3. 容疑
よろしくお願いします。
倒した……
ほうっと大きく息を吐く。
息を吹き返すかもしれないので一応クモサソリの死骸に注意を払っていると、町の方から兵士が数人駆け寄ってきた。
兵士達は数人が魔物の死骸へと走って行き、1人がオレの前に立った。
「魔物を討伐してくれたこと、町を代表して感謝する。お前は冒険者か?少し話を聞きたいので、一緒に来てもらいたい」
「オレは冒険者じゃない。さっき門の方に行った馬車に連れが乗っているんだが、町には入れてもらえるのか?」
「あの馬車か……そのことで、少し話を聞かせてもらわなければならん。ついてきてもらおう」
「あのモンスターの死骸はどうなる?そちらで処分してくれるのか?」
「死骸は……話を聞いた上で、問題が無ければ討伐したお前に引き渡すことになるが。冒険者ギルドに持って行って売るんじゃないのか?」
「売る?じゃああれを冒険者ギルドに持って行けば、買い取ってくれる?」
「知らんのか?買い取ると言っても、解体して使える素材になるところがあればだが。まあ、あれだけ頑丈な外殻をしていたんだから何かしら利用は出来るだろうし、魔石だって相当なもんだろう。売れないということはないと思うがな」
魔石というのは、魔物が身体の中に持っている宝石のような石らしい。
その魔物が強いほど、魔石も大きく、美しくなるのだそう。
魔力の結晶体なので使い途も多く、素材が役に立たない魔物でも基本これだけは買い取りの対象になるとのこと。
「そうかそうか。それじゃあ後で冒険者ギルドに行ってみよう」
「それが良い……と言いたいところだが、残念ながらお前とあの馬車の連中には犯罪の容疑がかかっている。話を聞かねばならんので、大人しくしてもらうぞ」
「犯罪容疑!?」
突然の容疑者扱いに呆気に取られつつ、オレは兵士の後について歩き出すのだった。
魔物を町や村に連れて行くという行為は、故意過失関係無しに重罪なのだという。
まあ、魔物が町に現れれば当然被害は出るのだろうから、理屈としては理解出来る。
兵士に話を聞くと、どうやらその容疑がオレを含む、あの乗って来た馬車の馭者と乗客にかけられているらしい。
確かに馬車が逃げるように森から飛び出して来て、その後を追うようにしてあのクモサソリが現れたとなれば、疑われるのも無理はないのかもしれない。
そんなわけで、オレと水城と馬車の馭者は城門脇の兵士の詰所に連行されて、そこで取り調べを受けることとなった。
とはいえ、特に犯人扱いをされたわけではない。
確かに、あのクモサソリが馬車を追って町に近づいたのは事実。
しかしそれも、町に侵入される前にオレの手によって倒されているため市街地や住民などに被害は無い。
しかも城門の門前広場で戦ったことにより、オレがクモサソリが町に向かうのを阻止しようとしている姿を、町の守りの兵士達がしっかりと目撃していた。
なので町の守りの兵士達(『警備隊』というらしい。聞いた話からしておそらくは警察のようなものなのだろう)の中では「ヒルデルの町の近くで魔物に遭遇し、戦いの中でたまたま移動してきただけ」というストーリーが出来ていたようで、取り調べもその筋書きに沿った形でのものだった。
一方で問題とされたのが、馬車がクモサソリと遭遇する直前に出くわした、4人の冒険者風の男達の方。
森の中から、まるで何かから逃げるように街道に転がり出てきて、彼らが逃げ去った後にそれを追うようにしてあのクモサソリが現れた。
これは、彼らがあのクモサソリから逃げていて、その最中通りがかったオレ達の馬車をクモサソリに襲わせて、その隙に自分達は逃げようとした、という状況が推察出来る。
これを「なすり付け」というらしい。
当然、褒められたことでは決してないし、発覚すれば罪に問われることにもなるという。
実際、オレ達の馬車が来る直前にそんな男の冒険者の4人組がひどく慌てて城門を通って行ったということがあったらしく、馬車の馭者の証言を受けて警備隊からは一応の捜査が行われることになるのだそう。
相手が冒険者なら、ギルドに確認すれば発見はさほど難しくはないだろうという、衛兵の口ぶりではあった。
兵士からは馭者の証言に間違い無いかと尋ねられ、オレが馬車の窓から見た状況と差異は無かったので間違い無いと答えておいた。
とりあえず城門を守っていた兵士達の証言もあり、この町に魔物を誘導したことにはならないと認められたため、2時間ほどの聴取の後にオレと水城を含む馬車の乗客については釈放となった。
あのクモサソリについては倒したオレの物ということにはなるのだが、何分警備隊としても初めて見た魔物になるため、一応ここで検分をしてから、すぐに冒険者ギルドに届けてくれるとのことである。
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