7. 買取
よろしくお願いします。
「おい」
「はい!?」
クモサソリの死骸を見て固まっている受付にオレが声をかけると、彼女は弾かれたようにこちらを向いた。
「オレは冒険者登録はしていないが、買い取りはしてくれるんだろう?」
「は、はい!少々お待ちください!」
我に返って、ギルドの中に駆け込んで行く受付。
彼女の後について行くと、ちょうど奥のカウンターの上に書類が広げられるところだった。
カウンターの前に行くと、受付はうろたえたような上目遣いでオレを見てくる。
「そ……それじゃあこれから、魔物素材持ち込みの買い取り手続きをします。あの……本当にあなたが、あの魔物を?」
「ああ、オレが倒した。さっきも言われたが、警備隊に確認してもらってかまわない」
「は……はい、承知いたしました。ええと、買い取りということなんですが、素材は全て買い取りということでよろしいですか?素材で装備品を作られたりとかは……」
「いや、全部買い取りで頼む」
今のところ特に、武器やら鎧やらがほしいわけではない。
それとも何か作ってもらうかと水城を見たが、彼女は首を横に振る。
「解体の方もギルドで承っておりますが、ご依頼されますか?あの大きさであれば、査定総額の2割を手数料としていただくことになっているんですが」
「それでかまわない。買い取り金額はいくらぐらいになるだろうか?」
「初めて見る魔物ですので……金額などについては、今は何とも。そうですね……3日間程お待ちいただけますか?」
「わかった。その時には、あの魔物のことについても教えてもらえるとありがたい」
「かしこまりました。こちらが買い取りの書類になりますので、サインをお願いします」
カウンターの上に出された紙をのぞき込む。
相変わらず何が書いてあるのかわからない……が、先日泊まった宿の主人を質問責めにして、これだけは覚えられたものがある。それは……
「ええと、これは……タマ……さん、ですか?」
なんとかして自分の名前を書いてはみたものの、どうやら読めたものではなかったらしい。
そしてオレの後ろでは「ブフォッ」と何やら吹き出す声がする。
「くっふふ……そうタマ!こいつタマ!」
見るとそこには、口元を押さえて笑っている水城。
なんだかよくわからないが、それで嬉しそうならまあ良いか。
「ああ、タマだ」
返事に頷いて手元の書類に何やら書き込む受付だったが、ふとその顔が上がってオレを見る。
「はい、タマさんですね。変わったお名前ですね……あの、ところで……表の魔物は……本当に、あなたが討伐されたんですか?」
「ああ、オレが倒した」
「1人で?」
「他の人の力は借りなかったな」
「そ、そうですか……お強いんですね……」
「自分で強いと思ったことはない」
なにせ1度負けて死んでいるわけだし。
受付はオレを上目遣いで見つめると、ためらいがちに声をかけてくる。
「あの……それだけの実力をお持ちなら、冒険者としても素晴らしい活躍が出来ると思います。もしよろしければ、ここで登録などを……」
「いや、止めとく。それじゃあ3日後だな。また来るからよろしく頼む」
オレはそう言い置いて、呆気にとられた受付を背に水城と冒険者ギルドを後にした。
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