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乙女と輪舞曲を奏でたい
これはおうじさまの物語。
春の日差しの中、夏の香りの中、
秋の木漏れ日の中、冬の眠りの中、
いつだって君は綺麗で、
僕は君に恋をした。
その瞳に何を映して、
何を想って、何を描くのか、
僕には分からないけれど、
その先にいるのが僕であって欲しい。
名前を呼んで、と
笑った君があまりに綺麗で、
また一つ、好きになる。
また一つ、増えていく。
君が求めるなら、僕は。
その物語の向こう側、
僕の知らない、おとぎ話。
遠くで僕を呼んでいた。
遠くで僕を求めていた。
小さな、か細い声だった。
「おひめさまになりたい」と。
その声を届けてくれたなら、
その願いを聞かせてくれたなら、
無下にしたりはしなかったのに、
「もしも」の話は見つからない。
僕は君の名前も知らない。
君の声も知ることは無い。
僕の為に流した涙に、
触れる事も許してくれない。
けれど、それはきっと、
他の誰でもなくて、
僕のせいだったんだろう。
さて、「もしも」の話はここまで。
「声を届けたおひめさま」と
「恋を眺めたお嬢さん」
2人の行く末は、何処に。
そして、
「王子様」と歌うのは、
ちりん。




