11. 銅貨
よろしくお願いします。
初めて入ったこの世界の町は、いわゆるファンタジー風。
言い換えれば昔の西洋といった感じの街並みだった。
建物の多くは四角く加工された石で作られていたが、反対に木で出来た建物も少なくない。
そしてその建物の多くが白色に塗られていたのが印象的だ。
大通りにはたくさんの人や馬車、それから見たこともない生き物が引いた車などが道を歩いている。
さすがに道は舗装道路などではないが、石畳が敷かれていて清潔な感じだ。
町中はたくさんの人々が行き交っており、通りに面した店舗には様々な食べ物や品物が並んで目を引く。
呼び込みの声などは上がっておらず、通りを歩く人達の話し声などもあまり聞こえてこない。
良く言えば町全体が静かで落ち着いた雰囲気、言い換えればどこか陰気で潔癖そうな感じも受ける。
たた先程王や王女が言っていたような、戦時中という感じではあんまりないな。
早速オレは近くにあった食べ物を売る店の1つに近寄って、その店先で焼いて売られている物をのぞき込む。
腹が空いているところに先程から良い匂いをさせているのだから、これはもう我慢など出来ようはずもない。
売られているのは串に刺されて焼かれている何かの肉。
どう見たって美味そうだ。
つばを飲んで見ていると、肉を焼いていた体格の良い男性店員が声をかけてきた。
「いらっしゃい。モールアンボアの串焼きだ。食っていくかい?」
「10本ほしい。いくらになる?」
「10本?こりゃまた剛毅だな。10本なら銅貨5枚だ。すぐ焼くからちょっと待ってな」
「銅貨っていうのは……これで合ってるか?」
「おいおい、そりゃあ大銅貨だ。兄ちゃん金を知らねえのかよ?」
袋の中から銅っぽい四角の硬貨を出してみせると、店主が目を丸くする。
なのでオレは道すがら考えていた言い訳を言ってみた。
「田舎から出て来たばかりなんだ。向こうじゃ物と物の交換で足りたから、お金はほとんど使ったことがなかった。まだ慣れていないんだ」
先ほど門を通った際に、水城が言ったことを参考に考えたものだ。
「ほお、そういうもんかね」
店員は、不思議そうな目でオレを見る。
ただ優しそうな人ではあったので、せっかくだからと串焼きのもう10本追加を対価に、この世界のお金について根掘り葉掘り教えてもらった。
この世界のお金は、大きく分けて6種類。
下から、銅貨・大銅貨・銀貨・金貨・大金貨・白金貨、となり、それぞれ10枚ごとに価値の高い硬貨へ上がっていく。
町中で流通しているのは、大体銅貨から銀貨あたりまで。
金貨は高い買い物をする際など、大金貨以上は、お金持ちや商人あたりが大きな取り引きをしたりする際に使われるものなのだそうだ。
お金についても解ったところで、焼き上がった串焼きを店員から受け取って片っ端から平らげる。
味付けはタレではなく、焼き上がりに粉状のスパイスを振りかけたものだった。
ちょっと漢方薬のような風味もするが、とても美味い。
水城にも半分渡そうとしたが彼女は1本しか受け取らず、後はオレが残りを食べるのを胸焼けしそうな顔で眺めていた。
腹に食べ物が入って人心地ついたところで、食べ終わった串を店員に返すと、オレと水城は門番の兵士に教えてもらった馬の店へ向かう。
多少迷ったものの店に着いたオレは、連れていた馬を店員に見せて、いくらでも良いから買い取ってほしいことを伝えた。
馬具類は全部取り外してあるとはいえ、騎士が乗っていただけあってかなり良い馬だったらしく、二束三文でもかまわないというオレに驚いた顔をしていた店員。
結果、即金で支払える額はこれくらいということで、4頭で大金貨1枚、要は金貨10枚で買い取ってもらえることになった。
この世界での馬の値段の相場などオレにはわからないので金額に異存は無いが、大金貨では価値が高すぎて使いにくいと思うので、金貨9枚銀貨10枚で受け取る。
あまり見かけないという金貨だったが、早速お目にかかることが出来た。
ついでなので、部下に馬を裏手に連れて行く指示をしていた店員に尋ねてみる。
「すまないが教えてほしい。なるべく大きな町でここから一番近い所といったらどこになる?」
「大きな町でここから近い所?それじゃあマーリアスっすかねえ。このイアス程じゃねえけど、まあけっこう賑わってる町ですよ」
「どうやったら行ける?」
「どうやったらって……運輸ギルドから乗合馬車が出てますよ。今すぐに出りゃあ……まあ、夕方くらいには着くんじゃないですかねえ?」
「わかった。その運輸ぎるど?の場所は?」
「この店を出たら右に進んで……」
オレ達は店員から色々と聞き出すと、お礼を言って店を出た。
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