新手の将軍
ステゴ・マー敗れるの報は、その日から一週間程でサイタマ帝国、カワゴエにまで届いた。
そしてここは、城内にある作戦会議質。
帝王・ケンイチや、その側近であるマハール、メイファも参加しての作戦会議が、そこでは開かれていた。
作戦会議に参加している将軍たちの表情は暗く、その場の雰囲気は重苦しかった。
将軍たちは、戦いに我が国が負けた事より、ケンイチが機嫌を損ねていることを憂いていた。
小手調べでは愚かなステゴ・マーが遅れを取ったが、帝国が本気で掛かれば、たった三人の隊など、どうとでも出来る。
皆、そのように考えていた。
「……敵は、大型のゴーレムに乗っているらしいな」
そんな雰囲気の中、ケンイチは不機嫌そうに小さな声で話す。
「……はい。戦闘では、強力なゴーレムが投入され、そのゴーレム達にステゴ・マーは敗北したようです」
そのように答える伝令役のが男が、話し終えるか終えないかのうちに、ケンイチはまた口を開いた。
「……今度は敗北は許さん。何としても勝て。兵は必要なだけ出す。さあ、誰が行く?」
その言葉を待っていたかのように、一人の男が手を挙げる。
「私が参ります! 愚かな弟、ステゴ・マーの失態は、兄であるこの私の活躍で補って見せましょう!」
「……ふむ、テッポウダ・マーか。良かろう。見事あの三人を仕留めて来い、早速準備せよ」
「はっ! マー家一族の誇りにかけて!」
そう言うと、テッポウダ・マーは足早にその場を退場した。
残った皆も、テーブルを立とうとした時。
今まで沈黙していたヤン・メイファが、静かに口を開いた。
「……ケンイチ陛下」
「……何だ。メイファ、何かあるのか?」
「彼ら三人の戦いぶりというのを、この目で見てみたいと存じます。テッポウダ・マーについていく事、お許し願えませんか。手柄を彼から奪うつもりはありませんので」
「……ふむ、まあ、お前が見てみたいと言うなら構わんが……何故だ?」
「あのチョコレート使いが、どう成長したのか興味があります。それに……」
そう言うと、メイファは少し顔を下に向けた。
「残りの二人も、少し見てみたく……思いまして……」
それ以上は、メイファは口にすることは無かった。ケンイチも、特にそれ以上聞くことがあるでもなく、まあ良いとメイファが戦に帯同する事を許したのであった。
テッポウダ・マーは、組織の連携と統率を重視する男であった。
個の力を重んじるステゴ・マーを愚かであると考えており、いかに強い力の個の存在も、高度に組織された部隊の前では、無力であると常々思っていたのである。
彼は、大軍を組織した。しかも軍を二つに分け、一軍はあの三人に、そしてもう一軍は、三人を避けて、直接ヤマガタ王国へ向かわせる事にしたのである。
大型ゴーレムに対抗するため、攻城兵器である大砲をも持ち出し、テッポウダ・マーは、万全の体制を整えた。
三人への攻撃に一万、ヤマガタ王国攻撃に一万、合計二万の兵という、圧倒的な数で出撃したのである。
ついに本気を出した帝国の前に、三人は風の前のチリにも満たないと思われたのだが……
帝国のこの動きは、既にディオスの知るところとなっていたのである。
このような動きも、彼にとっては想定内であった。




