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町に戻る

 俺達8人は、その後体感で2〜3時間ほどくらいかな? 体を休め、再び出発した。まだ全然日は暮れていないが、早めの出発だ。


 その後も俺達は歩き続け、夜には国境付近までたどり着いた。ここまで皆、あまり会話も無く、結構……雰囲気は重い感じだ。俺のチョコくらいでは……変わらないな、この感じ。まあ、まだ完全に魔力は回復してないから、チョコは少ししか出せないけど。


 その後もしばらく歩き続け、小川のある岩場のまで来た所で、バッツさんが提案した。


「さて、ここまで来れば、あと半日も歩けば町に着くだろう。夜を徹して行軍すれば、夜明け前には着く。だが、歩きっぱなしで休みも取ってない状態で町についても、疲労困憊で戦う事は出来ん。だから、隠れやすいここで、最後の休憩を取ろうと思う。

 ここで、夜明けまでしっかり休み、その後町まで移動する……どうだ? 皆、それでいいか?」


 その提案に、皆が頷いた。


「町は、どうなってるだろうか……」


「そうだな……家族が無事だといいが……」


 リチャードとモゲロさんは、町に彼女と家族がいるので、心配はあるのだろうが、それでも無理に町に急ごうとはしていない。無理をして死ぬことの危険をよく分かっている。


 あと、軍が町を攻めるときには、町の住民は事前に避難していることが殆どらしく、仮に住民がいても、攻める方も守る方も、お互いに住民の被害が出ないように戦うらしい。まあ、一応そういう決まりが出来てる、って事らしい。


 なので、リチャードもモゲロさんも、大事な人が死ぬ、という事までは、それ程心配していないみたいだ。この町は何度も戦場になった事があって、ヤマガタ王国とニイガタ王国で、取ったり取られたりしている所なので、住民も慣れてるって話だった。


 二人が心配してるのは、家が戦争で破壊されたりする事、そっちの方の様だ。まあ、もちろん人の心配もしてるだろうけどね。


 うん、まあ、そうかもな。住民は避難すればいいか。


 さて、水場で軽く手や顔を洗ったりして、落ち着いたあと、俺達はここで休んだ。もう自国でもあり、岩の陰なので、見張りも無しだ。皆寝る事にしたらしい。


 何か、あれだな。俺なら誰か見張りをした方がいいような気がするんだけど、何か割り切ってる感じだな。まあ、警戒心の強いユニコーンがいるから、誰か来たら気付くとは思うけどね。夜で真っ暗だから、見つからないってのもあるのかな?


 そんなこんなで、色々考えていた俺だけど、やっぱり疲れてたみたいで、すぐに寝てしまった。もう野宿も慣れたなあ……


 

 日の光に気が付いて、俺ははっと目を覚ました。もう朝だ。


 周りを見渡すと、もう起きてる人がいる。リッカさんと、モゲロさん、リチャードさんだ。残りの人はまだ寝てるな。


「ユータローも起きたか。ちょうどいい、ならばそろそろ、行く準備に取り掛かるとするか……皆を起こそう」


 起きた俺を見て、リッカさんは頃合いだと思ったようだ。夜も明けてるしな。周りを見渡すと、夜が明けて少し経ったぐらいのようで、朝日は出てるが、まだ薄暗い。


 リッカさんはエレンさんを起こし、残りの男達で、寝てるバッツさん、ディオス、べミオンを起こした。男達は、はっ! とした感じで慌てて起きるのだが、エレンさんだけは、リッカさんに頬をペチペチ叩かれた挙げ句、「ふわああ……」みたいな感じで、ゆる〜くお目覚めだ。これから町で戦うかも知れないのに、ある意味、肝っ玉があると言える。


 そんなこんなで、朝早く、俺たちは町に向けて出発した。


「もし町に近付いた時に戦闘中だったら、俺達も加勢しよう。味方に合流だ。そうなったら、この即席ユニットもその場で解散って事になる。それで良いな?」


 バッツさんが皆に訪ね、皆もそれに同意する。


 その時、俺は心の中で少し名残を惜しんでいた。一時的とはいえ、仲間だった人と別れる事になるので、ちょっと寂しい気分だ。


 特に、ユニコーンナイトのレディお二人とここで分かれるのは、男として寂しい。……しかし、悲しいかな、俺にはここで何か行動に移す勇気などは無いのだ。


 ここで、勇気ある男子なら好みの子に声をかけることも出きるのかも知れないけど、何かあっちのナイトの二人の方が立場的に上っぽいし、何かなあ……


 また会えるといいけどなあ……


「ユータローのチョコとも、ここでお別れになるのね……」


 エレンさんが、冗談っぽく笑いながら、残念そうな表情で俺に話しかける。


「ふふっ……そうなりますね。その点は私も多少残念ですよ」


 ディオスも、笑いながらそれに乗っかり、場に笑いが少し広がった。


「ああ、そう言えば、まだチョコを出してなかった。今出すよ。解散するなら、これで最後になるかも知れないしな」


 そう言うと、俺はチョコを手に出す。急いで出そうとしたからか、いくつか出したチョコのうち、1つが勢いよく手から出てきたので、地面に落としてしまった。急いで拾い、俺がそれを口に入れる。


 リッカさんが、「落としたのは、もうロブにあげて良かったのだがな」と笑っていたが、ロブもそれじゃ嫌だろう。だから、もう俺が頂く事にした。


 落としたのも入れて、結局、合計12個のチョコを出すことが出来た。また昨日より増えてるな。


 女子二人に1個ずつあげて、残りの1個は、ロブにまたあげることにした。

 

 そして、俺達は町へと近付いていった。

 

 町にだんだん近づいて来て……その様子が見えて来た。で、見てみると……うーん……? これは、どういう状況かな……


 ちょつと遠くから見てるだけだから、はっきりとは分からないが、町は静かだ。戦闘にはなっていない。


「戦闘には、なって……なさそうだな……」


 バッツさんが目を凝らすが、やはり何も特に無さそうだ。


 町にもう少し近付いてみると、旗が見えた。敵の国……ニイガタ王国の旗が立っている。


「あ、ニイガタ王国の旗だ。と言うことは……」


 エレンさんの言葉に、モゲロさんが答えた。


「ニイガタ王国に占領されたって事だな。あの様子じゃあ、抵抗せずに町を明け渡したっぽいな」


 確かに、そんな感じだ。戦闘が行われた痕跡が無い。


「ちょっと、様子を見てくる」


 リチャードが兵装を外し、普通の一般市民と似たような感じの服装になる。


「大丈夫ですか?」


 ディオスが心配そうにしてるが、


「ああ、大丈夫。俺はもともとこの町の住人だ。武装を解けばここの市民と同じだからな」


 リチャードはそう言って、行こうとする。と、そこに、もう一人。


「なら、俺も行こう。俺もここの人間だ。家族の様子も知りたい」


 そう言うと、モゲロさんがリチャードと同じ様に、武装を外した。


「すまない。危険かも知れないが、無理の無いよう、よろしく頼む」


 リッカさんにそう言われて見送られ、二人は町の方に向かった。


 さて、その間、待っとかないとな。


 残った6人は、とりあえずのんびり二人の帰ってくるのを待つ事にした。


 朝にチョコを出して魔力を使い切ったところだが、それから少し時間が経って、今は3個位ならチョコが出せそうだ。うん、なら、ちょっと試してみたい事がある。


 朝にチョコを出した時、手から勢いよく出てきたのが1個あった。あれを見て気になっていた事だ。


 ……チョコを……飛ばせる? もしかして。


「べミオン、ちょっと見ててくれないか?」


 そう言うと、俺はべミオンに向かって手を出し、手のひらをそっちに向ける。


「何ダ? チョコヲ出スノカ?」


「うん。飛ばそうとして見るから、出て来たら取ってほしいんだ。」


「オウ、イイゾ。取ッタチョコハ、モラウカラナ?」


 べミオンが2〜3メートル離れた所でこっちを向いて、腰を落として構える。何か、野球のノックっぽい。


 よし、やってみよう。頭に飛ばすのをイメージして……手からチョコを……


 あっ! 飛んだ! 飛んでいった!


 手から勢いよく出たチョコは、べミオンの方に向かって飛んでいき、べミオンの上着に当たって、そのまま落ちる。それをべミオンが落ちる途中でナイスキャッチして、手で受け止めた。


 手で軽く投げた位の速さで、飛んでいった。


 魔力は、普通に出すのに比べると、少し多いくらいか。


「もう一回! ちょっともう一回やってみよう!」


 そう言って俺は、もう一回べミオンに向けてチョコを飛ばしてみた。今度は、俺自身も見える様に、俺の前で手を横に向けて、片手で拝むような体勢でやって見る。


 よーく見ながらやって見ると……


 うん、出た。チョコが飛び出した。確かに飛ばせる。


 しかも、よく見ていて気付いたが、チョコは俺の手から出てるんじゃなくて、厳密に言えば、俺の手から一ミリほど離れた空間から飛び出してきてる。


 おお……面白い。興味深い。べミオンがチョコをもっと飛ばしてこいと言いながら、さっき俺が飛ばしたチョコを食ってるが、そんなのどうでも良い。


 これ……ひょっとして、使えるのでは? 


 俺は、チョコを食べる以外の方法で活用する可能性に、心がちょっと震えた。


 と、そんな事をしているうちに、さっき偵察に行った二人が走って帰ってきた。二人とも無事なようだ。良かった。二人とも表情は明るい。家族や恋人も、無事だったみたいだな。


 さて、町の様子はどうだったんだろう。


 そう思っていると、リチャードがやって来て早々に、まだ息が整ってないのに口を開いた。


「ハァ、ハァ、やっぱり、占領されてる。ヤマガタ王国は戦わずに、ハァ、ハァ、降伏したらしい。ヤマガタ王国の兵たちは王都へ退却、そしてニイガタ王国軍は、ハァ、フゥ……そのまま王都へ進撃している」


 リチャードがそう言っている間に、息を整えていたモゲロさんがその後を補足する。


「敵兵は町に入るのは駄目だが、俺たち傭兵は問題無しだ。今そこでニイガタ王国が傭兵の募集を掛けてるくらいだ」


「そうなのか……だとすると、俺とユータロー、それとお前たちモゲロとリチャードは、もう戦いの契約は終わってる事だし、もうニイガタ王国から見れば敵でも味方でもない……か」


 バッツさんがそう言うと、


「むしろこのサカタの町の人間なら、自国の民って事だ」


 モゲロさんが、そう答えた。


「えっ? と言うことは……?」


 おれがそう言うと、リッカさんが答えた。


「私とエレン、ディオスはヤマガタ王国の軍人だから、この町には入れない。入ったら捕まる。

 でも、ソルジャーのお前たちと、べミオンは傭兵で、しかも戦いは一応終わってて、サカタの町はニイガタ王国に占領されてしまったから……」


 と言うことは、リッカさんとエレンさん、ディオスはまだ逃げ続けないといけないけど、俺達はもう逃げなくていいって事か。


 バッツさんが肩をすくめて、リッカさんに言った。


「ここから先は、どうやら解散だな。あんたたちはここじゃ危ない。王都まで向かったほうが良い。敵……ニイガタ王国も王都に向かって進軍中だしな。俺は町に帰るとしよう」


 バッツさんがそう言うと、リチャードとモゲロさんもうなずいた。


 さて……俺はどうする? どうしよう俺? 俺も傭兵なのよね?


「……アドン……アドン……」


 こそこそ声でアドンを呼び出す。


「はいよっ。なんでゲスか?」


 ポン! と現れるアドン。


「なあ、俺って傭兵だよな?」


「今頃気がついたんでゲスか。傭兵でゲス。普通、一回の戦いごとに雇われるッスね。敵の町での戦いで負けて、一応契約はそこまででゲス。今はフリーター状態でゲスよ。旦那は」


 あっ……そうなんだ。ステータスを見てみると、確かにもうヤマガタ王国の名前が無い。ユニットナンバーも無くなった。


 町外れのここで、俺達は解散になってしまうようだ。

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