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世界の裏側

 数分後。


 俺たちは別荘を出て、とある民家を訪れることになった。


 メルいわく、レイドス村に滞在しているのは「ある目的」があるらしく――

 その目的のひとつが、くだんの民家に住んでいる住人だという。


「…………」


 念のために周囲の気配を探ってみるが、怪しい気配はないな。

 少なくとも、当分の間は襲撃の心配をする必要はないだろう。


 ――が。


「メル……いったい、どこまで歩くんだ?」


「んー、もっと奥かな。その人、あんまり人の多いところに住みたがらないから……」


 いま俺たちは、レイドス村の郊外を突き進んでいる。


 ここまでくると、さすがに人はほとんどいない。周囲にも鬱蒼とした森林が広がっているばかりで、むしろ《黒ずくめの男》より魔物を警戒したくなる場所だ。


 実際にも、ところどころに魔物の気配が漂っている。


 そこまで強力な魔物ではなさそうだが、こんな危険な場所に住もうとするからには、よほどの腕自慢か、もしくはよっぽど人が嫌いなのか。


 そんな思索を巡らせているうちに、ようやく目的地に到着したらしい。


「ここよ、ここ」


 メルがふいに立ち止まり、近くにある小屋を手差しした。


「こ、こんなところに人が住んでるのか……」


 炊事でもしているのか、煙突からはもくもくと煙が流れてきている。また、あちこちに木材が転がってるのを見ると、ときおり伐採でもしているのかもしれないな。


 人里を離れてこんな場所で暮らしている人物……

 俗世の喧騒を嫌う仙人かなんかか?


「ごめんくださーい」

 扉をノックしながら、メルが大声をあげる。

「気にしないでー。私よ、メルティーナ!」


 数秒後。

 おそるおそるといった様子で、ゆっくりと扉が開けられる。


 そして内部から現れた人物を見たとき、俺は思わずぎょっと目を見開いた。


「ミ、ミルキアさん……⁉」


「えっ……?」


 なかから現れた人物は、俺の予想に反し、小柄な女の子だった。


 薄緑色の短髪で、くりっとした可愛らしい丸顔が特徴の女性だ。


 メルに負けず劣らずスタイルも抜群で、様々な貴族家からのプロポーズが届いているという噂も聞いたことがある。


 ――ミルキア・ルーフェス。


 ルーフェス子爵家の娘で、たしか俺とも同い年だったはずだ。子爵家とはいえ、貴族であるはずの彼女が、いったいなぜここに……


「あ、ルシオ様。これは大変失礼を……‼」


 俺が侯爵家であることを思い出したのか、ミルキアは慌てたように頭を下げる。そのままひざまずこうとする始末なので、俺は慌てて


「いやいや、いいよ」


 と制した。


「いまの俺は侯爵家の人間じゃない。外れスキルを授かって……アルボレオ家を追い出された身だからな」


「へ……。ル、ルシオ様もですか……?」


「ああ、そうなんだよ。……って、ん?」


 なんだ。

 ミルキアはいま、ルシオ様って言ってなかったか?


「――そう。そういうことよ」

 戸惑う俺に向けて、隣からメルが言ってきた。

「この子も、つい最近、外れスキルを授かって子爵家を勘当された。だから街の喧騒を離れて……ここで過ごしているってわけ」


「つ、つい最近って……」


 俺は思わず目を見開き、思うままに言葉を紡いだ。


「子爵家の子が、そんな短期間で僻地に簡単に住めるのか……⁉ 俺みたいに剣の修行をしてたならともかく、女性だとそんなこともないだろ……⁉」


「それが……できるんです」


 ミルキアは俺のことを恥ずかしそうにチラチラ見上げつつ、小声で呟いた。


「私のスキルは《必中》。最初は全然意味がわからなくて、そのせいで家を勘当されたんですけど……。後になって、必ず急所に当たるスキルっていうのがわかって」


「必ず急所に……」


 そ、それはすごいな。


 適当に攻撃した技でも、相手に大ダメージを与えられるってことだもんな。小柄なミルキアであっても、魔物に致命傷を与えることができるってわけだ。


 たしかにそのスキルがあれば、この場所でもひとりで暮らせるだろう。


 ……ん?

 でもそれって、普通に強くないか?


 たしかに子爵家の女性に求められるスキルではないかもしれないが、外れスキル認定されるほどじゃ……


「どう? これでわかった?」


 戸惑う俺に向けて、メルは真剣きわまる顔で言った。


「《外れスキル所持者》といっても、詳しく突き止めてみれば強力なスキルばかり。でもみんな……そのスキルの概要を確かめもしないうちに、実家を追放されてる。――ルシオ、あなたと状況が同じじゃない?」


「む……。そうだな、たしかに……」


 俺の《全力疾走》も、使ってみればそこまで弱いスキルではなかった。


 さすがに《剣聖》や《賢者》には劣るかもしれないが、あんなに馬鹿にされるほどではないはずだ。


 にもかかわらず、俺は追放された。

 一方的に外れスキル所持者と認定されて。


 ――と、その瞬間。


「…………‼」


 またしても、背後からすさまじい殺気を感じた。


 急いで振り返るが、やはりその瞬間には、殺気が遠い場所にいってしまっている。


 ――もしかしたら。

 ――もしかしたら俺たちは、誰も知らない世界の裏側に辿り着こうとしているんじゃないのか?





【【 重要なお知らせ 】】


ここまで読んでくださった方にお願いがあります。


ぜひ【評価】と【ブックマーク登録】で応援していただけないでしょうかm(_ _)m


※評価はページ下部の「☆☆☆☆☆」をタップorクリックで行えます。


たった数秒の操作で終わることですが、これがモチベーションを大きく左右するものでして……


私もできるだけ、寝る間を惜しんででも書いていきます。


星5つじゃなくても、素直に思ったままを評価していただけるだけでも嬉しいです。


どうぞ、よろしくお願い致します!

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