ベーシックインカム
昨年から導入されましたベーシックインカムの影響についての調査を報告いたします。
まずベーシックインカムに対する国民の満足度ですが、あまり高くありません。毎朝新聞の世論調査によりますと、大変満足している、やや満足している人の割合を合わせても三割にも満たず、あまり満足していない、不満が多いという割合が六割ほどに上ります。
主な不満点は支給物、主に食事です。我が国では、人材派遣会社ペルソナ東京株式会社の代表取締役社長榊様からのご提案により、他の先進国と違い原則「衣食住」の物資支給でベーシックインカムを実現させました。しかし、このシステムそのものに大して不満が大きいようです。
具体的には、完全食を一人につき一日三回、ひと月分を毎月支給しておりますが、このオートミール型完全食がどろどろしていておいしくないだとか、人を馬鹿にしているなどという意見が散見されます。医師会からも、この完全食のみを摂取していると咀嚼をしないので顎が弱るほか、味覚細胞が急速に衰える危険性があると指摘を受けております。この点については現在厚生労働省が調査中であります。
完全食が不要な人にはひと月一人当たり五千円を支給しておりますが、こちらの方がまだマシだという人が多いです。また、食事に無頓着な人には、完全食だけ食べておけば栄養が取れるということで完全食は好評です。実際、全体の一割以上は完全食に大変満足していると回答しております。
完全食については一部で根強い支持を得ておりますが、他の支給物についてはより満足度が低くなっております。例えばふた月に一着支給される肌着は、特に女性には「綿の白い肌着など戦時中みたいだ」と不評を買っております。女性の半分以上が肌着の支給を断り、ふた月に一回の五千円支給を選択しています。サラリーマンの男性からはあまり不評は聞こえません。
服については全体的に見て現物受給率が大変低いです。服は四半期に一式支給しておりますが、実に九割近くがこれを断って四半期あたり五千円受領を選択しています。理由としては「支給された服を着ていると、ベーシックインカムでもらった服を着ている貧乏人だと思われるから着られない」といった意見が大半を占めます。この意見に対して、国は五着のバリエーションを選択することで対応しましたが、これでもまったく不十分だという意見が多数上がっています。現在、現物支給用に用意した服のうち、九五パーセント以上を在庫として抱えております。この問題は早急に解決する必要があります。
住居保証としては、居住場所を問わない人には安全に住める空き家を提供し、居住場所を自ら選択する人にはひと月あたり一人一万円を支給しております。これについてはある程度まとまった金額をもらえるとあって、かなり満足度が高いです。
しかしながら、一番問題視すべきは、これらの個別の事象ではなく自殺率の大幅な増加です。これらの現物物資をすべて受給すれば働かなくても最低限の生活を送れるというのが我が国のベーシックインカムのコンセプトでしたが、すべて現物支給を選択した人のうち、この一年間で自殺した人の割合は実に十二パーセントです。また、すべて現金支給に切り替えた場合の一年間の支給額は二十三万円ですが、一年でたった二十三万円で生活できるわけがないと各地でデモが多発しているのは皆さんもよくご存じかと思います。
人権保護団体からは、最低限度の生活を保障しろという声が多く上がっております。しかし、こちらとしては生きるための最低限度の生活を保障しているにも拘わらず、保証されていないと言われるのは、理解に苦しむというのが正直なところです。
え? お前らも現物支給で一年間生活してみろ? 嫌ですよ、あんなどろどろした吐瀉物みたいな色した液体、とても人間の食べる物じゃないですもの。