健気な姉
結局、四人組は洞窟のなかに消えていってしまった。
危険人物が潜んでいるかもわからないし、一応は止めておいたんだけどな。
――はっはっは、外れスキル君の言うことなど、僕が聞いてあげると思うかい?――
と言って、さっさと洞窟のなかに消えていってしまった。
その際、「きゃー! カーシスかっこいー!」とユキナが騒いでいたものだから、もはや手につけることができず。馬鹿みたいな大声をまき散らしながら、洞窟に足を踏み入れてしまった。
「はぁっ……!」
重圧に解放されたかのように、ミルキアが全身の力を抜く。よほど緊張していたのか、額には汗びっしょりだ。
「ごめんなさい、ルシオ様……。私の妹が、ひどいことを……」
「はは……いや。いいんだよ」
傲岸不遜なユキナに対し、あくまでも謙虚に徹するミルキア。
もはや姉妹とは思えないくらいの違いだな。
「メルキアも……大変だったな。ずっとあんなふうに迫害されてたのか?」
「はい。昔は仲良かったんですけど、私が《外れスキル》を授かってから……おかしくなっちゃって。いまではあんなふうに、ひどいことを言うようになって……」
「そうか……」
俺とまったく同じだな。
《全力疾走》を授かるまでは、ログナーは理想の父だった。ログナーの子として生まれたことを誇らしく思っていた。
それが丸ごと崩れ去ったのが、あの《スキル開花日》だった。
「あの……ルシオ様。ひとつだけ、お願いしてもいいですか……?」
「お願い……? なんだ?」
「もしあの洞窟に《黒ずくめの男》がいるんなら、ユキナは絶対に勝てない……。そう思いませんか?」
「…………」
「だから……お願いです。ユキナを……私の妹を、助けてほしいんです」
「なに……」
俺は思いっきり目を見開いた。
「助けるのか……? あんなに悪口言ってきた奴を……」
「はい。いまはもうおかしくなっちゃいましたけど、ユキナは、ユキナは、本当はいい子で……」
ぽつり、ぽつり、と。
ぽろぽろと涙を流し始めたミルキアに、俺はまたしても驚愕する。
「たとえ馬鹿にされたままでもいい。でも……ユキナは。ユキナにだけは生きててほしい。あの子が死んだらお父様もお母様も悲しむから、だから……」
「ミルキア……」
すごいな。本当にすごい。
あんなに馬鹿にされて、あんなに言い負かされて……
それでも恨むどころか、助けてあげてほしいと言ってきて……
――そんな清らかな願いを断る理由が、いったいどこにあるだろうか。
「ほれ。泣くな」
俺は人差し指で、ミルキアの瞳に浮かんでいる涙を拭う。
「俺の《全力疾走》が、どこまで連中に通用するかはわからない。だけど、連中の平均レベルが、前に戦った《黒ずくめの男》と同じくらいなら。きっと……俺でもなんとかできると思う」
「ル、ルシオ様……」
「だから泣くな。助けにいくぞ。無事に再会して、あの馬鹿たれ妹に命の大事さを思い知らせてやれ」
そう言って、俺はミルキアの頭をぽんと撫でる。
「あ……」
なんだろう。
その瞬間、ミルキアがまたも頬を赤らめたような気がした。
「……ありがとうございます。ルシオ様って……やっぱり、お優しいですね……」
「ふふ、でしょでしょ♪」
俺への褒め言葉に対して、なぜかメルがでかい胸を張る。
「ルシオは世界のどこを探しても見つからないくらい、すっごい良い男なんだから。それは間違いないわね!」
「お、おまえはなにを言っとるんだ……」
まったく……せっかくのシリアスな雰囲気が台無しだ。
まあいい。
そうと決まったら、早く行かなくちゃな。
洞窟から漂ってくる《ただならぬ気配》を全身に浴びて、俺は気合とともに両の拳をぶつけるのだった。
【【 重要なお知らせ 】】
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