2. 足留
よろしくお願いします。
「!!」
馬車を先に狙うか!
殺しやすい獲物を優先して仕留めて、餌を確保でもするつもりなのか。
急いで銀色クモサソリを追いかけるが、2本足のオレよりも8本脚の向こうの方が走るスピードは速く、このままでは引き離されてしまう。
それならばとオレは、遠ざかる銀色クモサソリに向けて紫雷撃を放った。
オレの身体の中にあるエネルギーを額に集中、集まったところで、目から放つ感覚だ。
紫雷撃はクモサソリの背に命中、爆炎の中から吹き飛んだクモサソリが、街道の地面に激突する。
これで倒せたかと思いきや、クモサソリは若干煤けた身体を震わせて立ち上がった。
ダメか!見た目通りに頑丈だ!
クモサソリはふらつきながら、それでもなお馬車を追おうとしている。
オレはそんなクモサソリに突進し、その顔面に張り手を叩き込んだ。
鉄か何かでも殴ったかのような感触。
それでも、殴り飛ばされてクモサソリが怯んだところで、オレはその巨大な尻尾を引っ掴み、勢いをつけて大きく振り回す。
振り回されたクモサソリの身体が、道の脇にある木に次々ぶつかりなぎ倒す。
勢いのままぶん投げると、街道の先へ吹っ飛んだクモサソリが道脇にあった茂みに転がり込んだ。
やったか?と一瞬思ったが、紫雷撃を耐えるようなやつがこの程度で死ぬわけもなし。
慎重に、様子をうかがいつつ近づいて行くと、中から茂みを突き破って針の付いた尻尾が飛び出してきた。
顔面を貫かれそうになるのを、間一髪かわす。
オレがよろめいた隙に、茂みから飛び出したクモサソリが、馬車の逃げた方へ街道を走り出す。
奴め、性懲りもなく!
クモサソリの後を追いかけて行くと、不意に森が開けて、ちょっとした広場のような場所に出た。
見ると前方にはこれまで立ち寄った町で見てきたような城壁があり、道の続いた先にある城門でオレが先程まで乗っていた馬車が何やら兵士と揉めている。
町に着いたか。
だがこれで助かったわけではない。
広場を駆け抜けて城門に向かい疾走するクモサソリ。
奴は確実に馬車を、そして城門の付近にいる人達を狙っている。
あれを、町に行かせるわけにはいかん!
突如森から現れて、町に向かい突進してくる巨大なモンスターの姿に、城門からは悲鳴と怒声が上がっている。
オレは走るクモサソリの背中に、再度紫雷撃を放った。
紫光線は使えない。
あれは発射までに溜めがいるし、威力が大きいので目の前の町を巻き込んでしまうかもしれない。
爆発に飲み込まれてクモサソリが地面に転がる。
その隙を狙い、オレはクモサソリに駆け寄るとその脚を掴んで思い切り森の方へとぶん投げた。
地面に転がるもすぐさま立ち上がるクモサソリに、オレが町との間に立ちふさがるようにして向かい合う。
俊敏に態勢を直し、行く手の邪魔をするオレをにらみつけるクモサソリ。
次の瞬間クモサソリは、口から何か青い針のようなものを大量に吐いてきた。
対応が遅れ、避けることの出来なかったオレの身体に針が無数に突き刺さる。
全身に一瞬走る激痛と痺れ。
身体に何かが刺さったというより、電気か何かが流れたような感覚。
しかしその痛みもすぐに薄れ、見るとオレに刺さった針も、身体に吸い込まれるようにして消えていく。
そして身体の中には、何かがみなぎるような感覚。
これは……本物の針ではなくて、魔法?
ビームか何かのようなものなのか?
ビームのようなエネルギー攻撃であれば、以前の怪獣の身体の時は吸収出来たが、今の人間の身体でも出来るのか。
先程、馬車の馭者台にいた護衛を倒したのもこの攻撃かもしれない。
これまでの戦いでさすがに脅威と見られたか、オレに対して前脚と尻尾を振りかざして攻撃の態勢を取るクモサソリ。
初めて放ってきたクモサソリのガラスをかきむしるような威嚇音と、オレの甲高い咆哮が、お互いの中央で衝突する。
双方相手に向かって走り出したのは同時。
オレの両腕とクモサソリの前足2本で、がっぷり4つに組み合ったのは一瞬。
大針の付いた尻尾が飛んでくる前に振りほどいて一旦飛び退くと、オレは再び突進。
一瞬間が開いたところでクモサソリが至近距離から先程の青い電気針を吐いてくるが、オレには通用しない。
そのままクモサソリの爪とオレの張り手との乱打戦が始まった。
オレはクモサソリの前脚から伸びる爪をかわし、払い除けながら相手の顔面を何度もはたきつける。
クモサソリの殻はやはり頑丈で見た目外傷は与えられてはいないが、それでも衝撃は中に通っているようで、張り手を打ち込んだ際によろめくことがある。
とはいえ、クモサソリには必殺の大針の付いた尻尾があるため、こちらとしては一切気が抜けない。
敵のサソリのような姿からして、尻尾の大針はおそらく毒付き。
さすがのオレも、毒を食らって無事でいられる自信は無い。
ならば!
尻尾の刺突を繰り出してくるクモサソリ。
チャンスをうかがっていたオレは、刺突をかわすと同時にその尻尾を掴んで脇に抱え込む。
相手に次の行動を起こす隙を与えず、思い切り尻尾を振り上げてクモサソリの身体を何度も地面に叩きつけた。
クモサソリがダメージを受けて、少しもがく力が弱まったところで、オレは渾身の力を腕に込める。
「!!!!!!!!!!」
咆哮一閃。
オレはありったけの力で、クモサソリの尻尾の先端を関節からねじり切った。
絶叫を上げて、尻尾から体液を撒き散らしながらクモサソリがのたうち回る。
やがて気を取り直したか、起き上がり怒りにまかせて飛びかかってきた……ところで、待ちかまえていたオレが紫雷撃を放つ。
直撃を受け、爆炎の中から吹っ飛ぶクモサソリ。
地面に激突し、ダメージで動けずにいるところにオレは歩み寄り、持っていた尻尾の大針を、オレに気づいて見上げるクモサソリの目に突き立てた。
深々と左目を貫かれたクモサソリは、少しの間痙攣していたものの、やがてその身体からガクンと力が抜け、地面に崩れ落ちてそのまま動かなくなった。
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怪獣なら、一度はやりたいゴジラプレス。




