名が『タマ』に決まってしまったみたいなので、この3日間オレと水城と2人で話し合った結果、今後オレは『タマ』で、彼女は『ミズキ』と名乗ることに決まった。
このまま『玉木達也』や『水城いづみ』と名乗っていると、ラネット神聖皇国からの追っ手が来た際に見つかってしまうかもしれないので、偽名みたいなものを名乗るというのはアリなのかもしれない。
彼女の方は『水城』の読み替えであり、そのまんまと思われるかもしれないが、本人が希望しているのだからそれで良いのだろう。
ギルドに入ると、正面のカウンターに座っていた先日の受付の女の人がハッとした顔で立ち上がり、慌てたように奥へと走って行く。
何があったのかわからないので、他の受付にお金を受け取りに来た旨を伝えるも、この場で少し待つようにと言われてしまった。
言われたとおりに待っていると、少ししてさっきの受付と、もう1人中年の女の人が奥から出て来て、オレ達を認めて小さく頷いた。
「お待たせしたわね。私はこの冒険者ギルドヒルデル支部のギルドマスターのロレインよ。あなたがタマで、そちらの彼女がミズキ、だったわね」
ほう、ギルドマスター。ということは……
「ギルドマスターということは、このギルドの中で一番偉い?」
「ええ、まあそうなるわね」
「なんでそんな偉い人がここに?」
「あなたが討伐したという、あの魔物について話があるの。一緒に来てもらえるかしら?」
オレの質問にそう答えると、ギルドマスターは奥に続く廊下を示して、横にいた受付を伴いさっさと歩き出してしまった。
なんでわざわざ付いていかなきゃならないのかという気もしたが、今日このギルドに来た目的である、あの銀色クモサソリの素材のお金をまだもらっていないので、ここは行くしかない。
ギルドマスターと受付の後を追って廊下を進んで行くと、オレ達は大きなテーブルにたくさんのイスが並べられた、会議室のような部屋に通された。
ミズキと2人、示されたイスに座ると、テーブルを挟んで反対側のイスにギルドマスターと受付が腰かける。
持って来た書類をテーブルに広げると、ギルドマスターは顔を上げて口を開いた。
「まずは先日、この町の近くに出現した魔物の討伐について警備隊から報告を受けました。討伐ご苦労さまでした」
「どうも。そこの女の人には、あのクモサソリの素材を買い取ってほしいと頼んでいたんだが、それはどうなっただろうか?」
「……クモサソリ?」
「なんか似てるからそう呼んでる」
「……そう。あの魔物、名前はアルジララクネというらしいわ。ここ100年程出現例が無くて、私も見たのは初めてだったんだけど、このギルドにある昔の文献を調べて記録が見つかったの」
なるほど、つまりはレアな魔物だったと。
頷くオレとミズキに、ギルドマスターは魔物の概要を告げる。
「ランクは1級。出現すれば、都市が壊滅するとされている魔物よ」
聞けば、魔物にもランクというものが設定されているらしい。
ランクはその魔物の危険度に基づいて設定されており、特級から7級まである。
大きいところの基準としては、特級で国が壊滅、1級で都市が壊滅、2級で町が壊滅、3級で村が壊滅、という目安になるのだそうだ。
1級ということは、つまりはあの魔物、侵入されていたらこの町が壊滅していたかもしれなかったということか。
「倒せて良かった」
「ええ、まったくね。それからあのアルジララクネなのだけれど、他にも恐るべき生態が解ったの」
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