大軍と戦う
「ふむ……」
リビングでソファに座り、目をつぶっていたディオスがすうっと目を開け、俺とリッカの方に顔を向ける。
「今回、敵は軍を二手に分けたようですね。一つは私達を攻撃、そしてもう一つはヤマガタ王国を攻撃に行くようです」
「そうか。で、どのくらいの規模が向かって来てる?」
同じく、ディオスの向かい側のソファに座っていたリッカが尋ねると、ディオスは少しニヤリと笑い、俺達に教えてくれる。
「鳥型ゴーレム、みえーる君で見たところでは、およそ一万の軍がそれぞれ向かっていますよ……合わせて二万の軍です」
ディオスの諜報能力は、相変わらず大したものだな……と、冷蔵庫的なものの扉を開け、そこからジュースを取りつつ、感心して話を聞いている俺。
「帝国も本気を出してくれたようだな……一万の兵の攻撃、ヤマガタ王国で防げるとは思うが、さて、我々はどう動こうか?」
リッカが二人に問う。
「先に、ヤマガタ王国に向かってる方を攻撃しようか?」
俺の提案に対して、ディオスはと言うと……
「まあ、どちらを先に攻撃しても、結果はほぼ同じです。我々がどちらも潰して勝つでしょうね。ヤマガタ王国には十分な守りの兵が居ます。我々のゴーレムも五体残していますし、相手が一万で攻めてきても、そう簡単には負けませんよ。」
「うん、ならば……深く考えず……」
リッカは、少し考えてから結論を下した。俺とディオスも、それに合意する。
そして、俺達は行動を開始した。
―――
サイタマ帝国の将軍、テッポウダ・マーは、順調に軍を進めていた。
テッポウダ・マー本人が率いる部隊一万は、三人組を攻撃、もう一部隊の一万は、迂回して三人組の後方に周り、そのままヤマガタ王国の王都を目指す。
先行している別働隊が、無事に三人組を迂回出来たとの情報が先程偵察からもたらされたため、テッポウダ・マーは、今、少し安心したところである。
今度は、自身率いる本隊が、あのチョコで出来たゴーレムを操る三人組とぶつかる番となる。
対ゴーレムを想定し、移動用大型ゴーレムには投石器、そしてチョコゴーレムに対しては、兵に魔石を大量に持たせておいた。
魔石には魔法が込められており、相手に投げつけるなどすると、魔法による爆発が起きるという代物だ。
この魔石と、魔法を使える者の魔法攻撃とで、ゴーレムの核にダメージを与える戦法を用いる。
敵のゴーレムが非常に素早いとの情報があったため、こちらのゴーレムは敢えて動員していない。役に立たないであろうという、テッポウダ・マーの判断である。
そして、三人の乗っている、あの不気味な移動用ゴーレムが、一万の兵の前に、ゆっくりと近づいてきて、その姿が見える程になった。
テッポウダ・マーは、敵が訪れるであろう場所を想定し、ここ、森林地帯を敵との戦闘の場所として選び、一日前からそこで陣を構え、短時間で急ごしらえはあるが、防御の体制を整えた。
なんの警戒もしていない様子の敵をこの地で迎え撃ち、木影などから攻撃するつもりなのである。
帝国軍の兵が隠れることのできる穴も、多数掘って準備した。
確実に仕留める事が出来る。
そう確信したテッポウダ・マーは、近付いてくる、敵の移動用大型ゴーレムを待ち構えていたのであるが……
そんな彼の勝利への思いも、実現へと届く事は無かったのである。




