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3人でユニコーン探し

「 私は、王都に向かう。戦になるのであれば、王都を守るために戦わねばならない」


 リッカさんがそう言うと、ディオスも頷く。


「そうですね。急ぎましょう。エレンさんも王都に一緒に行きますよね?」


 そのディオスの言葉に、エレンさんはちょっと困った顔をした。


「う~ん、ユニコーンも失ったし、武器も今はこれだけだとね……」


 エレンさんはそう言いながら、腰に差した剣を見つめた。そうか、エレンさん、ランスも失ったんだった。


「私はこのまま王都に向かっても役に立たないわ。だから、せめてユニコーンだけでも見つけてから王都に向かう事にしようと思う。だから、2人は先に行ってて欲しいの。後から二人を追うから」


 それぞれが、ここで分かれて次の行き先を決めていく。


「俺たちは、ここであんた達とは別れて、サカタの町に戻ることにするよ。ナイトのお2人さん、ここまでありがとうな」


 バッツさん、モゲロさん、リチャードの三人は、ここで分かれるつもりのようだ。


「俺ハ、ドウシヨウカナ。契約モ終ワッタシ、一度魔族ノ町ニ帰ルカ……」


 ベミオンも、ここで分かれるのだろうか。


 俺も一旦、サカタの町に戻った方がいいかな……どうしよう。


「あの、傭兵さんたち、良かったら少し頼まれてもらえないかしら?」


 ここで、エレンさんがソルジャー組の俺たちと、ベミオンを呼び止めた。


「私ね、これからユニコーンを探しに行くんだけど、一人だと多少危険もあるから、誰か一緒に護衛として付いて来てくれないかしら? 報酬はあまり高くはないけど、ある程度出せるわ。どう?」


「依頼の内容はどんな感じなんだ? その内容次第だなあ」


 バッツさんが腕を組んでエレンさんに聞く。


「ここから歩いて1日くらいの所に、ユニコーンのいる森があるわ。そこまで行って、私と相性の良いユニコーンを探して、見つかったらそこでおしまい。見つかるまでって事で、金貨2枚でどう?」


 俺たちソルジャーの1日の給料が、大銀貨4枚だ。金貨1枚で大銀貨10枚分だから、えーと、給料5日分だな。悪くなさそうだ。


「悪いが、俺たちは町に一度戻ろうと思う。まずは家族と過ごしたいからな」


 モゲロさんがそういうと、リチャードもそれに同調した。


 バッツさんはちょっと迷っていたが、結局、


「行きに1日、帰りにも1日、向こうでユニコーン探しにかかる日数が分からないが、まあ2~3日かかるとして、微妙だが……今回はやめとこう。ちょっと疲れが溜まっているからな。いったん休みたい」


 さあ、俺はどうするか? 疲れはあるけど、やっぱりここはエレンさんの依頼だし、断りたくない。よし、受けよう。


「俺は良いよ。護衛の依頼を受けよう。エレンさん、俺でも良いかい?」


 おれが手を上げると、エレンさんは嬉しそうに笑って、


「やった。まだチョコレート食べられそうね。」と喜んでいる様子だ。


「俺モ大丈夫ダ。護衛ヲ引キ受ケヨウ。ツイデニチョコモ食ワセロ」


 おっ、ベミオンも一緒か。3人で行動することになりそうだな。まあ、2人での行動だと多分俺が雰囲気に耐えられなかったかも知れないから、かえって3人の方が良いかも知れない。


「あ……護衛は1人を考えていたんだけど、じゃあ、2人で金貨3枚でも良いかな……? 今の手持ちを考えると、それ以上はちょっと厳しいみたいだから……」


 うん、俺は良いな。金はあんまり判断の基準にしてなかったからな。


 ベミオンも、首を縦に振っている。問題無いようだ。ベミオンは、多分暇だから付いて来るくらいの感じだな。


 二人がOKという事だったので、3人でユニコーン探しに行くことが決まった。これで、王都に急ぐリッカさんとディオス、町に戻るバッツさん、モゲロさん、リチャード、そしてユニコーン探しに行く俺、エレンさん、ベミオンの3組に分かれることになった。


「そうと決まれば、ここからは急ぎますからね」


 ディオスがそう言うと、懐から球を一つ出す。そして、それを土に埋めて、呪文を唱えた。すると、そこから土が盛り上がり、だんだん人の形になって……大きさ3メートルくらいの、ゴーレムになった。


 へぇ~。ゴーレムってこんな感じで作るんだ。


「ここまでは隠れながらの移動でしたから、ゴーレムを作るのは控えていましたが、ここからは王都まで急ぎますからね。こいつに乗って移動します。予備の核を使わないで良かった」


 そう言いながら、しゃがませているゴーレムの肩にどっこらしょっという感じで乗りこむディオス。


「よし、では行こう。エレン、先に行って待ってる。皆も達者でな!」


 そう言うと、リッカさんはユニコーンに乗って王都へと向かって行った。その後ろからゴーレムに乗ったディオスがのしのしと歩いて行く。ゴーレムは歩いて移動しているが、歩幅が大きいので、普通の人が走るくらいの速さで移動している。便利だな、あれ。


「じゃ、私達も行きましょうか。まずは町で食料を買いたいわね。で、悪いけど、町に行って2人で食料買って来てくれる? 私は町には入れないから。お金は、これで適当に買って来て欲しいんだけど、良い?」


 そんな感じでエレンさんからお使いを頼まれ、もらった金貨2枚で食料を買いに行く。結局バッツさん、モゲロさん、リチャードと一緒に町に入ることになった。


 さっきモゲロさん、リチャードが言った通り、俺たち傭兵は門で確認された後、特に問題もなく町に入ることが出来た。


「さて、じゃあ、ここでお前たちとはお別れだ。エレンの依頼が完了したら、また町で会おう。」


 そう言うバッツさんと別れて、ベミオンと一緒に町で数日分の食料を買い込んで、また町の外で待っているエレンさんの元へと急ぐ。


 エレンさんのいる町外れに戻ってみると、エレンさんはしゃがみこんで、何かいじけたみたいにしてた。俺達が戻ってきた事が分かると、ばぁっと明るい顔で迎えてくれる。


「良かった……金だけ持って行かれて、もう戻って来なかったりして……とか、思っちゃったよ、私」


「傭兵ハ信用第一ダ。ソンナ事ハシナイゾ、エレン」


「そっ、そうだよ! エレンさんを置いて行くなんて、そんな男がいるわけ無いよ!」


 あれ……俺の発言、何か変な意味になってないかな? まあいいか。魂の叫びが出ただけだ。気にしない。


「ほら、ちゃんと食料も買ってきたよ。一週間分くらいはあるよ、ね?」


 そう言って、俺は手に持った食料を見せた。乾パンみたいな保存食、干した肉、乾燥させた果物等々。


 べミオンも、井戸で汲んできた水の入った器を見せる。


「水モ一応、飲メルノを少シ持ッテ来た。コノ辺りハ水は豊富ダカラ、アンマリ心配ハナイガナ」


 そう言えば、べミオン、だんだん発音が良くなってきてるな。


「うん、有難う。じゃ、早速出発しましょう。早くユニコーンを見つけないとね」


 エレンさんのその一言で、俺達3人組は、ユニコーン探しへと出発した。俺達は、ここから一日歩いた位の所にある森に行くらしい。そこにはユニコーンが群れでいて、その中からエレンさんと相性の良い一頭を探すんだって。


「いい子がいたら良いなー。出来たら強い子がいいけどなー」


 そう言いながら歩くエレンさんと、荷物を持って着いていく俺達。女騎士とお供の二人って言う図式だ。

 

 道中、べミオンの身の上話を聞きながらユニコーンの住む森を目指す。


「……ト言ウコトデ、出稼ぎニ来テイルと言うワケダ」


「ふーん、魔族も大変だな。で、どこにあるの? その魔国って言うか魔族の国って言うか、お前の故郷」


「ココトハ違う世界ダ。説明ハ面倒ダカラ詳しクハ話サナイが、ココトソレ程変ワラン」


 なんか、そう言う所があるらしいね。知らんけど。


 夜になって、水の流れのある所を見つけたので、ここで夜を明かす事にして、準備を始める。近くに木は生えてはいるが、枯れ枝は近くにそれ程落ちてないので、適当に枯葉やその他燃えそうな物を集めて火を起こす。もう追われてないので、焚き火位は問題ないだろう。


「ユニコーンのいる森には、明日には間違いなく着くと思うわ。着いたら、探すのは私一人しかできないから、二人はのんびりしててね」


 夜を過ごす準備をしながら、エレンさんからそう聞く。そうか、男は乗れないから探すのも役に立たないんだろうな。


 その日の夜、3人で食事をしてる時に俺がチョコを出そうとすると、エレンさんがふと思いついた顔で、俺に聞いてきた。


「ねえ、ユータロー。あなたって飲み物は出せるのかしら? ほら、ココアみたいな」


 ああ、そういえばやったことは無いな。どうなのかな?


「コレは実験ダナ、やってミヨウ、ユータロー」


 べミオンはそういう性格なのか、何でも試してみたい奴のようだ。水筒のキャップを俺に渡してくる。


「分かった。やってみよう」


 コップに手のひらを向けて集中すると……あっ、出た。


 出たな、普通に。ココアが。量は少ないけど。


「わー、でたー! すごーい!」


「出たナ、出来るンダナ……コレハ地味に役に立ツゾ。水分ノ補給ガ出来るッテ事ダカラナ」


 そうだな、これも地味に凄いぞ。


「……あっ……温かい……。そして美味しい……」


 いつの間にかエレンさんが飲んでる。少ししか無かったので、エレンさんが一口飲んで、それでもうココアはなくなってしまった。


「アッ、エレン、ずるイゾ! 次は俺に飲マセロヨ!」


「あはは、ごめん。美味しくってつい」


 両手を合わせてべミオンにごめんなさいポーズをしているエレンさん。くっ……可愛い。これは許さざるを得ないだろう。


「必ずダカラナ!」と腕組みのべミオン。


 む……どうやらべミオンには人間の可愛いは通じないらしい。


 そんな感じで、俺達は食事も済ませ、3人での最初の夜が更けていった。

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