外れスキル所持者
さて。
メルに連れられて、俺たちは一件の家屋に入った。
聞くところによると、この家屋がメルの別荘らしい。
最近は「ある目的」のため、王城で寝泊まりすることはなく。
ほとんどこの家屋にて、身を潜めるようにして生活しているという。
その家屋のリビングにて――
柔らかなソファに座る俺に、メルが一杯のコーヒーを差し出してきた。
「……で、どうしたの? そんなに暗い顔をして」
「ああ……。それがな」
ちょこんと隣に座るメルに、俺はさっき感じた《不穏な殺意》を伝える。
俺も神現一刀流の使い手として、そこそこ気配の察知には慣れているつもりだ。
だが――正直いって、あれほど明確な殺気を感じたことはない。
時がくればすぐにでも襲いかかってきそうな――そんな危うさを秘めた殺気だったのだ。あれを放っておけば、手遅れになるかもわからない。
その旨を伝えると、メルはたった一言、
「……そっか」
とだけ呟いた。
まるでその殺気の来訪を、予期していたかのように。
メルは数秒間黙り込むと、俺の瞳をじっと見つめ……衝撃的な発言をした。
「実はね……ルシオに話そうと思っていたのも、その件についてだったの」
「その件……? メルはなにか知ってるのか?」
「うん。実は私、こっそりと《ある調査》を行っててね。――それが《外れスキル所持者》についてなの」
「なに……?」
予想外の展開に、俺は思いっきり目を見開く。
「外れスキル所持者について……? いったいどういうことだ?」
「ほら、この国って、《外れスキル所持者》に異様に冷たいじゃない。仲の良い親子だったのに、急に家を追い出されたり。大貴族の息子なのに、それだけで家を追い出されたり。……正直、不自然だと思わない?」
「ああ……。思う」
俺とて、王族と縁深い侯爵家の息子。
これまで俺に接近しようとしてきた者もいるし、みんなが俺を「頑張り屋なお坊ちゃん」として接してくれた。父もまた、そんな俺を大事に育ててくれた。
そんな日々が――《外れスキル》を授かってしまっただけで、一気に崩れ去ったのだ。
不自然に思わないわけがない。
「お父様によれば、数十年前まではそんなことなかったみたいで……。《外れスキル所持者》にも、みんな平等に接していたらしいのよ」
「な……⁉ そ、そうなのか?」
「うん。スキルが使えなくたって、他にも頑張りようはあるじゃない? ルシオだって神現一刀流が使えるんだから、場合によっては冒険者としても活動できる。そんなふうにして、別の生き方を模索していたみたいなの」
「…………」
「だから――おかしいと思ってね。どうして《外れスキル所持者》が迫害されているのか……それを調べるようにした途端、あの《黒ずくめの男》に狙われるようになった」
「そ、そうだったのか……」
知らなかった。
まさかそんな繋がりがあったとは……
「じゃあ、あいつらはメルを妨害したいのか? 《外れスキル所持者》について、知られたくないことがあるとか……」
「そうだね。確証はないけど……たぶん、そうだと思う」
そう言うなり、メルは懐から一枚の紙を取り出した。
紙面に記載されている内容を見てみると、そこには下記の内容が記されていた。
――――
調査 今スグニ ヤメロ
オマエ身 ドウナッテモ 知ラナイゾ
――――
「こ、これは……脅迫じゃないのか……⁉」
「うん。そうだね、絶対」
……それだけではない。
メルいわく、この脅迫文は、王城にいた際どこからともなく舞い降りてきたとのこと。数々の監視の目を潜り抜けて、こうして手紙だけを届けてきたとのことだ。
つまりこれは、明確な殺意。
自分たちが本気になれば、いつでもおまえを殺せるのだと――言外にもアピールしてきているわけだ。
「メル……ひとつだけ聞いてもいいか?」
「え?」
「ここまで頑張ろうと思う理由は……いったいなんだ? 下手したら自分が死ぬかもしれないのに、いったいなんで……」
「そ、それは……」
そこで急に顔を赤くするメル。
――なんだ。
さっきまで普通に話していたのに、なんで急に黙り込むんだ。
「ていっ!」
「いてっ!」
急に頭部にチョップをかまされ、俺は目を白黒させる。
「い、いきなりなにすんだよ! 真面目に話してる最中だっただろ!」
「いいんです! べーだ!」
メルは《あっかんべー》を決め込むと、なぜか憤慨したようにくるりと身を翻してしまう。
「ルシオは、私が絶対に守るんだから……」
最後になにかをぼそりと呟いていたが、小声すぎて、俺には聞き取ることができなかった。
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