木の上の子熊
久しぶりに帰省した故郷で、のんびりと散歩を楽しんでいると遠くの木の上に小さな子熊がひょっこりと姿を見せた。
「あんな高いところまで登って、一人で降りられなくなったらどうするんだろうな? というか、親が周りにいたりしないだろうな」
子熊の周りには親がいるから気を付けなくてはいけない、テレビや本で得た知識だが、周りを見ても他に熊らしい影は見えなかった。
「そう言えば、小さい頃に婆ちゃんから何か言われたような気がするけど、なんだったかな……ああ、そうだ。木の上に子熊がいたら、直ぐに逃げないといけないって言われたんだっけ」
子熊の居る木から距離も離れているし、周りに親熊がいる様子もない。多分、子供の熊の周りには親熊がいるから直ぐにその場を離れるようにって言われたんだろう。でも、子熊の見せる仕草が可愛いらしくて都会暮らしで荒んだ心が癒されるのでついつい眺めてしまっていた。
「ん? 今、目があったような……ひっ!?」
木の上でもちゃもちゃと可愛らしい仕草をしていた子熊と目が合った、そう思った瞬間、子熊の身体がどぅるんっ!と一直線にこちらへ向かい伸びて来て、耳より大きく引き裂けた口で噛み付いてきた。
「うっ、うわぁぁぁぁぁっ!?」
子熊、いや化け物の口内に頭から飲み込まれ、視界と意識が真っ暗に染まった瞬間、婆ちゃんが言っていた言葉をはっきりと思い出した。
『木の上に子熊を見つけたら、直ぐに逃げないといけないよ? それは子熊に見えて子熊じゃない。
子熊の姿に化けたコグ魔っていう化け物だからね』
私が実際に夢で見た内容をアレンジしたお話です。
可愛い子熊がにょきにょきと身体を伸ばしてきたのはなかなかのホラーでした。




