言い終わらないうちの勝利
「し、師匠……!」
室内には信じられない光景が広がっていた。
――剣聖ルミーネ・カドナール。
世界最強の剣士と呼ばれるはずの彼女が、両手と両足を拘束されて。そのルミーネを、ひとりの男が弄ぼうとしていて。
その光景を……弟子として、黙って見ていることはできなかった。
「な、なんだ貴様はっ‼」
謎の片眼鏡をかけた男が、俺に向けて怒声を発してくる。
「卑劣なるスウォード人民ごときが、栄誉ある《神速の月影》に歯向かうなどと……決して許されぬ!」
そのまま奇妙な大声とともに突進くるが――遅い。
「ぐほっ……!」
突っかかってくる男に対し、俺は右拳を突き出し。
その拳に顔面をぶつける形で、男が吹き飛んでいった。
「なっ……!」
その様子を見て、ルミーネが大きく目を見開く。
「ルシオ、おまえ……。あのスピードを、捉えられるのか……?」
「ええ。こんなノロマな連中くらい、いくら《外れスキル所持者》の俺でも余裕で対応できます」
「ノ、ノロマだと……?」
なぜかルミーネが驚きの声を発するが、いまは悠長に話している場合ではない。
「……はっ!」
俺は剣を振り払い、ルミーネを拘束していた器具を攻撃。
カイィィィィィィィン! と。
師匠をきつく縛っていた器具は、いともたやすく破壊されていった。
「お……っと」
拘束から解放されたルミーネは、そのまま片膝をついて地面に着地。この咄嗟の身のこなしはさすがというべきか。
「はは……。いまのは神現一刀流か。やはり完璧に使いこなしているじゃないか」
「いえいえ……。恐縮です」
こういうときでも俺を持ち上げてくれるなんてな。
本当に優しいというか、弟子思いというか……あのログナーとはえらい違いだった。
「気をつけろ。敵は一人だけではない。他にもいるぞ」
「ええ……。そのようですね」
気配を察するに――
合計で三人ほどの敵が、いま俺の様子を虎視眈々と狙っている。隙さえあれば、いつでも俺の首を掻っ切るように。
「でも大丈夫です。あんなノロマな連中、俺一人で勝てますから」
「は? 一人で?」
「はい。まだまだ師匠には及びませんが……俺だって、少しくらいは強くなったはずです。だから、俺にやらせてください」
「おい待て、そんな無謀な――」
俺はそのまま、敵の気配に向けて《全力疾走》を発動。背後で師匠が何事かを叫んでいたが、そのセリフが終わる前に、俺は敵の前に辿り着いていた。
「な、なんだと……⁉」
まず一人目。本棚の後ろで隠れていた、《黒ローブ》の男だ。
「馬鹿な、我らの敏捷度を上回るはずが――‼」
男が言い終わらないうちに、俺は攻撃を敢行。両足を斬り伏せたことで、男は無念そうに地面に伏せた。
もちろん、俺の猛攻はここで止まらない。
この場にメルやミルキアがいる以上、敵を放っておくことはできないからだ。
二人目。
そして三人目。
「――ことはやめて、私と協力して戦え! ……って、え?」
師匠が先ほどのセリフを言い切った頃には、三人の男は大きな悲鳴とともに気を失っていた。
【【 重要なお知らせ 】】
いつもお読みくださり、本当にありがとうございます!
現在ハイファンタジーの表紙から落ちて、すこし失速するのが早く……
私もリアルが忙しいため、なかなか執筆の時間が取りにくいですが、なんとか睡眠時間を削ってでも書いていきます。
ですから、どうか……【評価】と【ブックマーク登録】で応援していただけないでしょうかm(_ _)m
※評価はページ下部の「☆☆☆☆☆」をタップorクリックで行えます。
たった数秒の操作で終わることですが、これがモチベーションを大きく左右するものでして……
私もできるだけ、時間を見つけて書いていきます。
良い結果を出せるように頑張っていきます。
星5つじゃなくても、素直に思ったままを評価していただけるだけでも嬉しいです。
どうぞ、よろしくお願い致します!




