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第四話 突然の賊

 日が沈むと(それがし)は僧侶に()いてもらった布団で眠りに就こうとしていた。


 また、義平(よしひら)は小部屋の隅の方で寝ており、某が懸賞金目当てで寝首を()いてくることを想定し、僧侶に借りた粗雑な刀を(そば)に置いていた。


 人をなんだと思っているのだろうか。


 少しばかり(よこしま)な考えをしただけである。


 そう考えているうちに某の意識は落ちていった。


――数刻経った頃。


「お、起きてください‼ 大変です‼」


 目を覚まして声がする方を見ると最初に出会った黒衣の僧侶が喋っていた。


 とりあえず眠いのでもう一回寝よう。


 それから小半刻(こはんとき)(一五分)もしないうちに。


「おい、十郎(じゅろう)とやら! 目を覚まさぬか!」


「なんですか義平公(よしひらこう)………なにぃ⁉」


 小部屋には某と義平しかいなかったはず。


 だが周囲には頭や腹部から赤い液体を滴らせてる僧侶が数人いた。


「義平公! なんで命の恩人を傷つけているのだ⁉」


「我ではない阿呆(あほう)か!」


 義平に食ってかかると一瞬されてしまった。


「では誰が、まさか平家(へいけ)の者が⁉」


「仮に平家が寺社(じしゃ)を襲撃すれば全国の信徒達が武家に反旗を翻し混乱を生むのであろう。おそらく賊かと」


 その言葉に某は口をへの字にして(いぶ)かしむ。確かに賊は脅威ではあるが寺社を狙って利得が有るのだろうか?


 くわえて七四三年に墾田永年(こんでんえいねん)私財法(しざいほう)が施行されて私有地の保有が認められたことで寺社には武装した僧侶――僧兵(そうへい)が現れた。僧兵は私有地の土地争いには欠かせない存在となったのだ。(ゆえ)に僧兵と一戦構える魂胆が分からない。


 …………利得………この石山寺には何がある?


「あっ! まさか賊が来たのは⁉」


 目の前の相手を見ていう。


 某の発言に義平はハッとした顔をする。


「もしや我がいることがバレたのか! こうしちゃおれん!」


 義平は側に置いていた刀を手に取る。


 きっと賊は義平を狙ってきたに違いない。彼には多額の懸賞金が懸けられているのだから。


「ど、どこへ行くのですか!」


「決まっておろう! 我のせいで起きた事だ。この手で片付けるまでよ!」


 小部屋を取り出す義平。


 まっ、某は隙をみて脱出でもするとしようか。


「戦ってくれるのですね! これをどうぞ!」


 某も部屋から出て行こうとすると黒衣の僧侶に話しかけられて鞘に収まった刀を渡された。


「えっ⁉ いや、か、刀は受け取れないけど…」


 しどろもどろに答えてしまう。


「こ、この刀では不満と⁉ これでも一応、私の祖父の代から伝わる秘蔵の刀です。この石山寺を守ってくれるなら差し上げます」


「えぇ、ちょ、ちょっと!」


 胸に刀を押し付けられたので思わず両の手で受け取ってしまった。


 これはまずい、こんな形で重代(じゅうだい)(先祖代々から伝わっている)の刀を貰うとは。


 本来なら平安京の市場で売っぱらってしばらく遊んで暮らしていたいのだが。


 いきなり逃亡するのは申し訳ないので少しだけ、本当に少しだけ戦いの場に出向いて様子を見ようかな。


「わ、分かった! 某が見せてやろう! 国士無双(こくしむそう)というものを!」


「「「おお~‼」」」


 某の強がりに部屋にいる僧侶達を感嘆する。


 さてはて、どうなることやら。

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