スキル《全力疾走》にかかれば、不意打ちさえも通用しない
一方その頃。王城の大広間にて。
「ふう……」
俺は静かに構えながら、マヌーケの動きを注視していた。
先ほどのクズーオとは違い、さすがに油断している様子はない。深く被った兜の隙間からは、真剣きわまる表情で俺の様子を窺っているのが見て取れる。
――さすがに、さっきと同じ手は通用しなさそうだな。
大臣が「試験開始」の合図を唱えてから、ずっとこの調子が続いているので……真面目に俺と戦うつもりなのだろう。
だからといって、もちろん、俺も負けるつもりは毛頭ない。
これでも師匠の厳しい訓練を何度も乗り越えてきた身だ。これしきで参るわけにはいかないよな。
――ルミーネ師匠……――
――たぶん、もう会えることはないと思いますけど……どうか、見ていてください……――
「ちっ……」
ふと、対峙するマヌーケが大きな舌打ちをかました。
「貴様、その構え……。どこかで剣を学んだか」
「ああ。神現一刀流を極めた、剣聖ルミーネ・カドナール卿。俺は彼女を師と仰いでいる」
「な……。神現一刀流……⁉」
「あの剣聖ルミーネ殿ですか……‼」
マヌーケと大臣が、ほぼ同時に目を見開いた。
アルボレオ家といえば、スウォード王国で知らぬ者はいないほどの大貴族だからな。その財力と知名度に物を言わせ――父はかの有名な《剣聖ルミーネ》を雇ってくれた。
いま思えば、あれも俺のスキルに期待してのことだったんだろうけどな。
それでも、あの苦しかった修行が無駄ではなかったと思えば……少しは心が救われる気分である。
「ふん。なるほどな……。どうりで構えがサマになっているわけだ」
マヌーケはそう言うなり、左腕をこちらに突き出す。
「だが、構えが良いだけでは私には勝てぬ。それをはっきり教えてやろう‼」
その瞬間……マヌーケの手の平から、なんと炎の弾が飛来してくるではないか。
しかも一発だけではない。
続けざまに二発、三発、四発……
目にも止まらぬ速度で、いきなり魔法をぶっ放してきた。
「ちっ……!」
同じ奇襲作戦ってやつかよ。
勝利を確信したのか、兜の隙間からマヌーケの両頬が吊り上がっているのが見えた。
もしかすれば、さっき会話を投げかけてきたことさえ――作戦のひとつだったのかもしれない。
会話で油断を誘い、魔法で奇襲をかけてトドメを刺す――
俺も人のことは言えないが、なかなかにエグい戦い方だな。
そんな思索を巡らせている間にも、一発目の炎弾がほぼ目前にまで迫りつつある。これに当たったが最後、俺の負けは確定だろう。
「スキル発動……《全力疾走》!」
俺がそう唱えた瞬間。
俺の視界が――一瞬にして変わった。
さっきまでマヌーケの真正面にいたはずが、一転してマヌーケの横方向に。
コンマ一秒前、俺が「ここに移動したい」と念じた場所だ。
「ふっ…………勝ったか」
一方でマヌーケは、俺の高速移動はまだ気づいてもいないようだ。
無理もない。
いくつもの炎弾を放った影響で、俺の元いた位置には黒煙が立ち込めているからな。
だからこそ、ここに付け入る隙がある。
「こっちだ!」
俺はそう言いつつ、走りながら剣を抜く。
「な…………んだとっ⁉」
左手を突き出したままのマヌーケが、ぎょっと目を見開いたまま立ち尽くす。
慌てて体勢を立て直そうとしているようだが――もう遅い。
「神現一刀流・一の型――風龍剣!」
「や、やめ……ぐわぉぉああああああああああああああっ‼」
さっきと同様、マヌーケもも壁面に向けて吹き飛んでいき。
「は、早すぎるだろう……!」
そう言って、気を失うのだった。
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