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とどめは彼

「どうやら、圧勝でゲスね。ありゃあ、もう戦意も喪失してるかも知れねえでゲス」


 バルコニーから戦いの様子を見ていたアドンがそう言うと、横で同じく戦いを見ていたリッカが、それに反応した。


「そうだな。そろそろマハールの所に行こう。バッツやエレンの仇を討ちに」


 そして、リッカは「ブルルッ」と言ってる彼を連れて、バルコニーから出て行った。


―――


 さて、マハールのとどめはあいつとリッカに譲ってやると決めてたからな。下ごしらえといこうか。


「おい、まだ死ぬなよ? たった2発、手と足を撃っただけなんだから」


 口ではこんな事を言いながらも、俺は全く油断はしてない。何か反撃があれば、すぐ対応できるように構えている。


 俺はちょっと手加減して、防ぎ切れるくらいの熱々チョコの塊を出し、マハールに軽く当てるべく打ち出した。


 大きさは、直径2メートルくらい。これならなんとか防ぐだろう。


「くっ……この野郎……」


 何とか防御をしようとして、よろよろと立ち上がるマハール。良かった。まだ心は折れてないみたいだ。


 マハールは、目の前に砂の壁を展開したが、俺のチョコ大玉はその壁には当たらず、壁の横を抜けてマハールに近付く。


 そして、マハールの体にまとわりつき始めた。……が、マハールはチョコと自分の体の間に、体を覆うように咄嗟に砂の鎧を身にまとった。おかげで、チョコはマハールに触れる事ができていない。


 よし、そうそう、その防御だ。この熱々チョコを防ぐには、それが有効だもんな。それで良い。


「はあ、はあ……。どうだ、防いだぜ」


「うん、そうだな。でもそれだと、身動きが取れないよな?」


 俺の言うとおり、マハールはチョコに絡め取られている。身動きが出来ず、しかも防御で精一杯の状況だ。マハールに絡みついてるチョコは、ただ絡みついてるだけじゃない。砂の隙間に入り込もうと、かなりの圧力をかけており、マハールは、今それを必死で防いでいるはずなのだ。


 もっとたくさんのチョコで攻めればマハールの防御を突破出来るが……それは、あいつの仕事だ。


 おっ……来たな。足音が聞こえる。


 やって来たのは、リッカ。そして、リッカの乗る、ユニコーンのロッキー2世だ。


 リッカももちろんそうだが、ロッキー2世にとってもこいつは復讐の対象だ。主人であるエレンと、仲間である同じユニコーンのロブが殺されてるからな。


 だから、こいつに譲ってやる。


 俺は、ロッキー2世の折れた角の代わりに、チョコを凍らせて角の先を作る。俺の手から出た柔らかチョコは、ロッキー2世の角の所に飛んでいくと、そこで角の先端部分になり、凍って固まった。


 俺の魔力の影響で、ただ凍っているだけのチョコよりも相当硬くなってる。


「よし! 準備はいいな?」


「何時でも良いぞ。あとはユータローが合図してくれれば、そのタイミングで私達は突撃する」


「ブルルッ! ブルッ!」


 うん、良いようだな。


 さて、と。俺はもうここまでだが、マハールには最後に一言、言っておいてやろう。


 俺は、マハールの方を向いて声をかける。


「おい、マハール。あそこに居るのは、リッカとユニコーンのロッキー2世だ。お前のとどめは、彼女とあいつが刺す」


「……」


 マハールは、こっちを睨んだまま、何も喋らない。


「あのユニコーンには、魔力で強化したチョコの角が付けてあるし、リッカの力で突撃力も強くなってる。お前の砂の鎧も、容易く突き通すだろうな。死ぬ覚悟はいいか?」


「……チッ。ああ、覚悟は何時だって出来てるぜ。戦場に出るんだ。死ぬ事もあるのは分かっている。俺よりお前たちの方が強かった、ただそれだけだ。お前らの力を見誤っていた俺の負けだ。さあ、さっさとやりやがれ」


「潔いな。そういうとこだけは嫌いじゃないぞ、マハール」


 とは言え、復讐はきっちりやらせてもらうがな。


「よし、リッカ、ロッキー2世、行ってくれ!」


「ブルルッ!」


 俺が叫ぶと、ロッキー2世は待っていたと言わんばかりに駆け出した。


 物凄い勢いのまま、ロッキー2世はリッカを乗せて突撃し、マハールにぶつかった。


 ロッキー2世の角がマハールの腹に当たる瞬間、俺はその部分を覆っているチョコをどかす。その部分だけは、砂の鎧が見えている。


 砂の鎧を、ロッキー2世の角が突き刺す。角の力に耐えられず、砂の鎧には穴が開いた。そして、そのまま角はマハールの体を貫通し、背中まで突き通した。串刺しだ。


「ぐうっ……」とマハールは呻いたきり、恐らくもう声も出せないのであろう、ぐったりとしてしまった。


 勝負ありだな。


 馬上からリッカが剣を抜き、目の前にいる串刺しのマハールに最後の声をかける。


「これでお前も終わりだ。私は敵をいたぶる趣味はない。せめて楽にしてやる。介錯してやろう」


 マハールはもう話も出来ないのであろうが、最後にリッカを一目見たあと、少し笑って目を閉じた。


 リッカが剣を振ると、マハールは首をはねられ、そして首はそのまま地面に転がっていった。


「バッツ……仇は、取ったぞ……」


 そう小さい声で言ったリッカの目には、少し光るものがあったような気がした。


 こうして、俺達はマハールを討ち取ったのである。

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