#1 すべてはここから…
「終わったあああぁぁ~~!」
エンドロールの勇ましい音楽とこれまでの回想の画面から目を離し、カーテンを開ける。
シャーーッ!
あたりにまばゆい光が降り注ぐ。
同時に画面は明るくなり、THE END の文字が刻まれる。
わたしは橙谷 玲沙。
16歳、ニートだ。
なぜニートかって?それは…。
さかのぼること2年前。
「このクラスにいじめがあるって?先生知ってるぞ?」
先生は勘がよく、私がいじめられていたことをいち早く感知してくれていた。
でも、
『このクラスにいじめなんてありませーんw』
クラスのほぼ全員の子がこう反発してしまったのだ。
男子に反発するとろくなことにならない。そう知っている女子たちも賛同してしまった。
家でも、
「冷蔵庫のカレー 温めて食べて 母」
「今日 帰り遅い 何か買って食べて 母」
という書置きばかり。しまいには。
「お母さん、お父さんと海外で働くことになったの。安心して。仕送りは毎月するわよ。」
と、毎月の仕送り50万が口座に入るだけの関係になってしまった。
そんな感じで今はゲームに浸りきり。
いつの間にかエンドロールが終わり、画面は暗転し、音も消える。静寂が部屋を包み込む。
「また一個終わっちゃった…」
玲沙はぼんやりとモニターを見つめる。何かを成し遂げた達成感と共に、次の瞬間には再び現実に戻される。この虚無感を埋めるために、彼女はいつも次のゲームを求めていた。
「うーん、次は何にしようかな…」
玲沙はゲームライブラリのアイコンにカーソルを合わせる。数多くのゲームタイトルが画面に並ぶ。アクション、RPG、シミュレーション…選択肢は豊富だ。
「もう少し心に響くストーリーが欲しいかな…それとも、気分転換に軽いパズルゲームでも?」
ゲームを選ぶ時間が、玲沙にとっては唯一、自分の心の声に耳を傾ける瞬間だ。
彼女は、次の選択肢を一つずつ眺めながら、これから始める物語に思いを馳せる。どの世界に飛び込もうか、どんな冒険が待っているのか。それは、現実とは違うもう一つの生き方だった。
でも。
「あーあ。もうほとんど遊びつくしちゃった。」
玲沙は椅子から立ち上がり、部屋の窓に目を向ける。外の世界は彼女にとってあまり関心がない場所だったが、今はある場所が頭に浮かんでいた。行きつけのゲームショップ。新しい冒険を見つけるために、彼女がしばしば足を運ぶ場所だ。
「次のゲームでも探しに行くか…」
玲沙はフード付きのジャケットを手に取り、肩に羽織る。外に出ると、少しだけ冷たい風が頬に当たった。彼女は足早にショップへと向かった。