第一話 自称ギャンブラー、異世界に来る。
「クソッ!今日も2万負けた」
そう悪態をつきながら男は賭場を後にした。
その男の名前は黒田ユウヤ、自称する職業はギャンブラー。
親の残した遺産を元手にして、ありとあらゆるギャンブルを行い生計を立てようとしている黒田だが、お世辞にもギャンブルが上手い人間とは言えなかった。
勝つ日より負ける日の方が多く、家に帰り安酒を飲み
(明日絶対リベンジしてやる!!覚悟しとけよぼったくり店がよぉ!)
と意気込みながら眠りにつく日々を過ごしていた。
そして今日もまた買ってきた安酒を飲みギャンブルの敗因について愚痴をこぼしていた。飲み終わった後は服を脱ぎ、ベッドに横たわりながらそのまま黒田は深い眠りについた。
「...ここは?」
黒田が目覚めるとそこには見知らぬ風景が広がっていた。先程まで家で寝てた筈がどことも知らない街にいたのである。
夢にしてはあまりにリアルすぎる街並みと喧騒に黒田は困惑していたが、黒田がまず最初に確認しようとしたのは持ち物であった。
(マジかよ...財布もスマホも持ってねえのか。てかズボンとシャツしか着てないのかよ...もっとマシな姿で寝れば良かったぜ。それとここはどこだ?日本なのか?なんでこんなとこにいる?言語は通じるのか?家はどうなった?クソッ!わからねぇ事だらけだ)
そう考えに耽っている黒田に対して声をかける者がいた。
「あんたどうしたんだ?そんな変な格好でさっきからボーっと突っ立ってて」
話しかけて来たのは薄汚い服装をした初老の男であった。黒田はその男の言葉の意味がわかった、どうやらこの場所でも会話に関してはある程度は問題ない様だ。
「実は初めて来るのでここがどんな場所かわからないんです。よろしければ教えてくれませんか?」
「ああ、この街の名はジャックポット。ギャンブルが盛んな街さ」
「教えてくださりありがとうございます。ジャックポットですか...それにギャンブル...」
そう返事をしながら黒田の体はギャンブルというワードに興奮していた。
(マジかよ!!こんな理想郷みたいな所があんのか!
神さまだか誰だか知らねえが俺をここに連れてきてくれてありがてえ!)
「あんたギャンブルが好きなのかい?なら賭場まで案内してやろうか?」
「本当ですか!?是非お願いします。一度見ておきたいので」
興奮と希望に満ちた目を輝かせながら黒田はその男の案内についていった。
男に着いて行きながら、黒田は改めてジャックポットと呼ばれる町の景色を見回した。この町で暮らす人々の髪の色は黒だけではなく、白、青、黄色、緑、赤、紫等実に多彩であった。
(パ○ンコの保留みたいにここには色々な髪の人間がいるんだな...)
そう思いながら黒田は残金を確認した。持ち金はズボンのポケットに少々の日本通貨があっただけで黒田はほぼ無一文に等しかった。
だが金がないならギャンブルで増やせばいい、そう楽観的に考える黒田にとっては持ち銭が無いのは大した問題では無かった。
ー--数分後
「着いたぜ、兄ちゃん。この目の前の建物が目的地だ」
「案内してくれてありがとうございます。ここが賭場ですか」
「おう、いいってことよ。ギャンブルで勝てるといいなぁ兄ちゃん」
そう言いながらその男は去って行った。
黒田の目の前には煌めいた看板が掲げられたデカい建物がそびえ立っていた。目的地の賭場で間違い無いだろう。
黒田はその建物の中に入っていった。
しかし黒田はこの時賭場に入った事により、これから降りかかる悲劇をまだ知る由もなかった。