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22.(僕)
22(僕)
彼女は死んだ。鈴蘭を食べて。
彼女は僕の友人の恋人で、
僕の友人は彼女を愛していた。
彼女には家族がいた。
母と、姉と、弟。
母は姉妹を比較し続け
姉は彼女を憎み続け
弟は彼女を慕い続けた。
彼女には幼馴染もいた。
彼女の幼馴染は、彼女に「褒められる」を取られ続けた。
彼女の家の隣には老人が住んでいた。
老人は彼女の本質を見抜いていた。
彼女には父がいたが、幼い頃に出て行った。
父は彼女に鈴蘭は毒だと教えていた。
彼女は怖がりだった。
だから彼女は鈴蘭を食べた。
彼女のことを小説にしようと思っていたが
友人を崩し、落とし、泣かせてしまった。
さすがに僕も鬼ではないので、
小説はやめることにした。
僕の友人に、取材させてもらった方々に
再び幸せが訪れることを祈る。
終
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
鈴蘭は食べないで下さい。
誰かの死を取材しないで下さい。
お読みいただいた皆様に幸せが訪れることを祈ります。