敏捷度99999999999
――一方その頃。
剣聖ルミーネ・カドナールは、己の非力さを嘆いていた。
身体は壁に押し付けられ、両手両足は器具で拘束されて。
どう足掻いてもまったく動くことのできない自分が、狂おしく恨めしかった。
「くそ……」
なぜ拘束されてしまったのか。いったいいつやられたのか。
ルミーネにはまるでわからなかった。
ただ、気づいたときには腹部に激痛が走り、気を失って。
そして目を覚ましたときには、この場所にいたというわけだ。
「クク……目を覚ましたかな」
ルミーネの目前には、黒いローブを目深にかぶった謎の男。
意識を失う寸前、黒い影が猛スピードで迫ってきていたのは覚えている。あまりに速すぎたため、応戦することもできず――そのまま気を失ってしまったわけだ。
「攻撃力が763、防御力が721、魔力が239、魔法防御が324、敏捷度が808……なるほど。たしかに一般人とは格が違う。さすが《剣聖》と謳われるだけはあるな」
片眼鏡のようなものを装着し、ルミーネをじろじろ見ながら……男はなにかをブツブツ呟いている。
「それにしても、こうも簡単にステータスを覗けるようになるとは……。さすがは博士というべきかな」
「なんだ……。なにを言っている」
「ふふ。おまえには関係なきことよ」
男は愉快そうにルミーネに近づくと、舐めまわすようにルミーネの全身を見渡し……そして言った。
「どうだったかな、剣聖ルミーネ・カドナール。王国最強と名高いおまえでさえ、私の動きはまるで捉えられなかっただろう?」
「…………」
「まあ、無理もない。敏捷度が808と9999では、あまりにも差が開きすぎているからね。おまえが弱いのではなく――我々が強すぎるのだよ」
「貴様……」
「おお、いいねぇ……。その表情、そそらせてくれるではないか」
「…………っ!」
嫌らしい表情を浮かべた男を、ルミーネは心底嫌悪する。
「しかしおまえ……堅物そうに見えて、なかなか良いスタイルをしているな。その意味でも、なかなか楽しませてくれそうだ」
「ぐ……やめろ」
「ふふ、そう嫌がることはない。じきに王国は帝国の地に落ちる。蹂躙される日が少し早まっただけでしかないさ」
「ぐ……!」
情けない。本当に情けない。
アルボレオ家に勘当されたルシオを探すため、ルミーネは各地をまわった。無一文で家を出たようなので、養う相手がいないと大変だと思ったためだ。
なのに――このザマだ。
ルシオを助けることさえままならず、こうして得体の知れない男に蹂躙される。
本当に、情けない。
剣聖の名が泣くというものだ。
――と。
「ん……⁉」
さっきまで嫌らしい笑みを浮かべていた男が、ふいに表情を引きつらせた。
どうやら例の片眼鏡を通してなにかが見えているらしく、うっすら光っているのが見て取れる。
「ええい、なぜ部下どもは侵入者を放っておるのだ……! こんなクズごとき、我らの敏捷度にかかれば容易に――」
そこまで言いかけた瞬間、男の動きがピタリと止まった。
「な、んだこれは……⁉ 敏捷度99999999999……⁉」
その瞬間。
「うぉああああああああああああっ!」
見覚えのある声とともに、部屋の扉が勢いよく開かれた。
【【 重要なお知らせ 】】
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