乙女は輪舞曲を踊らない
春の日差し、夏の香り、
秋の木漏れ日、冬の眠り。
どれもこれも、私には眩しくて。
遠くを望んで、息を呑んだ。
あなたの声が名前を紡いで、
それが何だか、騒がしくて、
頬を伝って流れ落ちた、
涙の意味も、きっと知らない。
あなたを好きとか、
あなたを愛したいとか、
そんな綺麗な言葉に捕われて、
逃げられずに、恋に怯える。
あなたを目で追っていた。
笑顔が胸に引っかかって、
高鳴りに耐えられなくて、
見ない振りして蓋をした。
繋がった手に、知らない温度。
触れられない音と、安堵の言葉。
あなたは知らない、知られたくない、
こんな、こんなに、虚しい和音。
応えはない。
正解もない。
ここにあるのは、
ひとつの唄だけ。
あなたが認めてくれたもの、
たったひとこと、それだけで、
私はそれを認めてしまう。
あなたが私を作り変えてく。
ちょっと、ちょっとだけ、
変わることが恐ろしい。
もしも、この気持ちが、
あなたに伝わってしまったら、
見ないで、気付かないで、
気付いて、私を、
矛盾。矛盾。
望むことは、烏滸がましい。
もしも、もしもね、
あなたが私を、信じてくれたら、
なんだってできそうな気がする。
強く、なれるかな。
それでも、まだ、
もう少し、
もう少しだけ、
このままで、
何でもない、
あなたの隣を、
その幸せを、
この気持ちに注いで、
花が咲いたら、
ぱたん。




