表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

19/30

都市伝説

「こ、ここは……?」


 メルに案内された先は、侯爵家たる俺ですら知らない部屋だった。


 地下へ続く階段を降り、迷路のような細い通路を歩いた先で――実に神秘的な部屋があったのである。


「うふふ、さすがにびっくりしたかな? マヌーケとかクズーオも知らない場所だから、みんなには内緒だよ?」


「いやいや……これは驚くだろ……」


 まず、部屋全体が薄暗く、先が見通しにくい。あたりに光の粒のようなものが舞っているので、かろうじてそれが光源になっているくらいか。


 そして部屋の中央部には――小さな門のようなものが一つ。


 その門はすでに開かれており、内部からは淡い光が輝いているが……


「まさかこれって……転移門か?」


「正解。さすがにわかったか」


「お、おいおいおいおい……」


 転移門というのはその名の通り、任意の場所まで転移するための門である。本来は《空間転移》の魔法によってのみ行えることを、門で再現したというわけだ。


 その名の通り、あまりにも常軌を逸した代物であり――

 まことしやかに都市伝説として語られているそれが、まさか本当に実在しているとは……


「……実はね、昨日の《黒ずくめの男》の正体は、私たちでもある程度掴んでいるの。でも、びっくりするくらいに速くて強い連中だから……迂闊に行動できなくてね。この門を使って、目的地まで行き来してるってわけ」


「な、なるほど……?」


 理解が追い付かないが、理屈はわかる。


 あのクズーオやマヌーケも出し抜いたくらいだから、あの《黒ずくめの男》は相当に速かったんだろう。それこそ、俺の《全力疾走》と同レベルとさえ言えるほどに。


 だから迂闊に外を出歩くのではなく、転移門を用いて、安全に外を出歩こうとする……


 たしかに理には適っているよな。


 一気に話が大きくなったので、正直、頭がついていかないんだが……


「それで……この門はどこに繋がっているんだ……?」


「ふふ、口で説明するより見たほうが早いよ♪ 来て来て!」


「お、おい……!」


 急に右手を掴まれ、俺はしどろもどろになってしまう。そのままメルに連れられ、その転移門を潜り抜けた先には――


 村があった。


 さっきまでの薄暗い部屋とは一転して、日差しの穏やかな田園風景に。


 あちこちに広大な田畑が存在し、その田畑に囲まれるように、いくもの家屋が見受けられる。王都の瀟洒しょうしゃな町並みとは打って変わり、こちらは素朴という言葉がぴったりの、心落ち着く風景が広がっていた。


「こ、ここは……」


「レイドル村。――どう、いい場所でしょ?」


「あ、ああ……。そう、かもな」


 王都のそれとは違って、レイドル村の空気はめちゃくちゃ綺麗で澄んでいる。呼吸が気持ちいいというか、なんとも爽快な気分だ。


 後ろを振り返ると、こちらにも古びた家屋。


 どうやらさっきの転移門は、この家屋に繋がっていたというわけか。どこからどう見ても、普通の家にしか見えないが……


「大丈夫よ。転移門を使ってきた人だけ、この家の扉を開ければ、またさっきの部屋に戻れる。そういう仕組みだから」


「な、なるほど……」


 こりゃあますますハイテクだな。

 都市伝説など目じゃないくらい、王都の隠れ技術は発達しているということだろう。


「じゃあ、まさか俺の寝床って……」


「そう♪ ここで一緒に私と暮らしてよ、ルシオ!」


 マ、マジか。


 さらに理解が追い付かなくなってしまうが、まあ、俺はメルの専属護衛。


 彼女の身の回りにいること自体が、ひとつの仕事みたいなもんだしな。


 断る理由がない……というか、断ってしまっては任務違反となってしまう。


「それは別にいいが……俺はともかく、王女がこんなところで暮らせるのか? 絶対に騒ぎになると思うんだが」


「大丈夫よ! ここでは私、メルちゃんって呼ばれてるんだから♪」


「……は?」


 メ、メルちゃん?


「ささ、なにはともあれついてきて! 村のみんなに紹介するよ!」


「お、おいっ……!」


 そう言われて、俺は村の中心部まで引っ張られていくのだった。



【【 重要なお知らせ 】】


ここまで読んでくださった方にお願いがあります。


ぜひ【評価】と【ブックマーク登録】で応援していただけないでしょうかm(_ _)m


※評価はページ下部の「☆☆☆☆☆」をタップorクリックで行えます。


たった数秒の操作で終わることですが、これがモチベーションを大きく左右するものでして……


私もできるだけ、寝る間を惜しんででも書いていきます。


星5つじゃなくても、素直に思ったままを評価していただけるだけでも嬉しいです。


どうぞ、よろしくお願い致します!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ