乙女は輪舞曲を踊れない
これはある少女の物語。
春の日差しも、夏の香りも、
秋の木漏れ日も、冬の眠りも、
美しい物語の出来事。
そこにあるのはいつだって
皆に愛されるおとぎ話のおひめさま。
可愛くて、優しくて、素敵なおひめさま。
「私とは大違い。」なんて、
口に出すのも烏滸がましい程に、
ここにあるのは意味の無い音。
例えば一輪の花が咲いて、
その花をどうするかなんて、
私の勝手で、誰にも関係ないのに。
それでも誰かが声を上げる。
「その花、どうするの?」なんて
どうもしなくたって良いはずなのに。
綺麗だとか、素敵だとか、
そんなものに触れていたくない。
遠くで眺めているだけで良い。
ああ、だって、
それは私には、随分と、
それなのに、こんなにも、
心に浮かんだ言葉達は、
私に安らぎを与えちゃくれない。
「場違いなお嬢さん」そう責めるだけ。
知りたくなかった、触れたくなかった。
求めることも、求められることも、
心が沈んで、息が出来なくなるだけ。
春の日差しも、夏の香りも、
秋の木漏れ日も、冬の眠りも、
全部、おひめさまのもの。
おひめさまじゃない私には、
一つだって許されない。
それが、世界のルールでしょう?
だから、だから、
この心に名前を付けたら、
深く、沈めてしまいましょう。
二度と、夢を見ないため。
ああ、なのに、
気付けば、すぐそこに、
かたん。




