表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

43/60

見た時から

 俺達が飛んでこの戦場までやって来るのに、正確には20分程かかった。


 その後、ここで戦闘して、およそ2〜30分程経過している。ちょうどそんな時に、ヤン・メイファの乗った氷の円盤はやって来た。


「ほう……思っていたよりは速いですね。後を追って着いてきているのは気付いていましたが……」


「そうだな。俺達より遅いけど、それでもまだ飛竜より速いって事だよな?」


 俺がそう言うと、リッカが、


「そうだな。ユータロー、もしお前が同じ様にチョコで円盤を作って、それに乗って飛んだら、どのくらいの速さになるだろうかな?」


 なんて言ってくる。


「自分で乗って操作するのは、あんまりやってはいないからなぁ……分からないな」


 多分もっと出せそうだが、速すぎて危ないかもな。いや、強がりではなく、本心で。


 目で見える位置まで近付き、こちらの様子をうかがうかのように静止している、ヤン・メイファ。


 と思っていると……ん? 近付いて来た。手には……白旗? 


「何だ? 降参?」


 俺がそう言うと、ディオスが答える。


「チッ……。殺してしまいたいですが仕方ない。まあ、先に話を聞きますか……」


 そして、五分後。


 最初はバルコニーで話していたが、長くなりそうだし、相手に戦意は無いようなので、リビングで話をすることになって、ソファに座っている俺達。


 対するは、同じくソファに座っているが、両手を前で拘束されているヤン・メイファ。


 三年前会った時と、あんまり変わってなさそうだ。紺のローブで身を包み、髪は相変わらずお団子にして左右にまとめている。


 年は俺達よりちょっと上っぽいから、だいたい30かそのくらいかな? 


 拘束されていても落ち着いているところは、さすが王の側近ってところか。


「……と言う事は、我々に寝返りたい……そういう事で間違いないか?」


 リッカがそう問うと、はっきりとした口調でそれに答えるヤン・メイファ。


「その通り、あたし、あんた達に寝返りたいの。あたしなら戦力になれると思うの」


「……そう言われましてもね……信用出来ないですよ? 側近の貴女が寝返る理由は?」


「……理由はいくつかあって……まず、皇帝ケンイチの政治が、弱者にちっとも目を向けてない事……」


 何でも、ケンイチは実力主義っぽい考え方をしてるせいで、貧しい者や、役に立たないと判断された、いわゆる弱者を見捨てていると言う事らしい。


「でも、ただそれだけじゃ、あたしは裏切るまでは出来ない。力も無いのに裏切っても、ろくな事はないだろうから。だから、今までは大人しくしてた。でも、あんた達の戦いを見て分かったのよ。あんた達の強さなら、皇帝に対抗できるって」


「ん……じゃあ、要するに俺達の強さを見て、寝返るのを決めたって事?」


 俺がそう聞くと、


「力無き正義は、無力って言うでしょ。三年前からあんた達を気にはなっていたけど、強くないと、そりゃあやっぱりだめよね」


 現実的だなぁ。


 リッカは、とりあえずこっちに付いてくれるのが本当なら、受け入れる考えだ。ディオスは、ヤン・メイファの言っていることが本当だろうが嘘だろうが、敵は皆殺しで殺してしまおうという考え。そして、俺は今迷っている。そんな感じ。


 ディオスが、まだ聞きたい事があるようだ。


「……三年前、私に注意を促した時……あれは何だったのでしょうか?」


「ああ、あれは……その……あたし、あんた達を殺してしまうのは、反対だったのよ。でもケンイチがそう決めたから、仕方なかったの。だからせめて、ケンイチに逆らう事は出来ないけど、生き残って欲しいと思って……」


「ふむ……。で、なぜあの時、わざわざ私に? リーダーのリッカでなく、なぜ私に声をかけたのですか?」


「あ、あれは……その……あんたなら話しを聞いてくれそうと言うか……気になっていたと言うか……」


 ん……? 何だろう、この感じ。


「えっと……ディオスが話しかけやすかったのかな?」


 俺が軽くフォローを入れてみると……


「そ、そう! そうなの! 話しかけやすかったの! 背が高くて、凛々しくて、知的な感じで、メガネをクッと上げるとこに、ビビっときたの!」


 と、分かるような、分からないような事を言ってる。


 うん? 何だろう……? それはもしかして……


 L O V E   ……なのでは? 


 まさか、まさか……あの面会の時に一目惚れしてた、とか……?


「ほう……」と言いながら、ニヤリと笑うディオス。


 ディオスも馬鹿じゃない。気がついてるよな……きっと。メイファの好意に。


 それを気がついている上で、あの怖い笑顔……


 どうするつもりなんだ……ディオスは。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ