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責任感

 マハールが敗れた事は、すぐ後ろにいた帝王・ケンイチの耳に速やかに報告された。


 報告を聞いても、ケンイチは、特に何も反応することは無かった。


 ケンイチは、マハールが責任を感じていた事を知っていたからである。


 あの三人を、あの時仕留め損なったことに対する責任、それを感じていたマハールは、一人でやると言って先に出撃したのである。


 だから、マハールの死はケンイチにも読めていた。ただ、誤算は有った。マハールが誰一人仕留められずに死んだ事である。


 それでも、ケンイチは余裕を崩さない。ケンイチの手駒は、今まさにここに集まって来ている膨大な数の魔物、魔獣、虫たちであり、万が一にもケンイチが負けるとは思えないからである。


 その中でも、特筆すべき化物達が、ケンイチの近くで控えている。


 ケンイチの親衛隊とも言える、大きさ30メートルを超える赤、黒、銀色の三匹のドラゴン。高い知性と飛行能力、強力なブレス攻撃を誇る。


 更にその横には、先程のドラゴンにも負けない程の大きさを誇る、キングスライム。無数の分身体と共に、這い回って敵を確実に追い詰め、消化して殺す。


 そして更にその横には、最近手下にした蜂の王、グレートクイーンが控えている。大きさ4メートルにもなるこの巨大な女王蜂は、すべての虫の王であり、手下の虫を操り、敵がどこに隠れていても探し出し、攻撃する。


 これらのモンスター達こそ、本当の意味でのケンイチの右腕、そして戦力なのである。


 マハールやメイファ、その他大勢は、ただの相談相手に過ぎない。役に立つから置いているだけで、期待してはいないし、頼ってもいなかったのである。


 一緒に来ている人間の兵は動かさず、ケンイチはただ、静かに手を上げ、魔物達に進撃の合図をしたのであった。


―――


「さて……どうしましょうか?」


 移動用ゴーレム、第二ゴーレムハイツに戻り、ソファに座りながら、のんびりとディオスが尋ねる。


「どうしましょうかって……。ケンイチの手下の魔物達がこっちに来てるんですから、早く迎え撃たないと!」


 メイファが少し焦っている様子だが、俺たち三人はあまり気にしていない。


「どう迎え撃つか、だよな? 色々あるけど、どれで行こうか?」


 ゴーレムで行くか、俺の魔法で迎え撃つか、どっちで行こうか、俺も迷っている。どっちでも良いんだけどね。


「私は、ゴーレムの性能を見てみたい。この相手なら、性能をよく測れそうだ」


 リッカは、ゴーレム派か。


「私もです。となると、多数決で決まりですね。ゴーレムで迎え撃ちます」


 うん、それも良いな。あの戦闘型ゴーレムの性能の限界を俺、まだ見たことないしな。この数と質の相手なら、こっちも全力で行けそうだ。


「さて……戦闘型ゴーレムの彼らは、私の魔力の都合上、最大25体位までしか出せません。何しろ、彼らは特製ですのでね。王都に既に5体残しているので、ここで戦えるのは20体です」


「普通は最高でもせいぜい5〜6体位しか操れないのだから、ディオスもめちゃくちゃ凄いんだけどね」


 俺がディオスにそう言うと、ディオスはニヤリと笑ってメガネを上げる。


「死んだべミオンの魔力が、私に力を与えています。相乗効果とでも言いましょうかね……とにかく、そのお陰ですよ」


 ディオスの説明は続く。


「彼等だけでも戦えそうですが、念のため、各地に放っている見えーる君を戻して、戦闘に参加してもらいましょう。そして、この第二ゴーレムハイツ、この子にも戦ってもらいましょうか」


「このゴーレムハイツは、戦うこともできるのか?」


 リッカが、初めて聞いたような顔をしている。うむ、俺も初めて聞いたが、予想はしていた。


「もちろん戦闘も可能です。あくまでも移動、居住が目的ですので、おまけの機能ですがね、クックックッ……」


「じゃあ決まったな。適当にゴーレムで敵を迎え撃ち、適宜俺やメイファの魔法が必要な時は、その都度言ってもらったら良いって事で」


 これで一応作戦は決まった。まあ、こんなもんで良いでしょ。


「えっ……? 作戦はそれだけ……? それで大丈夫なの? あんた達が強いのは、さっきのマハール戦からも十分解ってるけど……」


 メイファは、少し心配してる様だ。


「大丈夫と思うよ、さ、敵襲だ」


 まずはここから、ゴーレム達の戦いぶりを観戦しようか。

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